宇宙住宅【高千穂】の運用法

自己解釈・妄想録

 魔法科高校の劣等生の最終巻で披露された衛星軌道を周回する宇宙住宅「高千穂」は、妖魔憑きパラサイトとなり人の世から隔離しなければならない光宣と水波の隠れ家とするために造られました。一から造ったのではなく新ソ連から鹵獲した潜水艦「クトゥーゾフ」を宇宙使用に改修した物ですが、民間組織である四葉家が宇宙ステーションを造ってしまうのは異常ですね。

 それも作中では二十一世紀半ばから世界群発戦争という二十年ほどの第三次世界大戦が続いていましたから、世界中で有人宇宙ステーションを運用する余裕が無くなっているとのことです。それを含めて考えれば四葉、というか司波達也がどれだけ異常なことを成しているのかが分かります。

 以上の理由から作中で宇宙に人を収容できる拠点を保有しているのは四葉のみということになります。世界で唯一というものを保有しているわけですから、宇宙住宅の利点は多いでしょう。

 今回は宇宙住宅「高千穂」の運用法について解説および考察を行います。

 最後まで読んでいただければ幸いです。


宇宙住宅【高千穂】の利用法

 まずは高千穂の第一目的であった光宣と水波の移住に関係することです。

危険人物の隔離

 ここで、危険な思想を持つ人物ということに関係なく、社会に危険だと指定された人物のことを指します。光宣や水波のような人外は民衆に拒絶される異分子ですから、危険思想を保持していない穏健な人物であっても国家から追われる存在です。

 ですが、彼らのような人外は特異で希少な能力を持っていますから、軍事組織としては兵器として保有しておきたいのが本音です。達也もまた光宣の才能とセンスを惜しんでいました。だからこそ宇宙というどの国家の領域でもない場所は絶好の隠れ家になります。

 また、最初に言った危険思想を持つ人物の牢屋にもなります。なぜなら宇宙住宅なわけですから、外は宇宙空間であり生物が存在できない領域です。高千穂と地上を繋ぐ衛星エレベーターの魔法刻印を使用されなければ逃げられませんし、魔法により「同一軌道上を周回する」と定められているので着陸大気圏突入?などの操縦は不可能です。

 このように、価値は高いがその能力の特異性故に社会から排他される存在の隠れ家としてだけでなく、社会に危険を及ぼす人物の牢屋としても活用できます。

 四葉は国から、強力な魔法技能を保有する魔法犯罪者を隔離して監視する役目を受けていましたので、危険人物の宇宙隔離構想はありそうです。これはエドワード・クラークの計画と似た発想ですね。

魔法実験

 衛星の本命と言える利用法の1つが「無重力空間での科学実験」です。無重力では器具などの外部要素や反応の誤差を地上とは比べ物にならないほどに極小化できるので、理想的な環境での科学実験を行うことができます。

 また、周囲への影響を考える必要がないので危険な実験も好き放題行えます。それは魔法の実験でも同じです。魔法は使用者の力量に依って兵器転用が容易な技術です。それこそ、開発段階では威力の定数化が上手くいく保証がないため、周囲への入念な配慮が必要です。人の認識力では、魔法を発生させる魔法式が視えないのも不確定要素を煽っています。

 もちろん、魔法式を直接認識できる達也と光宣がいる以上、起動式の段階からどのような魔法が発動されるのかは分かります。しかし、研究者である司波達也にとって”視て解る”ということと”事前の準備をしない”ということはイコールではありません。事前の実験も無く実践投入しようとしたことなど、追憶編で「質量爆散マテリアル・バースト」を行った時や急転編で「海爆オーシャン・ブラスト」を吉祥寺に託した時のような、真に余裕がない時だけです。

 さらに魔法実験における利点として、隠密性に優れているということです。基本的に魔法か否かに関わらず、非人道兵器の開発は国際社会によって禁止されています。しかし、魔法は実際に使用されるまで非人道的な結果を及ぼす技術かが分かりません(秘匿し易い)。なので魔法兵器開発は主沙汰にならないところで開発されています。

 宇宙という場は技術開発を悟られることが薄く、潜入を許す危険性は最も低いでしょう。そのため、誰に悟られることも無く、周りを気にする必要も無く好き勝手に実験を行えるわけです。

