メイジアン・カンパニー5巻まとめ/解説

ストーリー解説/考察

 【続・魔法科高校の劣等生 メイジアン・カンパニー】は、魔法資質保有者メイジアンの人権問題に対して具体的な解決策を模索していく物語でした。魔法資質保有者メイジアンの人権問題については以下の記事で解説しているので、そちらも観て頂ければ幸いです。

 直前の第4巻では、魔法至上主義過激派犯罪結社FAIRテロリストが高度魔法先史文明の遺物と考えられる聖遺物レリックに眼を付け、発掘されたそれレリックを以って混乱を発生させる話でした。最後には、出土した物の中に”シャンバラ”を示す地図とコンパスがあることが分かり、次からはシャンバラ捜索が始まるというところで終わりました。ちなみに、この巻を解説している記事が以下になります。

 なので、今回は第5巻についてシャンバラ捜索を中心に進む話をまとめていきます。その後、今巻で登場した各陣営の思惑と状況を元に今後の動向について考えていきます。また、新出の魔法の解説や先についての考察も行っていきます。

 そのため、今回の記事はメイジアン・カンパニー第5巻の全体的なネタバレに当るので、ご注意ください。

 因みに、今巻で出てくる大亜連合とインド・ペルシア連邦の大まかな地図は以下から確認できます。

地図 アーカイブ – 魔法科高校の劣等生wiki (mahoukakoukounorettousei.wiki)

 最後までお付き合いいただければ幸いです。(まとめは振り返りのようなものなので、観るのが面倒な方は「今後の動向」から読んでいたいて構いません)


章ごとのまとめ

 先述の通り、まずは話のまとめを章ごとに区切って行っていきます。

遺跡の所在

 第1章は主にシャンバラの地図が示した現地の情勢についての話でした。発生した出来事は大まかに以下となっています。

  1. 7/19…サンフランシスコにて現地警察がFAIRの本部へ強制捜査。(前日の光宣の襲撃で黒い石板バベルの抜け殻は達也が盗取済み)
    • 首領ロッキー・ディーン補佐ローラ・シモン以外の組織の構成員を捕縛
      • FAIRの事実上の壊滅
      • 首領ロッキー・ディーン補佐ローラ・シモンの二名へ逮捕状が発行される
    • シャスタ山で盗掘した白い石板シャンバラの地図の押収
      • 翌日にはDIAアメリカ国防情報局が引き取りスターズへ預けられる
  2. 7/21…シャンバラの位置を特定
    • 達也はコンパスとシャンバラの伝承から遺跡の位置をウズベキスタンと考察
      • 光宣が中央アジアの各地点に降下して、コンパスから詳細な位置を調査→ブハラと特定
    • スターズはバベルの解析に手一杯なアビゲイルの代わりに、助手であるスターズ恒星級スタークラス候補隊員イブリン・テイラーが白い石板解析の指揮を採る
      • AI解析のプロを雇って地図の地点を洗い出し、シャンバラの座標をIPUインド・ペルシア連邦のウズベキスタン中部サマルカンド~ブハラの地点のどこかと推定
  3. 光宣は「シャンバラに通じる地下通路」の伝承からチベットのラサにあるポタラ宮殿を独自調査へ乗り出す
    • チベット
      • 実質的な大亜連合の属国のため、大亜連合を挟んで存在する隣国チベットを実質的にも独立させたいIPUとそれを阻止したい大亜連合の暗闘の場と化している。
    • 大亜連合の特殊工作部隊「八仙」の構成員に発見され戦闘へ→逃走成功
      • 「鐘離権」と「韓湘子」の二名と遭遇

 ”コンパス”を得た達也と全て16枚白い石板シャンバラの地図を得たUSNAが共にシャンバラのおおよその位置を特定し、その調査へ乗り出します。そして、独断で一足早く動いた光宣はコンパスを使用した影響によるものか、大亜連合の韓湘子に「正体陣営不明の魔法師」として捕捉され戦闘へ。

 その際、八仙が使用していた魔法は光宣にとって正体不明の魔法であり光宣視点の描写だったため詳細は分かりませんが、使用された魔法は以下になります。

 ”旋律”は精神を乱したり魔法を乱したりと機能は多彩なようで、全容は分かりません。他を含めて後述で紹介します。

 大亜連合軍といえば”大亜連合軍特殊工作部隊のエース”であり”近接戦闘において世界で十指に入る魔法師”の呂剛虎リュウ・カンフウが存在し、国家公認・非公認の戦略級魔法師も擁しているため強国であることは分かっていました。しかし、呂剛虎リュウ・カンフウを始めいろいろと雑なかませ役になることも多かったので、弱い印象は大きかったはずです。ところが今回は、同じく特殊工作部隊の隊員が対人総合戦闘/隠密/探索etc..,魔法技能において作中最高峰である光宣を相手に善戦したため、驚いた人は多いでしょう。

 これはよくよく考えれば当然ですが、北に新ソ連、東にIPUという大国を敵に回している状況で小国の日本相手に最大の戦力をぶつけてくるはずが無いので、前作までで大亜連合の底が知れたと考えるのは浅はかでした。地続きの大国相手に投入される戦力が日本海を隔てた小国相手に投入される戦力より手強いのは当然です。

