司波達也は強さ力と迷いの無い性格故に悪目立ちが多く敵を作りやすいため、多くの難敵と戦ってきました。その結果、自身の戦闘能力はもちろんですが、その頭脳に基づく開発力も作中全体でトップクラスとなっています。そのため軍に加入する前から魔法関連技術を開発していたり、強力な魔法を製作していたりします。
また自身で作り上げただけでなく敵から奪ったもの、つまり戦利品もあるので多くの技術を集約しています。そういったものも、達也さんの強さの一部となるでしょう。
今回は、そんな風に手に入れた強さの内、単純明快な力である「達也さんの保有する戦略級魔法」を解説します。
※…メイジアン・カンパニーにおける情報のネタバレは少々ありますが、ストーリーのネタバレはありません。ですが、前作【魔法科高校の劣等生】を知っている前提で構成されています。
最後まで読んでいただければ幸いです。
質量爆散〈マテリアル・バースト〉
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第26話「横浜騒乱編VIII」より引用
これは司波達也をオペレーターとする戦略級魔法で、”最強の戦略級魔法”となっています。その理由は射程、威力、使用条件の全てが優れているという点にあります。
射程
まず射程は全地球圏、というより達也さんの場合は物理的距離が関係ないので、実質的に射程はありません。これは達也さんの技能と開発力が組み合わさった結果で、サード・アイと精霊の眼によるものです。
魔法には射線が無く座標指定で標準を行うので、距離や障害物を無視できます。なので理論上は、座標を認識できていれば映像などからも標準を行えます。しかし、人間の認識は空間の連続性に囚われているので、それらの障害を乗り越えて標準を行うには「標準補助」と「空間の連続性に囚われない認識力」が必要です。質量爆散では、サード・アイが標準補助機能を搭載した専用CADとなります。
標準補助は魔法の標準を半自動化することが可能で、「CADの射線上」などの設定した座標を魔法式の変数として出力できます。サード・アイは衛星プラットフォームの映像を使った精密標準システムで、水滴すら一個体として標準できます。
達也さんは物理次元ではなく情報体次元を認識する精霊の眼を持っているため、生来距離に囚われず魔法を使えます。どれほど遠い座標でも映像を認識している時点で情報的距離が近いので、魔法の標準が出来ます。また、縁があれば映像すら必要がありません。そのため、達也さんは「どこへでも」ではありませんが「どこからでも」撃つことが出来ます。
そのため、質量爆散は衛星が捉えられる全地球圏および縁がある対象が射程となります。
威力
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第26話「横浜騒乱編VIII」より引用
質量爆散は最強の分解魔法である、質量を分解しエネルギーを開放する”質量・エネルギー変換魔法”です。エネルギーを加工して利用するわけではなく直接熱変換させるので、エネルギーロス無く全てが攻撃に利用されます。
そのため作中では、”水滴一粒”を質量分解することでその水滴が着いていた”戦艦”を”消滅”させたり、艦隊の旗艦に立っている”約1㎏の旗”を直接分解して艦隊を”朝鮮半島南端”諸共”消滅”させています。
「破壊」ではなく「消滅」です。つまり、個体(島の一部)が蒸発しているわけです。融解・気化を通り越してプラズマ化という方が適当かもしれませんが、それほどの熱エネルギーを放つことが出来るわけです。放出されるエネルギーはアインシュタインの質量・エネルギーの関係式から導き出せますが、そのエネルギーが周囲をどれほどの温度にするかはもはや計算が難しくてできません。
熱量を計算するだけならば下記を使えば簡単です。
E=mc2 (アインシュタインの関係式〈エネルギーと質量の等価性〉)
E:エネルギー、m:質量、c:光速度
水滴の場合は一粒約50mgだとすると5.0*10-5kgに光速度3.0*108m/sの二乗を掛けるので
5.0*10-5kg×(3.0*108m/s)2=4.5*1012J=4.5TJ
となります。これではよくわからないので爆薬などの目安であるTNT換算を行います。
爆薬1グラムの爆発で放出されるエネルギーは約1kcal=4.184kJ、つまりTNT換算1グラム= 4.184kJ および1TNT換算トン = 4.184GJから
4.5TJ / 4.184GJ = 1.0*103
