魔法科アニメ補完知識「魔法師の社会的地位」

ストーリー解説/考察

 【魔法科高校の劣等生】のアニメ版は、解説をあまり挟まないが故の戦闘の”スピード感”と適度に無双を行うが故の”爽快感”があります。また魔法陣の美しさ等も相まって、ただ流し観するだけでも見ごたえがあります。

 ですがその反面、解説が大幅に省かれているが故の”背景描写の不足”とそれ故の”物語の主題が分かりにくい”という欠点もあります。これは視聴者の理解力不足ではありませんし、製作陣がアニメを面白くするために行った情報の取捨選択なので、仕方ないところもあります。

 考えさせ過ぎずに、面白く魅せるための努力の結果です。また、原作の文庫版の内容でも物語の主題に関係深い所を、さも小ネタのようにぶち込んでくるので先が公開されない限り分かりずらづらいものとなっています。少なくとも私は、文庫版が終盤に入ってから序盤を振り返らなければ、物語の主題は分からなかったです。

 ですが、やはり”物語の主題”もそれに沿った主人公「司波達也の目的」も、不透明なまま視聴されているのは魔法科ファンとしては少し悲しい。もちろん、それを知らなくても面白いと思いますが、知っていた方がもっと面白いはずです。

 なので今回は、”物語の主題”に沿って各編の内容の意味を解説していきます。第3期〔ダブルセブン編〕以降のネタバレはありませんので、アニメ勢の方は是非読んでいってください。

 最後まで読んでいただければ幸いです。


魔法科の主題

 まず、【魔法科高校の劣等生】における”物語の主題”を先に明かしておくと、「魔法師の人権獲得」になります。正確には「世間一般の民間人と同程度の”魔法師の人権”を獲得する」といったところでしょうか。つまりこのアニメは「人権問題を解決するために、”制限を受ける”という逆風の中で主人公が足掻く」お話なのです。あまりぱっとしないですよね。今までのアニメを観ていて、そう思った人が居れば凄いです。読んできた物語の数が違う。

 まず”魔法師の人権問題”というところから解説します。

魔法師の人権問題

 魔法師の人権問題とは、簡単に言えば「基本的人権が制限されている」ことです。魔法師には、明かされているだけでも”就職先の制限”や”出国制限”といったように、実質的な法律も含めて様々な制限を課せられており、社会的に不利な立場を強要されています。裁判沙汰になれば「魔法師だから」という理由で不条理な判決を言い渡されることもあります。

 もちろんそれに対し「発言する自由」はあるので、民意を味方に付ければ合法・非合法に関わらず制限を解消出来ます。しかし、「それを行っても魔法師の立場が悪化するだけ」といった状況となっています。それも簡単で「民意を味方に付けれない」からです。

 これは魔法師が認知された時期が悪かったため発生したことだと思いますが、魔法師は世間一般に属する大多数の非魔法師(一般人)から避けれらています。これは、魔法が世界に認知されて数十年後に第三次世界大戦が発生し、各国家の政府は魔法の軍事利用を推し進めて「魔法師を生産」してきた背景によるものだと思われます。それによって、一般市民から端的に言えば「戦争用人造人間」として認識されて、避けられているのです。

 そのため、魔法師は世間の大多数から排斥対象となっており、味方を得られない状態となっています。それならば「社会で平和的に活躍している”同じ人間”だ」と示せばいいのですが、魔法は長年戦争に使われていた”属人的な技術体系”の為、魔法の使えない人間には理解が困難で、理解できない一般人からは恐れが抜けずに結局は受け入れられない状態になっています。

 そうして魔法師は魔法を活用できる軍/警察へと進み、世間は更に恐れを増幅させる。というように、溝を深める負のサイクルが確立されています。こうなると、魔法師が世間に受け入れられる単純な解決策は「魔法を捨てる」ことになります。ですが、人は自分の才能を簡単には捨てられません。それが希少な物ならばアイデンティティにも関わってくるはずなので、なおさら手放せない物になってきます。

 そして希少な才能は金を生み、魔法師と一般人に所得の差が生まれ、更に溝が深まります。ここまでくると社会的”格差”の問題になるので、世間からは恐れではなく”嫉妬”を向けられ、攻撃の対象にもされるようになります。それが〔入学編〕でも出てきた「反魔法師主義」に基づいたデモ活動です。この辺りはアニメ〔入学編〕でも簡単に解説されていたでしょう。そこは物語を通して重要になるので、出来るならちゃんと見返して欲しいです。

 以上の「戦争用人造人間への恐怖」、「所得の差による嫉妬」、「住み分け状態による世間との相互不理解」から魔法師があらゆる意味で制限を受けていることを解説しました。ですが、主人公の「司波達也」はさらに権利を制限された立場にあります。それは立場的なものであり能力的なものでもあります。

司波達也に課せられた制限

 それは主に「四葉家の人間である」ために発生した制限になります。

 まず立場的な制限で言えば「身分情報の制限」があるでしょう。”四葉家当主の直系筋”という魔法師コミュニティでは高い地位になるであろう情報の開示を禁止されていますし、「トーラス・シルバー」、「戦略級魔法師」としての身分も重要な秘匿事項となっています。また守護者ガーディアンなので、常に護衛対象深雪を優先させなければならず、使用人以下の立場に押しやられているので「言動を制限」されています。