 それに、前作では大亜連合側が日本に攻め込んでいたため、大亜連合側からすれば仕掛けた側とはいえ自由度の少ないアウェー戦です。さらに、日本は島国であり空路か海路でしか侵攻できず、西にはバックのUSNA、北には互いに敵国の新ソ連がいるため侵攻ルートか日本の東から南に制限されます。

 それでも、USNAが多少日和見することを考えれば達也さえいなければ戦況を有利にしながら日本に致命的な損害を与えることはできたでしょう。本当に、達也バグさえいなければ…。

 また、同じく名前が初出のキャラとしてスターズにイブリン・テイラーがいますが、スターズでも新しいタイプの兵士を開拓するためにこの隊員を採用しているようです。スターズの魔法工学技術部門のトップであるアビゲイルの補佐であることからも分かるように兵士兼技術者であり、カノープススターズ総司令官が司波達也という実例を基に「前線で発生した不足/不安点に魔法工学面で対応する兵士」の存在を欲したためスターズに引き抜かれたようです。

暗躍

 第2章は、主にシャンバラ調査までの準備についての話でした。発生した出来事は大まかに以下となっています。

  1. 7/25…シャンバラ調査への話を進める
    • USNA側
      • スターズがFEHRへシャンバラ調査の協力を要請
      • 提携式には代表のレナ、副代表のロイ、そしてスターズのイブリン・テイラーが同行
      • 対価にスターズはFEHRへ資金的なものを含めた多面的な援助を約束
    • 達也側
      • FEHRから、公海上で予定していた”メイジアン・ソサエティとFEHRの提携署名式”をスリランカに変更するよう依頼される
        • スリランカはメイジアン・ソサエティ設立に際してIPUから独立した国家で実質的にメイジアン・ソサエティへ譲渡された形となっている
      • 人員は達也、深雪、リーナの三名
      • 7/28…国防軍の参謀本部長が達也にIPUのラース・シン将軍への伝言を依頼→受諾
  2. 7/26…ソサエティとFEHRの提携式の場所変更を達也からソサエティへ依頼
    • 代表であるチャンドラセカールは変更を受諾(事情説明は現地で)
    • 提携式は8/2に決定
  3. カリフォルニア州リッチモンドへ逃げ延び潜伏していたロッキー・ディーンとローラ・シモンに大亜連合軍の”八仙”呂洞賓ルゥ・ドンビンが接触
    • ロッキー・ディーンを同胞として様々な支援を約束
      • 本気度の証明としてサンフランシスコ市警が保管している白い石板の奪取を約束→後日、奪取に成功

 USNA(スターズ)は既にシャンバラの石板について関わっているFEHRを使ってシャンバラの遺跡調査に赴くようですが、スターズならばそんな手順を踏まなくても現地に赴くことは可能なので、まだ本腰を入れていないのでしょう。実際に、導入される人員は正規の戦闘員扱いである恒星級スタークラスのコードを受領する前の、実質的な研修期間中であるイブリン・テイラーのみです。
 とはいえ、スターズのような重要度が高い軍隊のフットワークが重くなるのは仕方がありません。むしろ、精鋭であるスターズを最初から導入しているだけUSNAの本気度は伝わります。まあ、バレルによって一都市が崩壊しかけていたことを考えれば当然ではありますが。

 また、その一都市を崩壊させかけた結果潰されたFAIRは、リーダーであるロッキー・ディーンと補佐であるローラ・シモンのみとなっていて、リッチモンドへ避難し潜伏していたようです。テロリストとして指名手配されているため迂闊に動くことも出来ず、手詰まりのところにまさかの大亜連合が接触します。
 ちなみに、八仙の目的は「司波達也の暗殺」だと6章「中断」で明かされます。大亜連合としては目の上のたん瘤である達也の存在を看過できないのは当然なので、作中で描写されていないだけで新ソ連と共に何度も暗殺者を送っているはずです。今回はちょうどローラ・シモン魔女が達也と敵対していたので、ちょうどいい手駒として利用したのでしょう。もちろん、それが全てとは限りませんが。

渡航

 第3章は主に、現地入りしたFEHRと達也たちの探り合いとなっていました。発生した出来事は大まかに以下となっています。

  1. 8/2…達也サイド(達也・深雪・リーナ・花菱兵庫)スリランカ到着
    • 兵庫は達也の補佐に着く前はイギリスの民間警備会社PMSC「アンシーンアームズ」で修業しており、その時の伝手で様々な地域で活用できる傭兵ネットワークが存在する
      • 達也個人にとって中央アジアでの貴重な情報源
    • FEHRサイド(レナ・ロイ副代表・イブリン)到着
    • チャンドラセカールソサエティ代表を交えた会食時に、イブリンからチャンドラセカールへサマルカンドへの観光案内を依頼
      • チャンドラセカールは了承
  2. 8/3…達也サイドとFEHRサイドが共にインドのハイダラーバードにあるチャンドラセカールの屋敷に招かれる
    • 達也からチャンドラセカールへ情報開示
      • シャンバラの地図の存在
      • 地図の出土場所
      • 埋まっているであろう遺物の大まかな危険度(戦略級?)
        • チャンドラセカールは達也を交えた遺跡調査について前向きな姿勢
    • イブリンがリーナ相手に身バレ
      • 達也サイドがUSNAのシャンバラの遺跡探索の動きに気付く