つまりTNT換算約1キロトンとなります。広島の原爆はTNT換算15キロトンとされているので、水滴一粒で原爆の1/15もの大破壊を行えるわけです。
ここまで来たら破壊力が容易に想像できるでしょう。問答無用の大破壊です。
使用条件
前述したように、質量爆散は”質量・エネルギー変換魔法”です。なので魔法の使用条件として”魔法の標準が出来る程度の物体”ということとなります。とても簡単ですよね。「認識することが出来る程度の体積」であることは個体に作用する魔法の標準では当然ですが、地上に人が認識できる程度の物体が無い場所は存在しません。そもそも、打倒する相手あるいは破壊する施設を材料に出来るわけですから。
また、質量を直接エネルギーに分解するだけなので使用環境には依存せず、どんな場所でも使用できます。さらに魔法の工程が少ないので魔法の兆候を悟られにくく、威力も相まって防ぐことがほぼ不可能です。使用後に疲労した描写も無いので連発も可能でしょう。
もちろん、達也さんも社会に帰属する人間なので社会からの圧力を無視することは出来ません。なので、その威力の高さから非武装勢力の巻き添えを気にしなければならず、”問答無用の大破壊”というイメージと隠匿し難さも相まって社会からの非難を無視できません。
つまり質量爆散は「使用自体はどんな場所でも大丈夫だが、その後の批判が痛いため使いずらい」という評価になります。
とはいっても、達也さんには雲散霧消があるので巻き添えを気にすることはありませんが。
ヘビィ・メタル・バースト
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「星を呼ぶ少女」より引用
これはアンジェリーナ・九島・シールズをオペレーターとする戦略級魔法で、リーナの魔法力によって戦術級から戦略級に昇格しました。
射程・威力・使用条件は質量爆散ほどではありませんがとても優れています。
魔法のプロセスは以下のようになっています。
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「星を呼ぶ少女」より引用
- 重金属をプラズマ化
- 粒子軍の圧力を上昇させて維持
- 電離した電子をプラズマ雲から放出・拡散
- プラズマを形成する陽イオンの電磁的斥力を増加
3の段階で電子と陽子の電磁的引力によってプラズマは拡散するのですが、さらに陽子同士の斥力による拡散を加速させてより広範囲にプラズマをばら撒く魔法となっています。
射程
ヘビィ・メタル・バーストは質量爆散と同様に射線はなく「一点解放型」とも言える魔法です。リーナは作中最高峰の魔法力を持っていますが、射程は標準補助の性能に依存するでしょう。
標準補助は達也さんと同じく衛星標準で行っていますが、その精度はUSNAのものよりもサード・アイの方が上のようです。しかし、USNAのバージニア・バランス大佐は「達也との同盟でリーナと組ませて全地球圏を日米で制圧する」という構想ができるようなので、衛星標準であることもあり全地球圏が射程となるでしょう。
現在メイジアン・カンパニーでは達也さんの私兵になっているので、USNAの衛星標準は使用できないでしょう。ですが四葉は衛星リンクにより日本軍の衛星標準を使えますし、達也さんは個人で宇宙ステーション住宅を保有していますから、そちらを使えそうです。
また、日本の衛星標準はUSNAのものよりも高精度なようです。なので発動範囲ではなく精度が上がっていそうです。
威力
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「星を呼ぶ少女」より引用
前述の通り、この魔法は元々”メタル・バースト”という戦術級魔法であり”ムスペルヘイム”の改良版です。
「”開放型”のムスペルヘイム」ともされており、限定空間内の気体をプラズマ化させる高等領域魔法ムスペルヘイムの事象改変結果を「領域に閉じずに拡散させる」ことをコンセプトとしています。
工程が多く、長いように感じますが、粒子の速度は人の知覚を優に超えているので防ぐのはほぼ不可能です。魔法兆候から防ごうにもリーナの処理速度は超能力レベルで、干渉強度も最高峰なので領域干渉では防げませんし、魔法の相克もはねのけます。
また重金属を材料にした高エネルギープラズマなので、魔法障壁あるいは防壁で防ぐのは難しくなります。さらに4の工程も相まって攻撃範囲が広く、初実践投入である12歳の時には「破壊規模直径2km」となっています。
成長した状態ではどれほどの規模まで拡大できるのかが恐ろしいです。材料の金属の質量がより大きいほどエネルギーも大きくなって、範囲も広がるでしょう。
