魔法科第三期〔ダブルセブン編〕へ向けた事前知識

ストーリー解説/考察

 2022年お正月に【魔法科高校の劣等生】アニメの続編製作が発表されました。ちなみに、現在アニメ化されているのを作中時系列順に並べると、以下になっています。

  • 幕間…追憶編(8巻)
    • 3年前の話のみ
  • 第1期…入学編~横浜騒乱編(1~7巻)
    • 夏休み編(5巻)は除く
  • 第2期…来訪者編(9~11巻)
  • 劇場版…オリジナルストーリー(11巻と12巻の間)

 なので、第3期は12巻である〔ダブルセブン編〕からとなります。

 今までの内容を復習すると、入学編では”一般の魔法師”が互い対して目を向ける中、達也は目標と共に社会へ目を向けていることを示しました。九校戦編では魔法が暴力装置でありながら、スポーツという形での平和的利用法があることや、魔法にも工業技術的分野があることを示します。横浜騒乱編では達也が魔法技術の平和的利用法を模索し”魔法師の社会的地位の向上”を目指しながら、皮肉にも魔法が兵器として有用であることを示します。来訪者編ではついに”世界最強の魔法師部隊”と魔法由来の怪物の登場により、「魔法が暴力として利用されること」が普通であることを読者に示しました。

 以上のように1年生編では「魔法師の実態ってどんなの?」というお題になっています。そこで、達也は内から社会に目を向け「魔法師が良く見られるように頑張っている」ことが分かっていますが、対する「魔法師って社会からどんな風に見られてるの?」ということがあまり分かっていません。そのため、続く2年生編では「社会が魔法師に対してどのような認識を持っているのか」を示されることになります。

 マスコミや人権団体、政治家など魔法師とは関係性の薄い一般的な社会を構成している者達が多く登場し、魔法師が社会的にどのような立場にあるのかを突き付けてきます。一学生では対処できない不利益が多く降りかかり、必然的に魔法師の中でも地位が高く社会へ影響を与えられる存在、”十師族”へと焦点が当たります。

 今まで「強力な魔法師集団」という認識しか持っていなかった”数字付きナンバーズ“の頂点である”十師族”。そんな彼らがどのような存在であるのか、どのようなことをして魔法師の地位を守ろうとしているのか。それに付随して、四葉家の存在である達也はどのようにして他の”十師族”と関わっていくのか。それが、2年生編で触れられる内容です。

 ですが【魔法科高校の劣等生】のアニメは、スピード感を保つために多くの解説を犠牲にしており、先の〔追憶編〕でも多くの不足点がありました。それは〔追憶編〕補完知識の記事で解説していますが、これからも多くの描写が解説無し、あるいは簡単な説明で流されることでしょう。

 そこで今回は、アニメ3期以降で登場する存在の内、事前に知っておいた方が良いと考えるものを解説しました。物語のネタバレにはならないように、概念や用語などを上げていきます。

 最後までお付き合い頂ければ幸いです。


数字付き〈ナンバーズ〉

 日本政府が行った魔法師開発をルーツとする「作られた魔法師」である”十師族”を頂点として、由緒正しい技術を継承してきた古式魔法師の一部の家を巻き込みながら存在するのが”数字付きナンバーズ“です。

 民間組織でありながら、政府に対して家単位でそれぞれ大小の影響力を持ちます。これは魔法が軍事力として期待されているためであり、作中でその頂点に座する十師族は「魔法師の民間組織」の世界的な代表格とされています。

 苗字に数字が入っており、1~10の数字が入った”十師族”と”師補十八家”の二十八家、11以降の数字が入った”百家”に分けられています。

十師族

 主人公の達也や深雪、七草真由美や十文字克人など、日本の魔法師の頂点と目される10の家で構成された集団です。第三次世界大戦前の2030年代に創設された”魔法技能師開発研究所”をルーツとしている最近の魔法師なので歴史も由緒も存在しませんが、”現代魔法師の大家”と言えるでしょう。遺伝子操作による人道を排した研究(人工勾配)によって製造された魔法師なので、由緒ある家とは仲が悪くなる傾向にあるようです。古式魔法師との確執の一部がそれでしょう。

