魔法科高校の劣等生において「精霊の眼」は、特異能力とされているため作中登場キャラの中でも2人しか保有していません。そのため作中世界では認知度の少ない能力となっています。
幸いなことに主人公である司波達也が精霊の眼を持っているので、読者側は多くの情報を得ています。
今回はそんな精霊の眼についての解説を行います。達也以外の保有者がアニメ版(一年生編)以降に出てきているので、その辺りはネタバレになります。ですが、ストーリーのネタバレは行いませんので、気軽に見ていってください。
というよりもアニメでは精霊の眼の解説が省かれているので、アニメ勢は解説までを読んでいってください。
精霊の眼〈エレメンタル・サイト〉
精霊の眼が作中でちゃんと描写されたのは九校戦編でした。「精霊を視る眼」というのは精霊の眼を記録した人間が、「元素(物質)を見ることが出来る眼」という性質を聞いて「四大元素(地水火風の精霊)を視る眼」と勘違いしたため発生した誤植とのことです。そのため、精霊(スピリチュアル・ビーイング)等の霊子情報体を視る力ではありません。
認識可能範囲
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精霊の眼とは魔法師が持っている情報体次元への接続能力を拡大したもので、「存在を視る力」とされています。具体的に言えば「情報体次元を直接視認する力」で、情報体次元に記録されているあらゆる情報を視認します。
そして情報体次元には世界で発生した全ての情報が記録されているので、「いつWhen/どこでWhere/何がWho/何をWhat/どうやってHow」に加えて、それら情報の構成要素などありとあらゆる情報を閲覧できます。そのため、この眼から逃れられるのは「存在しないもの」のみとされています。「存在しないもの」とは具体的に言うと、「精神」のような何かに干渉しなければ実在を証明出来ないものです。
そのため、普通の魔法師と精霊の眼を持っている魔法師では以下の点が違います。
- 普通の魔法師の場合
- 情報体次元への接続→魔法を投射した/されたことを知覚した時
- 情報体次元の閲覧内容→知覚した事象改変の大まかな座標や改変内容
- 精霊の眼を持っている場合
- 情報体次元への接続→常時
- 情報体次元の閲覧内容→情報体次元に記録された全ての情報
例えば、精霊の眼を持っていることで非物質である想子で構成された想子情報体を認識できます。それにより、魔法を知覚した場合「事象改変の内容である”魔法式”の詳細を視認する」ことが出来るので、魔法が事象改変を行う前に事象改変内容を知ることが出来ます。
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また、情報体次元は全ての情報が記録されている以上過去の情報も視えるので、過去から現在の情報を基に未来の情報を予測することが出来ます。つまり精霊の眼は、完全に人の認識力から外れた能力なのです。
しかし以上は理論上の話で、現実にはそこまでの認識力はありません。
認識力の差異
なぜ理論上の認識力を発揮できないのか。それは、そもそも人間自体の認識力では「世界の全て」などという膨大な情報は処理しきれないからです。
例えば、非魔法師が物理次元しか認識できず魔法を認識出来ないのは、精神に魔法を認識するだけの情報処理能力が備わっていないからです。それと同じで、例え拡張された認識機能を保有していても認識した情報の処理能力は当人に依存するので、全てを認識することは出来ません。
そのため、同じ精霊の眼を持っている人間が複数居ても、視える世界はそれぞれの適性によって変わります。具体的に言えば、その魔法師の”魔法適正”あるいは”得意魔法”に依存します。
精霊の眼〈エレメンタル・サイト〉の個性
以下からは、作中で精霊の眼を保有している二人のキャラの、精霊の眼の特徴を解説します。片方がアニメに登場していないキャラであり、漫画版でもそのキャラが精霊の眼を保有していると明かされていないので、ネタバレが嫌な方はそのキャラの解説になった際下の項へ飛ばして下さい。直前に警告と飛ばすためのURLは出します。
司波達也の場合
1人目の保有者は言わずもがなの「司波達也」です。
そして、達也の魔法適正は「分解」と「再成」です。魔法の仕組み上、分解は「情報体の構成要素」を、再成は構成要素に加えて「過去の情報体」を認識する必要があります。