使用条件
ヘビィ・メタル・バーストは重金属を材料にしている魔法なので、それがなければ使用できません。しかし、軍事行動を起こす対象で重金属が無い場所などありえないので、場所による縛りは実質ありません。
また高エネルギープラズマだと周囲の風雨もプラズマ化すると思われるので、発動に環境要因は関係ありません。むしろ風雨が強い方がプラズマがより拡散されて被害は拡大するのではないでしょうか。
さらに、質量爆散のように「派手で威力が高い」ので実践投入が憚られるのですが、模造神器「ブリオネイク」による”白兵戦用ヘビィ・メタル・バースト”があるので対抗魔法”仮装行列“も相まって、白兵戦でも無類の強さを発揮します。
リーナは原作終了時点で司波達也の私兵のような立場になっているので、達也保有の戦略級魔法としました。
隕石爆弾〈ミーティアライト・フォール〉
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「星を呼ぶ少女」より引用
これは劇場アニメ版における日本国防海軍の研究所で研究られていた非公認戦略級魔法で、「わたつみシリーズ」と呼称される専用の調整体達がオペレーターとなります。
陸軍の戦略級魔法師(達也さん)の存在に対抗して再開がゴリ押された研究で、重大なリスクを抱えたため廃棄された日米共同研究の一部を利用しています。
簡単に言えば文字通り「隕石を地上に落とす魔法」で、工程は以下のようになります。
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「星を呼ぶ少女」より引用
- 地球軌道上の廃棄衛星や近域に存在する小天体を捕捉・スキャン
- 軌道変更
工程としては単純で、軌道変更後は対象の慣性と他天体の重力にお任せとなります。しかし、魔法の演算処理や要求される魔法力が天文学的レベルに跳ね上がるので一人の魔法師では発動不可能です。
そこで利用されたのが前述した「廃棄された日米共同研究の成果」でした。とはいっても廃棄された研究なのでそうそう上手くはいかず、射程・威力はともかく使用条件が安定とはかけ離れたものになっています。
射程
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「星を呼ぶ少女」より引用
射程自体は天体レベルの魔法なので、全地球圏を余裕でカバーするスケールとなっています。小惑星・天体の軌道変更はスパコンを使えばほぼ正確な値を導き出せるはずなので、軌道の方向によっては隣の惑星にも落とすことが出来るでしょう。
ですが逆に携行用のCADでは演算機能が足りないので、達也やリーナのように目視で標準を行えないません。
威力
【ONE PIECE】の”海軍大将”藤虎が使う「隕石落とし」や【機動戦士ガンダム】の「コロニー落とし」を想像すれば分かる通り、大質量の物体が宇宙から地上に落ちた時の被害は凄まじくなります。最低でも一都市壊滅レベル、質量によっては一国壊滅もあり得ます。
なので質量爆散が”最強の戦略級魔法”ならば、隕石爆弾は”最大の戦略級魔法”と言えるでしょう。
また「コロニー落とし」の例を挙げると、大気圏外で迎撃されても分裂することで被害はより拡大していたので、ただ落とすだけでなく空中で砕いても良いかもしれません。とはいってもコロニーレベルの大質量はさすがに無理ですから、規模はだいぶ下がりますが。
使用条件
これが上の2項の凄さに反比例するように、めちゃくちゃ難しくなります。
1つの魔法式に対して、強制同調させた複数の魔法師を導入して魔法力不足を補うという技術で、この戦略級魔法には9人の調整体が投入されていました。しかし本来は最低でも12人以上で行い、さらに1週間近いインターバルを挟む必要があるようで安定的な稼働ができていませんでした。
また、利用されている「魔法の同調」は自我消失の危険性が高いので、オペレーターは長期間運用できない可能性があります。劇中で出てきた「綿摘未九亜」は九人中九人目のオペレーターとして登場しましたが、製造ナンバーは「No.22」でした。つまり、最低でも半分は死亡していることが伺えます。この計画が再稼働されたのは作中時系列的に半年前なので、たった半年で半数以上が死亡しているのです。
そして、魔法の同調は「七草の双子」のような事例があることから血縁を無視できません。なので調整体以外でのオペレーター調達は難しいと考えられます。