 今回、中央アジア方面に伝手の少ない達也の補佐として兵庫が選ばれていますが、もしかしたら四葉の手を補うために傭兵修行をしていたのかもしれません。だからこそ、日本からすれば東西で大陸を隔てた位置に存在するイギリスへ修行していたのでしょう。そうなると、今後ヨーロッパと関わった場合は兵庫の登場頻度がさらに上がるかもしれません。

 イブリンがリーナ相手に身バレしたのは、軍人の雰囲気を隠せてなかったというだけでなく同僚スターズの雰囲気をリーナが感じ取ってしまったためです。本人の性質的に潜入・捜索・隠密等の能力が低いことも相まって、達也たちを探ろうと動いていたところをリーナに見つかり完全にバレたようです。

駆け引き

 第4章では、主に遺跡探索の段取りについての駆け引きが描写されていました。発生した出来事は大まかに以下となっています。

  1. 8/5…探索の段取りが済むまで時間つぶしの為にインド観光
    • ハイダラーバード大学の魔法研究所を見学
    • “IPU連邦軍副司令”および”インド共和国軍総司令官”ラース・シン中将と達也の個人面会
      • 日本軍との伝言を授受
    • 兵庫は別行動でウズベキスタン方面の状況確認
  2. 8/6…ウズベキスタンIPUの一部とカザフスタンでの国境で軍事的緊張状態発生
    • 両国が友好国のため、共に「大亜連合軍による工作」と予測
    • 大亜連合の動きを「光宣がチベットで起こした騒ぎに起因する」と達也が予測
      • チベットで光宣が発見した遺物を出しにインド軍を誘導し、大亜連合軍と発生するであろう小競り合いの隙にウズベキスタンのシャンバラ遺跡調査を行おうと画策
      • ラース・シンが誘いに乗り、遺物の確保を大義名分にしてチベットへの出兵を決定
    • ハイダラーバードにあるUSNAの工作拠点にてイブリンは総司令と連絡
      • 待機を命じられる
    • レナによる達也側へのスターズ関連の告発(達也はリーナ経由で既知)
    • シャンバラ調査の段取り完了

 今回、遺跡調査について達也とラース・シン将軍の駆け引きがありましたが、これは達也が一方的に出し抜いたわけではなく両者の利害の一致による決着です。

  • 達也側
    1. チベットのラサにある遺物レリックは独占したいが、優先度はシャンバラ遺跡の方が高い
    2. 達也が唯一の人造レリック精製成功者のため、ラサの遺物をIPUが保有していればチャンドラセカール経由で達也に共同研究の声がかかる可能性が高い
      • 「IPUにはラサの遺物で満足してもらおう」
  • ラース・シン側
    1. 達也の影響で魔法的遺物の価値は軍事的なものだけではなく、生活的なものも高まっているため国家的に保有したい
    2. チベットに掛かけられている大亜連合の手を外すための出兵を反対する保守派を黙らせる大義名分が欲しい

 達也側は魔法的遺物レリックが他陣営に渡ってもいざという時に首輪を付けられる立場で監視出来れば十分で、将軍側は大亜連合とぶつかる口実が欲しかったということでしょう。

潜入

 第5章では、主に遺跡調査を行う上で発生するトラブルの描写がされていました。発生した出来事は大まかに以下となっています。

  1. 8/7…それぞれの遺跡調査へ
    • FEHRサイド
      • サマルカンド観光案内にアイラ・クリシュナ・シャーストリーチャンドラセカールの護衛が着く
      • サマルカンドへGO
        • サマルカンドではイブリンが単独行動
    • 達也サイド
      • カルシ・ハナバード空港へGO
      • 将軍に誘われ会食ディナー
  2. FAIRサイド…次への準備
    • ロッキー・ディーンは継続して潜伏
    • ローラ・シモンは呂洞賓ルゥ・ドンビンの手引きで来日
  3. 達也サイド…遺跡調査の最終準備
    • 8/9…達也と将軍によるラサの遺物案件の最終確認
    • 8/10…高千穂から宇宙服のお取り寄せ→ブハラへ
      • ローラ・シモンの日本密入国の報告を受け調査を中断→高千穂を経て緊急帰国
      • FLTの防衛に遠上遼輔と七草真由美の動員
        • ローラ・シモンと呂洞賓ルゥ・ドンビンの襲撃を撃退
  4. FEHRサイド…サマルカンドにて
    • IPUにいるUSNAの諜報員と合流したイブリン→シャンバラ遺跡の探索
    • イブリンが大亜連合の諜報員に監視を受ける→市内でドンパチ
      • 報告を受けた将軍より、IPUの精鋭「サプタ・リシ」が鎮圧指令を受け出動
      • アイラよりレナの耳に入る→鎮圧へ向かう
    • レナの助力により鎮圧完了→イブリンを回収し逃避

 この章で、大亜連合の”八仙”に対抗するIPUの特殊部隊「サプタ・リシ」がちらっと描写されました。八仙のように神話上の存在を部隊名としていて、七大サプタ聖仙リシと同一視される北斗七星のいずれかをコードネームとして着名するようです。八仙への対抗部隊でインド方面に配置された部隊なので、旧インド軍を掌握しているラース・シン将軍の実質的な指揮下にあるようです。