 能力的な制限で言えば、出自の隠匿に付属して「生来保有している魔法の使用制限」があります。これは四葉家の特異技能である「フラッシュキャスト」も含まれていますね。

 深雪の守護者ガーディアンであることに苦は無く、深雪が次期当主筆頭候補である以上四葉家は達也をずっと囲っていられますが、達也を冷遇し続けて目的を果たせない立場を強制され続ければ深雪ともども四葉家を出て行ってしまいます。四葉家からすれば色々と出て行って欲しくない理由があるので、ご当主様の手腕が試されます()。

 また上には「軍人である」という理由からくる制限も合わさっています。「未成年の軍への徴用」にあたりますから当然ですね。また、戦略級魔法師であるため軍からの監視も常時行われています。現状〔来訪者編〕時点の独立魔装大隊は達也にとって心強い味方であり、関係が良好なので軍からの制限などにに不満を覚えていませんが、仲が悪くなったらどうなることか。

 以上のように、能力も言動も制限されながら達也自身の目的の為に足掻くのが【魔法科高校の劣等生】における物語です。

 では散々出てきた「達也の目的」とは何でしょうか。これは〔入学編〕で「目的のための手段」が、〔横浜騒乱編〕で「目的」が言及されています。

達也の”目的”

 達也が自身に求めた”命題”とも言えるでしょう。それが「重力制御魔法式熱核融合炉を実用化することによる魔法師の社会的立場の向上」です。「魔法師の社会的立場の向上」が目的で、「重力制御魔法式熱核融合炉の実用化」がそのための手段に当ります。

 ”重力制御魔法式熱核融合炉(通称:魔法恒星炉)”は、〔九校戦編〕で達也が実用化した”汎用型飛行魔法”と並べられる「加重系魔法の三大難問」の内一つです。内容は省きますが、魔法恒星炉を実用化するために、部品として飛行魔法(常駐型重力制御魔法)を実用化しました。

 なぜ魔法恒星炉を実用化すれば魔法師の立場向上に繋がるのか。それは「深刻なエネルギー不足による第三次世界大戦の発生」に起因します。

 第三次世界大戦”世界群発戦争”は、30年代から発生した急激な寒冷化による世界的に深刻なエネルギー不足が発端です。その対策として太陽光発電によるエネルギー供給を実用化されましたが、当然ながら再生可能エネルギーによる供給は節約(貧しさ)を要します。

 そこで莫大なエネルギーを供給できる核融合炉を実用化すれば、世界のエネルギー需要は大きく融合炉へ傾きます。また「格融合炉が魔法によって稼働する物」ならば、世界的なエネルギー供給シェアを魔法師が獲得することが出来ることにもなります。

 エネルギー電力は世間にとっても絶対不変の需要があるので、もしも核融合炉が「魔法で動かせるもの」ならば魔法は世間にとって身近な存在(安定の供給源)となり、非魔法師の支持も得られるようになります。

 もちろん社会は新しい物を出来るだけ拒絶するように出来ているので、魔法恒星炉が完成したとしても簡単に目的は達成できません。しかし”現状維持”を行う社会に対し、”供給”を行う”企業”は常に”新しい利益”を求めています。なので、達也が後ろ盾となる企業を味方に付ければ実現性は大きく向上することになるでしょう。

 以上が”達也の目的”でした。前述したように、実現には障害があり、それらが達也の道を阻んできます。「そんな障害にどう足搔き、どう対処し進んでいくか」が【魔法科高校の劣等生】の”物語の主題”になります。

物語の解説

 以下からは、「魔法師の社会的地位」という点から観た現時点、〔入学編〕~〔来訪者編〕まで物語の内容を解説します。

入学編

 入学編では、”魔法科高校内の差別”と”差別を利用したテロリスト”が挙げられていました。

 魔法大学付属第一高校では「魔法技能の成績」により一科生と二科生に分けています。これは魔法師が少数であることに起因する”指導教員の不足”があるためで、有望な一科生のみ教員による指導を受ける権利を持っています。これが”差別意識”に繋がります。一科生は自身らを花弁ブルーム、二科生を雑草ウィードと例えて見下し、二科生は指導教員の居ない現状を「見放された証拠」と見做し諦観に耽ります。校章の有無という目に見える違いも相まって、その認識を加速させました。

 さらに魔法師が閉鎖的コミュニティであることに加え、高校生という”社会から切り離されている状態”であるが故に、校内では「自身の負っている不満を同じ魔法科高校生にぶつけてしまう」というある種内部分裂のような状況が蔓延っていました。それが優等生ブルーム劣等生ウィードの対立です。学校側も競争意識を煽る為に、この対立を実質的にほぼ全て黙認していました。

 そして、そこを隙と考えたのが反魔法国際政治団体”ブランシュ”で、下部組織の”エガリテ”が魔法大学に貯蔵されている秘密魔法文献を盗もうとしたテロリストです。上層部は「機密情報奪取による自国の強化と、相対的な日本の弱体化」を目的とし、手足である構成員は「差別(所得格差)を無くす」という大義名分の元、テロ行為を行いました。