 破壊兵器によって高千穂が全壊してしまっても心配はありません。例え宇宙に放り出されても宇宙線を遮断する空気の層を展開する人造レリックを緊急用に持っていれば時間を稼げますし、全壊した高千穂は達也の「再成」で修復可能です。部品を宇宙に送ってから再成で組み立て直すというプロセス上、高千穂は達也独自の印を付けられているはずなので問題ないはずです。

移動中継所

 高千穂は「仮想衛星エレベーター疑似瞬間移動」の魔法で地上との出入りを可能にしています。この魔法は刻印魔法で発動しており、四葉の拠点である巳焼島の物資搬入用の大規模刻印があります。これによって巳焼島と高千穂の視線が通っている間は好き放題物資を輸送できます。

 また、高千穂の内殻にも人の出入りを可能にする小規模刻印が刻まれており、人間程度の質量ならば高千穂側からの刻印で輸送が可能になっています。さらに、高千穂側の刻印は小規模ながら移動先を変数化しているので、直接見える範囲にはどこでも転移が可能です。

 つまり、高千穂側から視線さえ通っていればどの地点へも往復が可能になっています。これはとても有効な移動手段です。宇宙を経由した転移など防ぎようがないので、高千穂が宙に有る限り密入出国が自由にできるということですから。

 達也と光宣はそれを見越して、高千穂の軌道を水平にずらすことで北極と南極以外の全てをカバーする起動式を開発してしまいました。これにより世界中の全国家への超隠密的な移動手段を確立しています。隠密作戦が十八番の四葉家にとっては「鬼に金棒」でしょう。手が付けられなくなります。

 ちなみに、地上から高千穂側の魔法刻印を起動させることは難しいようです。しかし、高千穂への引き上げ要員として衛星エレベーター起動用の機械人形パラサイドールを配置しているので、ドール側から対象を捕捉していれば引き上げは可能です。ドールは戦闘用女型機械人形ガノノイドですから、高千穂内のレーダー探知機などの通信手段と同期可能であり、座標の捕捉は容易なので引き上げは容易でしょう。

 また、住居内の重力は人造レリックにより再現されており、水や電気などは恒星炉により自給自足が効きます。なので、物資の補給を受けられる宇宙開発拠点として利用できるでしょう。現状の宇宙開発(ディオーネ計画)を拒否した達也が、最も宇宙開発可能な位置に居ることにとても皮肉が効いているように感じます。

衛星兵器

 これは機動戦士ガンダムOO2nd seasonで出てきた「メメントモリ」からの連想です。

 メメントモリはガンダムWikiによると巨大自由電子レーザー掃射装置とされています。低軌道オービタルリング上に建造された大規模戦略兵器であり、上部と下部に対局の砲台を設置し射角を調整することで地球の大半だけでなく宇宙側への砲撃も可能にしています。威力は「一撃で都市を消滅可能」という「質量爆散マテリアル・バースト」級の破壊力を誇っています。

 なんと高千穂では上記のメメントモリを再現することができます。

 まず、周回軌道や射角は既に解決しています。周回軌道も射角も飛行魔法の応用ですから、機体を水平移動させたり傾けたりすることで可能です。

 そして肝心のレーザー砲は恒星炉に使われている魔法を別利用すれば可能なようです。具体的には分かりませんが、小説14巻のダブルセブン編で達也が「恒星炉における魔法システム」の実験を第一高校で行うために使用する魔法一覧を提出したところ、確認を行っていた教授より「大出力レーザー砲でも試す気か?」と指摘されています。達也もまたその指摘により、恒星炉に使用している魔法を別に組み合わせれば「核融合爆発を利用したレーザー兵器」に利用可能なことに気づきました。

  「核融合爆発を利用したレーザー兵器」 は、要求される魔法力の問題で兵器化は難しいのでしょう。ですが、達也には人造レリックがあります。人造レリックによって魔法師側が負う負担を無視した魔法運用が可能になっている現状ならば「メメントモリの再現」は十分可能でしょう。

 まあ戦略兵器なんて達也は下記の記事で解説した通り、十分なほど保有していますから必要としないでしょう。

 あっても大陸間魔法用の超遠距離標準補助システムの砲台に利用する程度です。宇宙からならば遮蔽物が地上よりも少ないので、標準用の砲台としての利用が有効です。


 とりあえずは、以上の利用法が解説あるいは考察できます。それ以外にも運用法がある場合はご意見をください。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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