 また、この章では戦闘描写も多かったため新出の魔法、あるいはその関連技術が登場しています。情報が少ないのでまともな解説は出来ませんが、紹介は載せておきます。

 こちらも後に解説を載せておきます。

中断

 第6章では、主に日本での”八仙”呂洞賓に関連した出来事の描写がされていました。発生した出来事は大まかに以下となっています。

  1. 8/11…帰国前の確認事項
    • 達也サイド
      • FLT警備側の被害
        • 七草真由美…外傷無し
        • 遠上遼輔…右脇腹の刺し傷
        • 警備員…言語機能の喪失
      • 情報収集
        • 敵…FAIR+八仙→大亜連合の関与
        • 魔法…バベルの使用を確認
          • 大亜連合がバベルに興味?
      • 黒羽に呂洞賓の捜索依頼→捕捉(ローラ・シモンは別行動)
      • 兵庫をIPUに残し緊急帰国
    • FEHRサイド
      • イブリンに帰投命令
      • イブリンの出国理由となっていたFEHRも帰国
  2. 8/12…呂洞賓への接触
    • 深雪とリーナは巳焼島でお留守番
    • 黒羽は包囲
    • 呂洞賓と達也の接敵
      • 呂洞賓が大亜連合の目的「司波達也の暗殺」を明かす
  3. 8/14…IPUに再入国

 FLTへの襲撃時にバベルを使用されましたが、それの治療を行ったのは達也ではなく四葉分家の津久葉家でした。津久葉家には「ゲート・キーパー」のような精神干渉系の魔法無力化魔法の汎用化を任されていたので、バベルの無効化も同じ要領で可能なのかもしれません。また達也は、戦闘で直接的な影響力の無いバベルの使用から大亜連合の狙いをバベルだと予想していましたが、まさかの呂洞賓が狙いが「司波達也の暗殺」だとカミングアウトしてしまいました。

 さすがに不意を突くためとはいえ馬鹿正直にカミングアウトする理由は無いと思われるので、狙いがバベルにあったというのは正しいでしょう。とはいえ先述の通り、大亜連合にとって司波達也が目の上のたん瘤であることに変わりはないので暗殺を計画しているのは道理です。なので、バベルが本命で達也の暗殺がついでというのが実情だと思われます。さすがに実動員1名で達也の暗殺を完遂しようとは大亜連合も考えないでしょう。

 ちなみに、大亜連合と同じ立場である新ソ連も当然ながら司波達也暗殺に動いているようで、それらの根絶が黒羽家次期当主である黒羽文也に与えられた宿題だとのことです。

再開

 第7章では、主に再開されたシャンバラ探索について描写がされていました。発生した出来事は大まかに以下となっています。

  1. 8/15…IPUでの達也サイドとFEHRサイドの動き
    • 達也サイドのシャンバラ探索の再開
      • ブハラの約30km東に存在するチューダクール湖の西岸付近と特定
      • 現地の魔法的環境が日本に存在するレリックの発掘場に酷似
        • 湖底にて遺物を発掘→コンパスと組み合わせることで別の方角を示す
    • FEHRサイド帰国
      • アイラも同伴
        • 情勢の変化に付随してFEHRへの派遣が早まる
  2. ローラ・シモンの現状
    • FLT襲撃失敗
    • 死の予感により呂洞賓との別行動を取る
      • 諸々を手配していた呂洞賓の死亡により途方に暮れる
      • 占術で逃走の方角を決める→北
        • 西には四葉本家、南には魔工院、東には四葉東京本部が存在
    • 逃走先で”百家”十六夜調に捕縛される
      • 十六夜本家で軟禁状態
      • 四葉家と七草家の捜索を回避

 達也は当たりを引くことで一歩前進し、USNAスターズは新人研修を終えて一旦手を引いた形になりました。今までコンパスがどうやって方位を示しているのかが疑問でしたが、示された先で発見した遺物を組み合わせることで別の方位を示していることから、コンパスの部品同士で引き合っていると考えることが出来ます。組み上がる順番に引き合い、最後の部品がシャンバラ遺跡にあるのでしょう。

 FEHRサイドでも動きがあり、アイラ・クリシュナ・シャーストリーがFEHRに派遣されました。今巻で光宣・達也の動くことによりチベット関連の情勢が荒れ招兵されかねない状況になったため、FEHRへの避難が早まった形です。アイラ自身もレナへの信頼を抱いたようなので、FEHRは大きな戦力を得た形になりました。

 また、同じくFEHRの構成員である遠上遼輔の関連人物であった「キグナスの乙女たち」の主人公:十文字アリサの名前が出てきました。呂洞賓との戦闘により入院したことで十文字家に存在がバレてアリサにまで情報が回ったようですが、アリサの親友であり遼介の妹である茉莉花ともども何かしらのアクションがありそうです。スピンオフのメインキャラクターなので本編に関わってくることは無いと考えていましたが、劣等生と優等生のように視点を変えることで物語を重ねずに進行させられるので、少しは登場するのかもしれません。

 FEHRの宿敵であったFAIRの副リーダーであったローラ・シモンの現状も明かされました。軟禁しているのが第3巻で達也との消極的敵対関係であった十六夜調なので、調やそのスポンサーである”元老院四大老”の樫和が達也達へ敵対的な行動を取る場合にローラ・シモンも手駒として利用するのでしょう。