 魔法技能師開発研究所は、第一研究所から第十研究所までの合計10箇所存在していました。それぞれ研究されていた内容は異なり、以下のような魔法研究が成されていました。(文庫版巻頭の用語解説より引用)

  1. 生体に干渉する魔法を研究
  2. 無機物に干渉する魔法を研究
  3. マルチキャスト(同時発動、連続発動等)技能の向上を研究
  4. 精神干渉系魔法を利用した精神改造による魔法力の向上/付与を研究
    • 対外的な実態は不明とされている
  5. 物体の形状に干渉する魔法を研究
  6. 熱量制御魔法を研究
  7. 群体制御魔法を研究
  8. 重力、電磁力、強い相互作用、弱い相互作用の制御魔法を研究
  9. 現代魔法と古式魔法の融合を研究
  10. 空間に仮想構築物を生成する領域魔法を研究

 出身とする研究所の番号を苗字に入れているため、数字が被っている家は同じ研究所の実験体であったことを示しています。

 実験体であった魔法師は「九島烈」を中心に師族体制を確立し、国家権力に対抗する魔法師の旗印となりました。そのため、十師族は日本魔法師の支配者ではないがリーダーであり、民間人でありながら超法規的な特権を持ちます。

アニメ魔法科高校の劣等生
第11話「九校戦編IV」より引用

 十師族は資格を保有した二十八家の中から、4年に一度の”師族会議”によって師族間投票で選定されます。明確な選定基準は特に明かされていませんが「日本魔法師の頂点」を名乗るに相応しい格が備わっている必要があるので、特に優秀/強力な魔法師を保有していることが重要になってくるようです。そうして選定された入学編2095年時点での十師族は以下になっています。

  1. 一条
  2. 二木
  3. 三矢
  4. 四葉
  5. 五輪
  6. 六塚
  7. 七草
  8. 八代
  9. 九島
  10. 十文字

 1~10の数字が揃っているのは師族体制が始まって以来初で、普通は数字の重複および欠損があるそうです。この中でも最上位に位置にすると目されているのが以下の三家です。

  1. ほぼ当主の名声だけで十師族の頂点に座する別格”四葉家”
  2. 数だけは多い”七草家”
  3. 首都の最終防壁”十文字家”

 これは四、七、十の研究所が兵力的な意味での魔法研究に対し積極的だったためです。その理由は、第四研は政府というより権力者が所有していたためで、七と十は首都に配置され首都防衛に主眼を置いていた為だと考えられます。

 因みに、四葉家を十師族たらしめている”当主の名声”とは世界の魔法界での通称であり、四葉真夜は「夜の女王」あるいは「極東の魔王」と呼ばれ”世界最強の魔法師”の内1人とも目されています。既に四十代後半でありながら二十代でも通る美貌から「真正の魔女」とも思われているとかなんとか…。

師補十八家

 先述した「十師族への選定候補である二十八家」の内、十師族になれなかった残りの十八家を”師補十八家”と呼称し、以下の家が存在します。因みに、第四研は「本家/分家」という形で統合されたので、四葉家以外の”四”の数字付きナンバーズは存在しません。

 必然的に「日本魔法師の頂点を名乗るほど”格”が不足している家」ということになりますが、基本的に個人の魔法技能では(最上位は除くにしても)十師族とそう違いはありません。あくまで、名声を広げるための「魔法師の数」、「財力」、「権力」などが不足しているだけでしょう。師族体制創設の理由から考えて「国家に対する影響力」が不足しているのだと考えられます。

 例えば、文庫版の〔来訪者編〕の8巻では過去編の合間に第1期最後に当たる”灼熱のハロウィン”(横浜騒乱編)直後の話が掲載されており、そこで国防の観点から十師族”五輪家”の話になりました。そこでは、「五輪家が十師族にいるのは、長女が国家公認戦略級魔法師こと”十三使徒”の内1人である側面が強い」という説明がなされており、そういった例外を除けば師補十八家との差があるわけではないようです。