隕石爆弾は達也さんが研究施設ごと抹消していたので残っていませんが、専用の大型CAD「計斗」は達也さんが精霊の眼で読み取っているはずなので、再現自体は簡単でしょう。また、オペレーターのわたつみシリーズは四葉で保護されたようなので、戦力増加に利用しないなどということはないでしょう。特に上記のようなマッドな研究は四葉好みでしょうから。
もしかしたら達也さんならばもっと安全性と安定性を高め、ダウングレードした魔法を開発するかもしれません。例えば、一個の大質量個体を落とすのではなく衛星サイズ未満の小さい個体群を降らす、とか。
断熱処理を施されている廃棄衛星ならば周回軌道上に数多く存在してますし、大気圏突入時に燃えませんから、リサイクル目的で利用価値が高そうです。当主である「四葉真夜」の特異魔法”流星群“と語彙が似ているのもありますし、手を出しそう・
それに達也さんならば、無理に同調させなくとも工程ごとに役割分担させることで負担を分散したり、一緒に投射すれば完成する一欠片の魔法式を構築する起動式を製作して同調無しで可能にさせるかもしれません。
わたつみシリーズは四葉所属でリーナのように達也の私兵というわけではありませんが、メイジアン・カンパニーの時点で達也さんは四葉家のほぼ全てを従えているようなので、司波達也保有の戦略級魔法としました。
氷河期〈グレイシャル・エイジ〉
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表紙より引用
著者:佐島勤、イラスト:石田可奈
これは司波深雪をオペレーターとする戦略級魔法ですが、その他の戦略級魔法とは違い殺傷だけでなく拘束による無力化も行えます。
なぜならば、この魔法は広域冷却魔法”ニブルヘイム”のグレードアップverだからです。
新ソ連の戦略級魔法”トゥマーン・ボンバ”の基幹システム「チェイン・キャスト」を利用しており、ニブルヘイムを増殖させて放ちます。このシステムは高度な戦術コンピューターを使用しています。
射程
衛星の索敵映像を戦術コンピューターに映し出し、付属の小銃型CADで映像に標準を行うと実際の座標が割り出されて、標準を行えます。なので射程は直接標準しない場合、戦術コンピューターに接続されている衛星による索敵システムに依存しています。
作中使用時は戦術コンピューターのある巳焼島の指令室から半径50kmとされています。しかし、索敵性能を上げれば地球の裏側だろうと標準できるようです。
威力
氷河期はニブルヘイムをチェイン・キャストで増殖させただけなので、単純な威力はニブルヘイムと変わりません。しかしその規模は洒落にならず、深雪の魔法力の約8割で半径10kmとなっています。艦隊を一度で閉じ込めることができますね。
それに威力自体ニブルヘイムと同じなので、効果範囲の海はもれなく凍結なので艦隊も停止です。しかし、海に作用する魔法なので艦の中は凍結されません。なので、戦略級魔法では珍しく殲滅ではなく無力化が行えます。
使用条件
使用条件として、まず接続する戦術コンピューターが嵩張るので固定砲台、あるいはベゾブラソフの列車型CADのようになるでしょう。そのため、狙われやすいかもしれません。
しかし達也さんが宇宙ステーションを保有しており、その他には国家でさえ宇宙の有人拠点を保有していないので、そこに氷河期用の装置を搭載しておけばヘイトを気にせず狙い放題となります。
また深雪の魔法力ならば連発は容易なので、安定性は折り紙付きでしょう。
さらに水があればどこにでも発動できるので、悪天候などの環境悪要因もプラスに働くでしょう。地球上に水分のない場所などありませんから。
以上4つが既出の司波達也保有の戦略級魔法となります。しかし、宇宙ステーションというアドバンテージが強すぎるので、それを使った戦略級魔法も開発できそうです。例えば、【機動戦士ガンダムOO2ndseason】の”メメントモリ”のような大出力レーザー砲とか。
12巻で恒星炉パフォーマンスの許可を取ろうとしたとき、恒星炉に使用する魔法から「大出力レーザー砲の実験でもするのですか?」とジェニファー・スミス先生に言われていましたし。
とは言ったものの、達也さんは「戦略級魔法はじゃじゃ馬」という意見のようなので作らないでしょう。
今回はこれで終わりです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
誤字脱字等の間違い、ご意見等ありましたらコメントでご指摘お願いします。
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