 章ごとのまとめは以上です。

今後の動向

 現在の物語は「シャンバラ探索」で、それを行う理由は「危険/便利な魔法的遺物レリックの発見/抑止」です。先史魔法文明の遺物であるレリックが兵器転用されれば社会に大きな混乱を及ぼすことは、第4巻で使用されたバベルにより懸念では無くなっています。それがシャンバラという”現代にも伝わっている神話”の遺物ならば猶更です。

 そんな危険物をどこぞの政府が保有してしまえば、兵器利用されて社会の魔法資質保有者メイジアンへの風当たりが強くなってしまいかねません。そんな可能性は「メイジアンの人権保護」を掲げる達也たちが受け入れられるものではなく、一方的に政府に保有されることを防ごうとしています。

 達也たちならば「兵器利用しない」という訳ではありませんが、政府に従属していない達也たちならば兵器利用に歯止めを掛けられますし、なによりも保有できれば解析して対抗手段は確立できるかもしれないからでしょう。安全装置を用意するのは当然の思考ですね。

 だからこそ、今後もシャンバラ探索は最優先事項であり、IPUでの活動が続くでしょう。現地の情勢も荒れていますし、その原因が達也たちでもあるので大亜連合の八仙やIPUのサプタ・リンといった実力者にもさらに焦点があてられるでしょう。

 そこで、今巻で登場した陣営の中で達也たち以外の各陣営の作中での動向を考えていきます。

協力的陣営

 まずは、達也の活動に協力的な勢力です。ちなみに、協力的な勢力同士で手を組んでいるとは限りませんし、どこも部分的な協力です。

インド・ペルシア連邦〈IPU〉

 IPUは、達也の味方側に着く勢力として大亜連合と小競り合いをしながら達也の魔法的遺物レリックの発掘・研究に協力していくでしょう。

 現在IPUは、達也より「ラサのポタラ宮殿の地下に魔法的遺物が埋蔵されている」という情報提供を受けて、チベットへ出兵しています。これはIPUに元々あった「チベットへの大亜連合の影響を排除したい」という思惑を後押しするもののため、達也の誘導に抵抗無く従っていました。

 先述の通り、IPU政府が獲得した魔法的遺物を兵器として利用する可能性はありますが、達也はIPUにメイジアン・ソサエティを通じて大きな影響を与えることが可能です。これは、軍事的に見れば大亜連合という共通の敵国を持ち、技術的に見れば世界で唯一の工業的なレリック複製・生産の成功者としての智慧を共有することが出来るからです。

 さらに、「達也の情報提供により得た物」という前提がある以上、レリック関連の功績も相まって達也側から共同研究を持ちかけられた場合IPUには拒否出来ません。このように、IPUはレリック関連で達也に首輪を嵌められた状態のため、達也は中央アジアに存在するレリックをIPUに保有して欲しいと思われいます。

 また、まだIPU政府にまで伝わっていないかもしれませんが、達也はチャンドラセカール博士に「ブハラにシャンバラ遺跡が存在する」という情報を提供しています。そのため、IPUは今後レリックの発掘に積極的に動くことになるでしょう。

 とはいえ、シャンバラ探索は達也側からあまり介入されないようにしているようですし、あくまでIPUのメインはチベットでしょう。チベットでは大亜連合と直接ぶつかり合うことになるので、ベールに隠されているサプタ・リンが出てくることになります。そうなれば、中央アジア特有の魔法も登場するはずです。

北アメリカ大陸合衆国〈USNA〉

©2016 佐島 勤/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/劇場版魔法科高校製作委員会
劇場版「星を呼ぶ少女」より引用

 USNAは、バベルの解析を優先しながらシャンバラを追っていくでしょう。

 現在、USNAは達也たちと同様にシャンバラ探索を行っていました。これは一緒に発掘されたレリックの魔法「バベル」により、都市崩壊レベルの被害を受けかけたため当然の動きです。そのため、USNA軍の精鋭魔法師部隊であるスターズが動員されるのも当然の動きですが、将来的で良くも悪くも未知数の危険性を孕むシャンバラ探索よりも直近で大きな被害を与えたバベルの解析に比重を置いています。

 そのため、最初のシャンバラ探索に動員されたのは恒星級隊員スタークラス候補とはいえ新人でした。もちろんこれには、レリックを発見した場合に備えて技術分野の人間が必要だという理由があるため、解析班の役割を兼任できるイブリン・テイラーが選ばれたのは仕方がありません。これならば、人材的な節約と新人研修を行いながら解析班と先遣隊の役割を兼任できます。場所が他国で本腰の調査を行う前ならば、この形が一番効率良いでしょう。

 そして一先ずの新人研修を終えたので、これから調査隊を編成するのでしょう。とはいえスターズも大きな組織ですし、なにより現地で騒ぎを起こしてしまっているのですぐには動けないでしょう。大統領選も控えてますし、優秀な兵隊は選挙優先に駆り出されるはずです。

 そのため、直後の動きとしてはバベルの解析に比重を置きながらFEHRの状況を把握し、FEHRをどう動かせるか見極めていくでしょう。シャンバラ探索は大統領選の後になると考えています。