 〔ダブルセブン編〕でも師補十八家の新入生が登場しますが、同期入学である”七草の双子”とほぼ同等の魔法力として描かれています。

数字落ち〈エクストラ・ナンバーズ〉

 師族候補である二十八家は魔法技能師開発研究所の”成功例”です。当然ながら研究には失敗が付き物であり、魔法師開発においても同様です。作中では、政府より”失敗の烙印”を押された証として数字を剥奪された実験体、”数字落ち〈エクストラナンバーズ〉通称「エクストラ」“が存在します。理由は様々で、反逆の罪、重大な任務失敗、魔法技能の欠陥、モラル違反など様々です。

 魔法師が実験体として製造された負の側面でもあるので、日本魔法界では”目を逸らしたい黒歴史”のような扱いを受けています。達也世代の親、あるいは祖父母世代が剥奪され、研究所から追放された当人であったため、20年以上前は差別意識が強く、社会的に少数派である魔法師社会の中でも少数派として排斥されてきた過去があります。その経緯が黒歴史感を助長しているかもしれません。

 〔来訪者編〕までで作中(優等生・アニメオリジナル含む)に登場しているエクストラは以下の四人です。

  1. 名倉三郎…「七倉」
    • アニメ未登場である七草真由美の護衛で、「七」の数字を剥奪されています。5巻で登場し、文庫版で初めて”数字落ちエクストラ・ナンバーズ“として解説されたキャラクターです。一応、今後アニメでちゃんと登場するとはずなので「なぜ数字を剥奪されたか」は触れないでおきます。
  2. 市原鈴音…「一花」
    • 作中主要キャラの中で唯一のエクストラ出身です。親、あるいは祖父の代で数字を剥奪されました。第一研の「生体干渉魔法」で、「人体に直接干渉する魔法」が”人体実験不可避”ということからモラル違反で剥奪されたと考えられます。
  3. 十七夜栞…「?」
    • アニメ【魔法科高校の優等生】の第三高校一年生として登場したキャラクターです。親が数字を剥奪されましたが、自身は”百家”十七夜家と養子縁組を交わしています。ルーツがどこかは明かされていませんが、「スピード・シューティング」の様子を見る限り個人の演算能力を加味しても空間認識能力が異常なので、「空間に仮想構築物を生成する」第十研がルーツだと考えられます。
  4. 岬寛…「三咲?」
    • 〔来訪者編〕のアニメオリジナルストーリーで登場したキャラクターです。「三」の数字を剥奪されており、「同意済みの他者を精神干渉系魔法で操作して、魔法の使用を強制せる」魔法が「人体の動きを操作する禁止魔法」とされことが考えられます。

 閉鎖的である魔法師コミュニティの中での少数派なこともあり、差別を恐れて魔法界から離れて魔法とは関係のない一般職に就く人もいるので、作中で登場するのは数人しかいません。

百家

 「十の位の次は百の位」という意味で作られた、十師族に次ぐ魔法師の家柄が”百家”です。なので百の家があるわけではないですし、101以上の数字を関する家も存在します。あくまで、師族体制に組する日本魔法界の中流階級を表す分類でしょう。

 神道系の古式魔法の家があったり、構造建築事業で世界的な権威を持つ現代魔法の家があったりと、百家のルーツに明確な定義は無いようです。また百家にも本流と支流の分類があり、数字を与えられているのは本流のみのようです。この分類も十師族選定と同様に「国家への影響力/貢献度」が評価された結果だと考えられます。

 優等生において、エクストラの剥奪された数字の回復に師族会議へ意見を出していた描写があったことから、師族会議が百家への数字の授与を行っていると考えられます。

 以上が、大まかな数字付きナンバーズの構成です。日本人の強力な魔法師は、大半がこの分類に属します。

調整体魔法師

 魔法は血筋に強く結びつく能力であるために、遺伝子が魔法の適性を決めると考えられています。そのため強力な魔法師を意図的に”生産”するには”勾配”が必要不可欠になり、大戦によるモラルの低下も相まって、十師族を代表とする研究所出身の魔法師には大なり小なり様々な遺伝子操作が行われてきました。

 それにより、遺伝子と魔法技能の関係性が裏付けられ、遺伝子同士の相性から生まれてくる子供が保有する魔法技能のパターン予測まで可能になっています。さすがに遺伝子の相性予測は常用されているわけではないものの、魔法技能の高い者同士の婚姻は推奨されています。