そのため達也は先天的に、「情報体の構成要素を視る力」と「最大24時間の情報遡及能力」を備えています。これにより、視認した情報体が「何で構成されているか」、「直近24時間でどのような情報を追加させたか」を知ることが出来ます。
人を視た場合で例えれば、
- 何で構成されているか
- 例:対象の親は誰か
- 直近24時間でどのような情報を追加したか
- 例:直近24時間でどこにいて、何を相手に、何をしていたか
が、分かります。
また、達也は護衛として司波深雪に襲い掛かる災害を優先的に排除する必要がありました。それには、”深雪に直接関係する”情報を意図的に取捨選択し、事前に害を成すであろう情報を認識しなければなりません。
そのため、情報的な近似から因果律を俯瞰することで、直接視認していない情報を取捨選択する能力を後天的に獲得しています。これにより達也は、情報体次元に深雪へ害を成す情報が発生した瞬間、時間と空間を超越してその情報源(人物等)を特定します。
例えば、もしも深雪をロケランで撃ち殺す計画を立てたとしましょう。この段階では深雪に直接関係する情報は発生していないので、達也の眼には引っかかりません。しかし、これを実行に移した瞬間「深雪に害を成す」情報が発生するので達也の眼に補足されます。また実行犯だけでなく計画犯も、「深雪に害を成す計画を決行した」という情報を発生させたので、実行犯と同様に捕捉されます。
言ってしまえば”検索エンジン”のようなもので、達也の眼は「司波深雪に関連する情報」に絞っているからこそ千里眼のような能力を発揮できます。それこそ達也自身が攻撃された場合では、優先度が高くないので実行犯が分かっても計画犯までは特定できません。
また、一度でも直接視認すれば構成要素などの個人情報を取得できるので、それで情報体次元に検索をかけることで座標情報等も取得できます。つまり、一度視認した対象は世界のどこにいようとも補足することが出来ます。
ですが個人(構成要素)情報だけでは情報量(検索ワード?)が足りないため対象を絞り切れず、上記を行うには70%ほどの演算力が必要になります。そうなると、常時50%を深雪に割いている達也は自由に行うことはできません。
まとめると、達也の精霊の眼は
- 構成要素の情報取得
- 情報体の時間遡及(24時間以内)
- 情報的な遠近に基づいた因果律に連なる情報の視認
の特徴があることが分かりました。
以下からはネタバレになります。なので、それが嫌な方は次の項「保有候補者」に飛んでください。また「保有候補者」の考察もアニメ未登場キャラのネタバレになるので、ここでブラウザをバックしてください。
〔見せられないよ〕の場合
二人目の保有者は「九島光宣」です。
光宣の詳細な魔法適正は分かりませんが、得意魔法が「仮装行列」であることは分かっています。そして光宣の精霊の眼もこの魔法に適した視界となっています。
まず「仮装行列」とは対抗魔法(魔法を妨害する魔法)に分類される魔法です。事象改変の内容は大雑把に言うと、自分の情報体をの外見情報をコピペすることで異なる座標に自身の姿を映し出す魔法です。そうすることで本体は座標情報的に存在が隠蔽されます。また、コピーした外見情報を加工することも出来るので、外見を変更することも可能です。
以上の「座標偽装」と「外見偽装」を行う魔法が「仮装行列」になります。そして「仮装行列」は対抗魔法なので作用が「受動的」なものになり、その影響で光宣の眼は「受動的な認識力」が発達しています。
「受動的な認識力」というのは達也とは対極で、意識的な情報の取捨選択は出来ませんが、無意識的な情報取得能力が高くなっています。簡単に言ってしまえば達也は「検索エンジン」なので意識的に検索しなければ情報を追えませんが、光宣は「おすすめニュースサイト」なので勝手に情報が入ってきます。
入ってくる情報は「情報的な遠近」もそうですが「事象の規模」にも依存すると考えられ、大きいニュースならば自分との情報的な遠近に関わらず知覚します。例えば、どこか遠方で誰かが戦略級魔法を打ち合っていた場合、光宣にとってそれが一切関係の無く事前情報無しの衝突であったとしても現場を知覚します。感知した情報を意識的に、深く分析することは出来ませんが、不意の情報を取得する能力は達也以上です。
まとめると、光宣は「無差別の受動的な情報取得能力」が優れていることになります。もちろん基本的な「情報体を視認する力」は同じですが、それでもここまで個性が出てしまうのです。