FEHR(人類の進化を守る為に戦う者たち)

 FEHRは、達也のUSNAでの表の活動における実質的な拠点、あるいは支部のような立場となるでしょう。

 元々FEHRは結成してから5年程度の若い政治結社で、未だ市政府に影響を与えるレベルの発言力に留まっています。また、魔法の取り締まりが厳しいバンクーバーを本拠地にしているのもあり肩身が狭く、レナのカリスマが無ければ非合法組織に身を堕としかねない立場にありました。

 しかし、司波達也という存在を背景に国家レベルの影響力を持つメイジアン・ソサエティと提携し、さらに大きな便宜は必要にしろスターズ国軍精鋭魔法師部隊の援助を受けられることになりました。これによりFEHRは、ソサエティからは発言力、スターズからは資金力等の諸々(「非合法活動の黙認」等もある?)の恩恵を受け取ることが出来ます。

 スターズとの関係は傘下のような立ち位置になりますが、FEHRには兵力的な面の強さはあまり無いので非合法活動や軍事行動の強制はほぼ無いでしょう。そうなるとUSNAは、ソサエティの活動による利益をいち早く受け取るためにFEHRを間に置く形を取ったと考えられるので、FEHR自体に要求するものは無いはずです。

 そして、ソサエティが実質的に達也の影響下にあり太平洋側の活動担当が達也であると考えれば、ソサエティ(メイジアンの人権保護)のUSNAでの活動は達也が行うことになるので、FEHRは達也のソサエティ面でのUSNAでの活動拠点となるでしょう。達也がFEHRの活動に口を出すとは考えにくいので”支部”のような扱いにはならないでしょうが、FEHRの構成員である遠上遼輔が達也の元に居ることも相まって、達也の活動拠点にはなると考えられます。

敵対的陣営

 次は、達也に敵対するであろう勢力です。あくまで「達也の敵」と一括りにされているだけで、敵同士が手を組むとは限らないので悪しからず。

大亜細亜連合(大亜連合)

©2019 佐島 勤/KADOKAWA/魔法科高校2製作委員会「魔法科高校の劣等生 追憶編」より引用

 大亜連合は、達也に敵対するメイン勢力として返り咲き、襲撃したり襲撃されたりといった展開になるでしょう。

 大亜連合は地理上、北に新ソ連、西にIPUという大国と敵対していて、また南には大亜・新ソ・IPUと対抗するために結成された東南アジア同盟、東には日本が存在しています。つまり、四方を敵に囲まれた状態ということです。だからこそ、どんな思惑があるにしろ4国の内最も軍事的に小国であろう日本を墜とす、あるいは戦争継続不可の状態まで追い込みたかったかったのでしょうが、司波達也の存在によってそれは破綻しました。

 さらに、現在は司波達也に怨みを買われている立場なので放置するわけにもいきません。だからこそ、大国相手にぶつけていた精鋭である八仙まで動員して暗殺を実行したのでしょう。とはいえ大亜連合視点で達也はIPUに渡航しているので、まだ準備段階だったのでしょう。唐突に表れた達也相手に、暗殺者とはいえ1人で逃げているのは違和感があります。達也がIPUにいる間に準備を整えようとしているているのだと考えました。

 なので、これから達也視点の大亜連合は日本に暗殺者を送ってくるでしょう。新ソ連、IPUとの状態でそう簡単に精鋭をつぎ込んでくるかは疑問ですが、大亜連合の数的に代わりは多くいるのでしょう。USNAや新ソ連もやっていたように非人道的な実験で生まれた戦闘魔法師だっているはずですし、呂洞賓からの連絡が途絶えればすぐに代わりを投入できる余力はあると思います。

 そのため、今後も日本では達也暗殺へ向けた工作員が投入されるでしょう。今回は、先にFLTへ襲撃を掛けていたので早バレしましたが、もっと慎重に動けば簡単には見つからないはずです。もしかしたら、達也に限らず人が一番隙を晒すのは人質がいる時なので、達也の友人に狙いを着けるかもしれません。それならば、第3巻の時のエリカと美月の時のように過去キャラを出しやすいので一挙両得ですし。

 また、IPUでも達也相手にアクションを起こす可能性はあります。というのも、呂洞賓の動きが早すぎることや達也に任務内容を話したことに違和感があります。これが達也への意識誘導だった場合、IPU内は大亜連合にとってビジターであるものの達也もまたビジターで、勝手を知っている分大亜連合の方が有利です。

 そのため呂洞賓は最初から囮であり、日本での活動を囮にIPUで本命の暗殺を行う可能性はあるでしょう。個人的にはこちらの方が可能性は高いのではないかと考えています。

FAIR(劣等種に対して戦う者達)

 FAIRは、一度完全に解体され別の形に生まれ変わるでしょう。

 現在のFAIRは、完全に壊滅しています。元々リーダーと補佐しかいない状態だったので実質的な壊滅状態でしたが、頭が無事なので可能性が低いにしろ再起は可能でした。さらに、どのような思惑にしろ大亜連合と繋がりを得られたので、それらのバックがあれば簡単に再起を図れたでしょう。しかし、FAIRの屋台骨でもあったリーダーロッキー・ディーン補佐のローラ・シモンが拘束されたことで完全に詰みました。