 また、遺伝子操作を行う研究は随所で受け継がれており、現代2095年時点でも兵器として生産される魔法師は全面的に遺伝子操作を受けています。そんな遺伝子操作を行われて産み出された魔法師を”調整体魔法師”と呼びます。

 調整体は、遺伝子を”全面的に”操作されているためか「生命的に不安定」とされており、蠟燭の火が消えるように突然死する場合があるようです。これは自分の魔法に対する耐性が低いためと考えられており、”魔法演算領域のオーバーヒート過剰行使”などで限界以上の魔法技能を行使すれば即死は免れません。

 例えば、〔追憶編〕では桜井穂波が艦砲の防御に限界以上の規模・強度・数を割いたため、魔法演算領域のオーバーヒートを発症し死亡しました。

 〔来訪者編〕の最後に登場した桜井水波は、調整体の遺伝子を更に調整した「第二世代」のため安定性は向上しているようですが、それでも”不安定さ”は拭えないようです。

魔法師の社会的立ち位置

 既に何度か記述していますが、現状で魔法師は一般的な社会に居場所を作れておらず、軍事/戦力的な立場しか確立できていません。これは魔法が国家の所有欲を煽る軍事的価値があることに起因し、実際に「核戦争を防止する」為に創設された国際魔法協会の働きにより第三次世界大戦では核兵器の使用は一度もされなかったようですし、核兵器に代わる戦略級魔法は1人の生命維持だけで核兵器に相当する戦力的コスパの良さがあります。

 そのため政府は魔法の軍事利用を推進したいと考えており、実際に魔法科高校の進学先として魔法大学の次に防衛大学が多くなっています。ですがその影響で、一般市民は魔法師を暴力装置として恐れる気持ちが強く、少数であることも相まって社会的な排斥対象に上がりやすくなっています。〔入学編〕で出てきた魔法師排斥運動が行われている理由はそこにあります。

 5巻の〔夏休み編〕、8巻の〔追憶編〕では一般市民の魔法師に対する偏見を少し描いており、「見えない武器を保有する怪物」とする認識や「魔法師は兵器として作られた”道具”」とする認識があります。それにより一般市民と魔法師の溝は深まっており、「政府の人体実験によって生まれた人造人間」、「魔法師は決められた場所でなければ魔法は使えないように造られている」という噂も広まっているようです。そもそも魔法発動補助具CADと携帯機器の違いも分からないようですし、一般人の魔法師への理解は相当低いようです。

 そのため魔法の法律による規制や、魔法師に対する権利の制限強化は世の中で頻繁に議論されています。

魔法工学科

 二年生編に入ってから国立魔法大学付属第一高校で新学科が設立されました。それが”魔法工学科”(通称:魔工科)で、魔法工学/魔法理論分野をより重点的に教育する学科です。

 魔工科のエンブレムは右の「八枚歯のギア」になります。

アニメ魔法科高校の劣等生 来訪者編
episode13「来訪者編XⅢ」より引用

 クラスはE組で、A~D組が一科生、F~H組が二科生になります。編入は2年生進学時の選択制で転科が行われ、試験の合格者が転科を認められます。また、一科生から転科した場合は二科生から一科生の補充が行われます。

 このタイミングで設立した理由はもちろん達也にあります。理論分野で教師よりも優秀であることが分かっていたところに九校戦でエンジニアとして活躍しすぎた結果、二科生(劣等生)としておくことに学校側の体面が悪くなったためです。これは5巻〔夏休み編〕の生徒会選挙前に七草真由美の回想で言及されていましたが、学年の入れ替えとともに設立を行ったようです。元々、真由美世代のエンジニア不足が顕著だったため以前から話には上がっていたのでしょう。

 実際に、魔法工学・理論面の成績が良い新入生の割合が増えているようで、普通なら第四高校(複雑で緻密な魔法の運用を重視している「技術の四高」)に進むであろう生徒が達也の技術力に憧れて第一高校に入学しているようです。なので、達也に憧れた新入生が学校に対して失望するという事態は避けられそうです。


 取り敢えず、アニメ3期が始まる前に知っておくべきことは以上でしょう。他にも何かあれば追記するので、コメントで指摘して頂ければ幸いです。もちろん、間違い等もお願いします。

 最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 誤字脱字等を含む間違い、ご意見等ありましたらコメントでご指摘お願いします。


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