以上2人が作中にて精霊の眼を保有していることが確定しているキャラです。次に、精霊の眼を保有している可能性のある「保有候補者」を紹介します。ここから下は【魔法科高校の劣等生】の本編とスピンオフ作品を読んだことあることを前提で話しますので、そこまでのネタバレが嫌な方はブラウザをバックしてください。
精霊の眼〈エレメンタル・サイト〉保有候補者
作中で精霊の眼を保有していると考えられる候補者は「十文字アリサ」です。
…もし知らない方がいても気にしないで下さい。なぜなら十文字アリサは、本編完結後に刊行したスピンオフ【新・魔法科高校の劣等生「キグナスの乙女たち」】における主人公ですから。アニメ勢は特に知らないキャラクターでしょう。「キグナスの乙女たち」を知りたい方は、佐藤勤先生のWebサイトで「キグナスの乙女たち・前日譚」が掲載されているので、そちらで読んでみてください。一応漫画版も既に発売されています。
閑話休題。十文字アリサの簡単な紹介をすると、十師族十文字家当主である十文字克樹の妾の子に当ります。そのため、第一高校OBである十文字先輩の腹違いの妹になります。中学生になってやっと認知されたアリサは、十文字家の魔法師の”命に関わる宿命”による死を防止するために十文字家に引き取られました。
新ソビエト連邦から亡命してきた調整体魔法師を母に持つのもあってか、作中最硬の盾である十文字先輩に「素質は自分以上」と言わしめたほどの才能を持っています。これは、碌に魔法の教育を受けてこなかったアリサが、最初の魔法発動でCADも使わず「防御型ファランクス」を発動させたからです。性格的な理由から攻撃魔法を一切使用できないという欠点はあれど、引き取られてから3年間足らずで十文字家の魔法を使いこなすまでに成長しています。
この急激な成長速度には理由があり、それが「精霊の眼を保有しているため」だと考えられます。通常の魔法訓練ならば魔法発動の結果から反省点を予測し続けなければなりませんが、精霊の眼は魔法を発動せずに事象改変のシュミレートを行えるので、そのあたりの「改善点を洗い出す」という行為をほぼ短縮できます。
そのため、短時間で急成長を遂げたと考えられます。
ではなぜ、十文字アリサが精霊の眼を保有していると考えられるのか。それは、規模こそ達也や光宣に劣りますが、アリサには精霊の眼と類似する能力があるためです。それが以下の点になります。(私は電子版しか持っておらず、画面の大きさによってページ数が変わる為、情報元のページ表記が分かりませんでした。すみません。)
- 魔法に触れたことが無い状態で、離れていた姉妹同然の親友の魔法発動兆候を知覚
- 前日譚〔2〕における遠上茉莉花と十文字克人の衝突時より
- 1の時、知覚した対象の座標情報だけでなく対象後方からの視覚的情報を取得
- 同上
- 克人が発動しようとした攻撃型ファランクスの事象改変内容を発動前に知覚
- 同上
- 3の直後、CADを使わずに防御型ファランクスを遠隔発動
- 同上
- 唐橘役の射撃訓練を一目視ただけで、五感外知覚「マルチ・スコープ」の使用を知覚
- 【キグナスの乙女たち】第3巻〔7〕「試練を終えて、次なる戦いへ」より
- 一条家の魔法「生体液震」(秘匿/固有魔法ではないが珍しい魔法)の詳細を初見一目視ただけで判別
- 【キグナスの乙女たち】第3巻〔8〕「激突する乙女たち」より
1~4は魔法に触れた経験が無い状態なので先天的な異能であることが伺えます。そして、情報を取得した対象が「生まれてから姉妹同然に育てられてきた無二の親友」と、自身と情報的に近いことが伺えます。
また、3においてアリサは攻撃型ファランクスを「押し固められた力」と表現していましたが、障壁魔法を知らないため主観的な認識がそうなったのでしょう。直後に防御型ファランクスを行使できたのも、攻撃型とはいえファランクスを精霊の眼で視ることにより、魔法式を理解したからこそだと考えられます。
5は、達也もまた七草真由美のマルチ・スコープを見破っていたので、精霊の眼ならばマルチ・スコープを見破れると考えました。精霊の眼ならば、対象に眼を合わせるだけで魔法的な事象を認識できるので、魔法ではなく”超能力”に分類されるマルチ・スコープも認識できるでしょう。マルチスコープを使用した人物には「複数対象を複座視点で視ている」という情報が加えられるはずですから。
