逆行系SSに必要な最低限の要素

SS要望書

 私は二次小説の中でも【ヒカルの碁】を前から好んで読んでいるんですが、基本的にヒカルの碁は二次創作のメインジャンルが”腐向け”であり”日常系”が溢れています。しかし、私は作品問わず”腐向け”自体が苦手なので、食指が動くヒカ碁作品の絶対数は少ないです。

 それでもなぜ【ヒカルの碁】の二次小説が好きなのかというと、”逆行系”というジャンルを好んでいるからです。逆行系とは「ある地点からそれよりの若い時代まで遡る」というジャンルですが、ヒカ碁の場合は主人公である「進藤ヒカル」がプロ入り後の棋士時代から幼年期まで逆行するという概要を表します。

 そのためプロの実力を保持した子供になるので、「強くてニューゲーム」みたいな系統が多くなりますが、基本的にただ無双するだけの話は薄いので強くてニューゲームになっている作品は嫌いです。これは最強系であることが悪いわけではありませんし、主人公最強系は私にとっても結構好きな部類です。

 じゃあ何が好きで逆行系が好きになったかというと、引き継いだ強さ故の苦悩が発生しやすいからです。要は”強さの代償”ですね。どのような話であっても相対的な強さに対して何かしらの喪失、あるいは苦悩があってしかるべきです。ですが強くてニューゲームはそれが無く、山なし谷なしの平坦なストーリーになるのですぐに飽きがきます。

 前置きが長くなりましたが、今回は逆行系二次小説の魅力になる、前述の喪失なり苦悩なりといった必要最低限の要素を語っていきます。ぶっちゃけ性癖をただ連ねてるみたいなところもあると思うので、ご了承ください。


疎外感

 これはまず陥るであろう、”周りとの認識のギャップ”による疎外感ですね。当然ながら人生をやり直すわけですから、まず周りからの自身の扱いの急変に戸惑うはずです。心身ともに成熟していながら、周りの大人は自身を未熟と断定し、周りの子供は自身を対等として接してきます。

 逆行時期によって反応は様々でしょうが、歳を重ねていればいるほどギャップは大きくなります。もちろん、周りに言って理解されれば全ては解決しますが心の病気と判断されるのがオチですから、感じるギャップに蓋をして「みんなが思う自分」を演じるしかありません。

 それに失敗して病気と判断されればまだ良い方でしょう。悪ければ”異端”として周りから排斥されるかもしれません。そうなったらそうなったで、成熟した精神を持っているため耐えられはするのでしょうが、「身体は子供」状態に変わりませんから生きていく上での不便は避けられません。

 まあ、性格や仕草に変化が無ければありのままで居らるでしょうが、周りから受け入れられたとしてもそれはそれで「普通の子供」としての待遇で我慢しなければならないので、ストレスは積み重なります。そうなれば自ら孤独を望むことになります。周りに自信を理解できる人間などいないわけですから。

 以上のように、逆行した者はどのような選択を取ろうと周りから理解されないので、何かしらの孤独を味わうことになります。これが細かく、深く描写されているほど心を打ちますし、孤独が解消された時は泣けるストーリーになる訳です。

乖離

 これは、既に「その時」を過ごした記憶があるためにそれを事前知識として行動を変化させた結果起こる「出来事の乖離バタフライエフェクト」です。

 逆行系では前の人生で起こった不幸な出来事や改善したい事実を解消するため、前の記憶を基に裏から手を回すことがあります。まあ当然ですよね。「なぜかわからないけどもう一度のチャンスが与えられた」わけですから、前の人生で「苦悩を分かち合った者」、「助けてくれた恩人」、「好きな人」、「助けられなかった人」など生きていれば大なり小なり絶対いる大切な人を幸せにしたいと思うでしょう。「理解し合えた人」とまた会いたいでしょうし、「理解し合えなかった人」と和解したいでしょう。

 ですが、物事には順序というものがあります。結果には過程が存在します。答えが解っているからといって途中式を省いて解を得られるとは限らないのです。なぜなら人は全ての真実を知っているわけではないのですから。

 同様に”人が幸せになる”条件は自身と違いますからそれを考慮しなければ、例え前の人生で仲が良かったとしても逆行後に同じ関係が成立するとは限らないのです。分かり合う要素は人それぞれですから、それを理解できていなければ相手からは「なぜか誰も知らない自分を知っている奇妙な人」として過剰に警戒されてしまいます。

 このように「いづれ来る未来を基に行動したのに、望みとは違う結果が付いてくる」ということになります。まあこれは悪い出来事だけでなく良い出来事もある場合はありますが。前は理解できなかった人間と分かり合えた、とか。

喪失

 これはキャラもそうですが、前の人生原作で存在していた逆行者にとって必要不可欠な”もの”が無いという状況のことです。独自設定のようなものでしょう。例えば才能、あるいは相棒、あるいは家族…等々。そのキャラクターの前提として存在していた要素を前提から外す設定です。

 これを行うことで簡単にキャラを追い込むことができますし、原作とは別の道を歩ませることができます。何かしらが「弱くてニューゲーム」になるので、心情などを繊細に描き、悲壮感漂うストーリーに小気味良く暖かいネタを挟まなければ読者は早々に離れる可能性が大きいです。しかし、原作の焼き直しを避けられるのでストーリーに引き込まれやすくなります。


 大まかな語りは終わりです。これ以上細かくすると作品個々の話になるので、それはまた別の記事で綴ろうと思います。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。


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