 もともとFAIRに日本活動での土台が存在しないこともありますが、軟禁先が日本の裏の権力者”元老院”の頂点”樫和家”の手駒である十六夜家に軟禁された以上の脱出は不可能です。ローラ・シモンは貴重でかつ強力な魔女としての才能を持ち、現在のバベルの保有者でもあるので、少なくとも第3巻で登場していた特異能力者と同じ様に手駒として囲われるでしょう。例え手綱を離されたとしても、調により対達也への捨て駒とされるだけなのでUSNAに戻ることは叶いません。

 もちろん、まだ大亜連合がFAIRに価値を見出し、ロッキー・ディーンの要望でローラ・シモンを奪還するという可能性はありますが、大亜連合がローラ・シモンを渡すとは考えられません。少なくとも実験体待遇、悪ければ真夜ルートを辿るでしょう。

 ちなみに、対達也という共通敵を持つ十六夜調と大亜連合は手を組めるように見えますが、日本の守護を優先とする元老院が正規の国軍であり日本の仮想敵国である大亜連合と手を組めるとは思えないので、可能性から除外しています。

 そのため、この時点でロッキー・ディーンは自分は動くことが出来ないのに手足も全て捥がれている状態なので、FAIRという自立した組織を再興するのは不可能です。ロッキー・ディーンに残された再起の可能性としては、持っているであろう特殊な魔法技能デュオニソスを売り込むことで大亜連合の手足として国外の工作員/諜報員の立ち位置に着くぐらいでしょう。

 宿敵であったFEHRがソサエティと提携し、スターズ国軍の支援を受けられる強固な立場を手に入れたので、FAIRも同じような状態へ変化するのではないでしょうか。個人的に今までのFAIRは「ちょっと厄介」程度の印象で迫力不足なので、これからも敵役として引っ張るならば大亜連合をバックに付けるぐらいしてほしいです。

 以上が今巻で登場した各陣営の今後の動向予想です。国家的に見れば、IPUもUSNAも今後達也が促す利益を少しでも享受するために協力的姿勢を保ち、大亜連合は歩み寄れる立場ではなくなっているのでどうにか排除しようと敵対的行動を取り続けるでしょう。

 他にも十六夜調の動向は個人的に気になっているのですが、あくまで十六夜調が達也に抱いたものは「敵意」であって「害意/悪意」ではありません。なので、達也に対しては小さい嫌がらせ(今回のローラ・シモン軟禁等)を行いながら日和見を貫くと考えています。そもそも、上司?である樫和主鷹は日本に益を残す達也を阻めませんし、十六夜家では四葉家と敵対する理由は無いので、個人的な敵意だけでは調も動けないと考えます。

新魔法紹介

 最後に今巻で登場した新魔法を紹介していきます。

八仙の魔法

 まずは、大亜連合軍特殊工作部隊”八仙”の構成員が使っていた魔法です。今巻では3人がそれぞれ別の魔法を使っていましたが、一括りに紹介してしまいます。

魔笛の旋律

 韓湘子が使っていた魔法です。笛で奏でる旋律に想子サイオン波を乗せて、特定の効果を発動する音波?魔法です。また、想子サイオン波が聞こえる範囲の人間を対象に出来るので、不特定多数に効果を与えることができます。

 作中で発動された効果は以下です。

  1. 身体機能阻害
    • 脳震盪
  2. 魔法阻害
    • 発動阻害
    • 維持阻害
    • 標準阻害

 奏でる曲によって効果は変わるようで、魔法阻害いたっては現代魔法と古式魔法で別の旋律を奏でなければならないようです。しかし、想子波の範囲はある程度術者が自由に設定できるようで、味方を巻き込まずに範囲魔法を発動出来ます。曲によって効果を入れ替えられるので、効果も多様なのでしょう。

窮奇

 鐘離権が使っていた魔法です。呪詛を真空の刃に乗せて放つ魔法で、「斬り裂く」という意思で鎌鼬を強化しています。「病は気から」という現象を利用し、込められた意思に負けると「斬られた」という思い込みを現実に反映させられ傷を負います。

 気流を媒体にしているので射程は短いようです。

疑似瞬間移動(使い魔)

 鐘離権が使っていた魔法です。離れた位置にいる使い魔が破壊された時発動する魔法で、破壊された地点に主を転送します。

 使い魔の操作範囲は分かりませんが、数㎞ならば自在に操れるようで、さらに敵の探知にも使えるようです。おそらくは、吉田幹比古が九校戦「モノリス・コード」で使用していた「感覚同調」も使用しているでしょう。

縄鏢術

 呂洞賓が使用していた魔法です。縄鏢術という刃物に縄を付けて操る技術を魔法で発展させたもので、魔法で作り上げた仮想の糸とナイフを繋ぎ合わせることで物理法則を無視した軌道を描かせることが出来ます。

 スターズの投擲魔法「ダンシング・ブレイズ」よりも威力や操作範囲は劣っているものの、範囲内での操作性は圧倒的に勝っているようです。

魔法式溶解

 鐘離権と呂洞賓が使用していた魔法です。肉体と接触した魔法の魔法式を溶解させることで防ぐ対抗魔法で、肉体だけでなく使用する武器等にも効果を付与することが出来るようです。