6に至っては”視た”だけで対象の魔法を的中しています。「生体液震」は秘術という訳ではありませんが「人体への直接干渉」という第一研の魔法で、十師族でも認知度の高い魔法ではないので普通に見ただけで分かる魔法ではないようです。それでもただ視ただけで的中させているので、魔法を直接視ている分かります。
以上から、十文字アリサは精霊の眼を保有していると考えられます。
とはいっても、まだ本格的に魔法に触れてから3年も経っておらず、精霊の眼の情報量に脳の処理能力が追い付いていないということは確かです。そのため、達也や光宣の視界とは比べられないほどに狭いでしょう。
そもそもアリサは自身の知覚能力が精霊の眼だと気付いていない、あるいは精霊の眼の存在を知らない可能性が大きいです。まあ、これは十文字家が「首都の最終防壁」であり、蔵書の魔法文献が戦闘に依っているからでしょう。
候補者の個性予想
最後に、簡単にですが十文字アリサの眼における個性を考えます。
まず達也や光宣と同じく、魔法適正/得意魔法が精霊の眼で処理できる情報の特徴に影響すると考えます。アリサは障壁魔法を得意としている、”首都の最終防壁”である十文字家の魔法師です。
まず「防壁」である以上、前提として護る対象は常に認識していなければならないでしょう。魔法の標準は物理的な距離に依存しないので、対象の認識が出来ていればどこからでも守護することが可能ですから。それを考えると、1人のキャラが浮かび上がります。
それが「十山つかさ」です。十山つかさ、というよりも師補十八家の十山家は”中央政府の最終防壁”とされており、要人の守護をするための障壁魔法を用います。
その方法が「魔法的な印を事前に守護対象へ付与しておくことで、情報体次元の座標を捕捉する」というものです魔法師は魔法発動時に情報体次元イデアに接続するので、上記の方法により魔法発動時は物理的な距離に関係なく対象の遠隔守護を可能にしています。
そして十文字アリサの最初の魔法行使が、上記の方法と同様の形式でした。精霊の眼で親友である茉莉花の座標情報を取得し、茉莉花を守護するように防御型ファランクスを展開しているのです。これは、達也が深雪を守護するために視界の50%を向けているのと同じでしょう。
このことから、「事前に設定した対象の情報を優先的に取得する」という個性があると考えられます。「達也も出来る」と聞くと「個性とは言えないのではないか」と感じますが、達也のそれは後天的に取得した技術なので同列には語れないでしょう。
またアリサは十山家ではなく十文字家なので、守護対象は”領域(首都)”になります。そのため、仮想領域を構築する為の「空間把握」もありそうです。上と同じく茉莉花を守護する際、後方から対象を視界に収めるように視えていたのは、この個性によるものかもしれません。
これが人1人分しか視界に入れられないならば個性というには弱いですが、視界を自身の魔法と同等以上の領域に拡大出来ると考えれば、個性として成り立つでしょう。達也も光宣も、領域より個体に対する標準を得意としていますから。
そして、「個体への標準」ではなく「領域への標準」なので、アリサの眼は個体ではなく領域を指定して情報を取得すると考えられます。そのため、標準は物理次元に依存するかもしれませんが、指定した領域内に存在する複数の情報体を一纏めにして読み取れるかもしれません。
例えば「視界内の複数の魔法を読み取る場合」を考えます。達也と光宣は情報体を「個体」として読み取る為、魔法の数だけ読み取り回数が増えます。しかしアリサは、視界内の情報を「1つの情報体」と定義出来るので、視界内ならば複数の魔法を一度で読み取れるということです。
言ってしまえば「領域への焦点合わせ」でしょうか。
以上から十文字アリサには
- 設定した対象への常時的情報取得
- 領域への情報的焦点合わせ
の二つの特徴があると考えました。
精霊の眼に関する簡単な解説と保有者の個性の解説/考察は以上で終わりです。
アリサの考察には予想以上に量を取られましたので、分かり難くなっていないかが不安です。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
間違いやご意見などの指摘があれば、コメントをお願いします。
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