 魔法式が接触した瞬間に接触点から跳ね返った想子波動で魔法式を溶解させ無効化するようで、無効化は全自動のようです。また、「接触」が発動条件なので自分から触りに行くことで魔法を無効化することが出来、効果だけならば接触型術式解体グラム・デモリッションに酷似しています。しかし、「物にも付与できる」という点で異なっていて、そのことから刻印魔法のような形態になっていると考えられます。

FEHRの魔法

 レナ・フェールと、今巻で事実上の構成員となったイブリン・テイラーが使用していた魔法です。

プレッシャー・ブリット

 イブリン・テイラーが使用していた魔法です。吉祥寺真紅郎の「インビジブル・ブリット」を改造した魔法で、一撃狙撃型である原本オリジナルとは違ってセミオート連射型となっています。

 仕組みは「ファランクス」に類似していて、予め数発の弾丸を待機させて任意のタイミングで撃ち出す遅延発動術式となっているようです。おそらく原本と同じく「発動ポイントを視認する」ことが発動条件でしょうが、威力は変わらないかもしれません。イブリン・テイラーがスターズ恒星級隊員候補と有望なので、吉祥寺真紅郎とは比較できませんが。

デフューザー

 レナ・フェールが使用していた魔法です。意識の焦点を拡散させる精神干渉系魔法で、個人を対象に精神の緊張を弛緩させます。

 一般的な魔法の威力は分かりませんが、レナ・フェールが発動した場合は戦闘中の人間さえ意識を奪います。気絶に追い込むわけでもなく相手を負傷させるわけではないですが、対象を無力化させるだけならば最も適した魔法です。

FAIRの魔法

 今回、FAIRのリーダーであるロッキー・ディーンは魔法を使用しませんでした。そのため、ローラ・シモンの魔法のみとなります。

告死天使〈アズラエル〉

 心臓麻痺による即死効果の持つ呪詛魔法です。音に聞こえる範囲内であることが射程条件で、範囲内にいる1人のみを効果対象として選択できます。

 強力ですが起動式が無いので代わりに詠唱が必要で、CADが不要ですが発動までに時間がかかるという特徴があります。ローラ・シモンは声帯を改造することで詠唱の時間を短縮し高速化しているようですが、それでも現代魔法の速度には敵わないようです。

復讐の三女神〈エリニュエス〉

 魔女の用いる自動報復魔法です。「呪詛返し」の一種で、魔法によって自身が受けた苦痛を相手に共有させる効果があります。

 魔法式が投射された経路を辿るので、攻撃してきた対象を認識している必要は無いと考えられます。また、「自身に向けられた分のリソース」で反射させることになるので、自身のみを直接標的とした魔法ならば肉体に刻まれた傷等全て相手に返しますが、範囲攻撃のような「自身以外も標的とする魔法」の場合自身に向けられたリソースは一部なので反射される苦痛も一部になります。

メイジアン・カンパニーの魔法

 残りは達也の発明品と七草真由美が発動した魔法です。括りが難しかったので、一応「メイジアン・カンパニー」としています。

標準補助魔法陣

 司波達也の開発した魔法の標準補助魔法陣です。本来標準補助機は特化型CADに取り付けられたもので、CADにおける銃口が標準補助を行っています。標準補助はそれ自体が座標の演算・補正を行ってくれるので、術者が魔法発動対象認識していれば銃口を向けるだけで座標の設定を行うことができます。

 高性能の標準補助には映像などとリンクさせることも可能なので、術者は銃口を向けることさえせずに標準を完了させることができます。戦略級魔法などの超長距離魔法はこれが必須になります。

 今巻でお披露目された「標準補助魔法陣」はCADに付属する機器ではなくそれ自体がCADで、携帯するには向かない程度の小型機械(ノートパソコンくらい?)となっています。起動することで平面に光を走らせて魔法陣を描くことが可能で、魔法陣は誘導灯のように「描かれた地点への標準が容易になる」という効果があるようです。

雹嵐〈ヘイル・ストーム〉

 七草真由美が使用していた魔法です。一定範囲内に雹の雨を降らせる魔法で、おそらく工程は「ドライ・ミーティア」と同様だと考えらます。そのため、「空気中の水分を利用して雹を生成し、地面へ向けて発射する」という魔法を設定した範囲内全域で行う範囲攻撃だと考えられます。

 作中では十師族の中でも上位の部類である七草真由美が発動したため、”十の障壁魔法”でなければ防げないレベルの威力と逃れることが出来ない攻撃範囲・時間となっていました。


 以上で今回の記事は終了です。

 個人的に今巻で一番良かった点が、今までは小規模の悪質組織FAIRが敵だったため厄介程度で肩透かし感が大きかったところ、大亜連合の中央アジア方面の戦力とも衝突し始めたことで敵の大きさが段違いに膨れ上がった点です。やぱり前作から比べると国軍ぐら出てこないと物足りなく感じてしまいます。

 もちろんそれは達也たちを相手にする場合の話であって、サブキャラやスピンオフのキャラクターが相手にする敵の場合は別です。なので、サブキャラに焦点が当てられた時やキグナスの乙女たちの描写は満足しています。

 最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 ご意見やご指摘などある場合はコメントをしてもらえると嬉しいです。


 

コメント

タイトルとURLをコピーしました