 そして、内容は違えど「差別撤廃」を目的としているからこそ「魔法師排斥運動に魔法師の卵である魔法科高校生が参加する」という、「自分で自分の才能魔法師が魔法を否定する」ような一見矛盾した状況が発生します。なので、入学編は「魔法師間で発生している差別意識と、そこに着き込む敵国」という構図でした。

 これを解決するには敵を打倒するだけではいけません。それでは一時凌ぎにしかならず、”差別意識”を解決しない限り根本的な問題隙は残ったままだからです。そのため、入学編では「優等生ブルーム劣等生ウィードの差別意識を解消するきっかけを作る」という物語となっています。そして、魔法科高校の差別意識解消できっかけとなったのが達也の存在です。

 なぜ達也なのか。それは〔夏休み編〕で七草先輩が言及していることですが、達也は魔法師的に視ると「現行の評価制度に喧嘩を売っている」ような存在だからです。

 魔法が発見されてから世界大戦を挟みながら一世紀近く経った魔法学は、モラルを無視した研究成果により学問全体的に見て異常な速度で成長しています。そのため魔法技能の評価基準も合理性のある指標が採用されており、それにより日本は優秀な魔法師を多く輩出することを可能にしています。

 ですが達也は、魔法師として重要な指標である三つの評価が「魔法科高校全体から視て”下の上”以下」、つまり赤点常連者レベルなのです。そんな成績ながら、優等生では成し得ない「規格外の成果」を上げる異常者です。

 これは

  • 「魔法技能の成長が早い段階で頭打ちになる」→「早い段階で高等技術習得に動ける」
  • 「魔法技能の規模が小さい」→「魔法で制御すべき範囲が少ない」

といったことから、一早く技術習得に動けていたからこその成果です。それにより、現状の評価に不満を漏らす劣等生ウィードは「”魔法技能の評価”だけが自分たちの全て価値ではない」と気付くきっかけになります。もちろん優等生ブルームもです。

 また達也は、互いに対して目を向ける魔法科高校生達とは違い、「魔法師と非魔法師の関係性」という外側の問題に目を向けています。入学編で既に、達也は「重力制御魔法式熱核融合炉の実現」を目標としていることを明かしていますね。魔法科高校に入学した理由も「魔法大学卒業生に与えられる秘蔵文献の閲覧権」ですし、学校側からの評価は「単位が取れればどうでもいい」という心境です。

 つまり、優等生と劣等生の差別意識に冷や水を掛けて「それが下らない行為だ」と客観視させるには持ってこいの人材なのです。そのため、思想的にも「魔法師間で発生する差別意識」を解消するために最適な人材となっていました。

 そうして、魔法師間で発生する差別が決定的な溝に繋がる前に解消する道が作られ、将来的な魔法師の内部分裂を防ぎました。きっかけなので差別意識はまだ残るものの、高校という「たった3年で構成員が全員入れ替わる」場所なので、時間と共に解消されていきます。

九校戦編

 〔入学編〕で「魔法師の価値が魔法技能の評価だけではない」ことを示しましたが、じゃあ実際に「他にはどんな価値があるのか」を示しているのが〔九校戦編〕になります。

 九校戦は学内の成績優秀な生徒を選抜し魔法競技で競う、魔法科高校対抗の競技大会です。スポーツ系魔法競技のなかでも魔法技能の比重に偏った非接触型の競技が選ばれるているので、実質的に魔法技能のトップランカーが選手に選ばれることになります。第一高校は魔法科高校の中で最も「高レベル魔法師を輩出する数」が多いので、その分成績とともにプライドも高く、差別意識も高くなっていました。それにより、魔法技能の評価があまり関係のない「技術スタッフ」も一科生のみを採用するという悪癖が出ています。

 技術スタッフとは魔法演算補助具CADの調整要員で、「エンジニア」とも呼称されます。九校戦ではCADの調整も生徒が行うので、選手とは別にエンジニアも選抜されます。CADの調整は魔法の調整に近いので魔法知覚がある人間でなければ到底出来ませんが、それさえクリアしているならば誰でもできる”技術”になります。(CADを始めとする魔法機器を取り扱う技師を”魔法工技師”(通称:魔工師)と呼びます。)

 つまり、二科生であっても魔工師になることが出来るので、例え魔法技能の評価が低くてもエンジニアになることが出来ます。その典型例が達也です。達也は”魔法知覚の極限”とも言える知覚能力を保有しているのもありますが、高い知能と情報演算処理能力によって世界的に有名な天才魔工師「トーラス・シルバー」として名を馳せています。

 そのため、「魔法技能以外の価値」を示すために達也はエンジニアとして活躍しました。作中では、第一高校の(特に三年生の)技術者不足が顕著だったため達也に白羽の矢が立ちましたが、冒頭の”加重系三大難問”である飛行魔法の実現と合わさって”魔工師の凄さ”が分かりやすく描写されています。

 また、開会式で九島烈が挙げていた「工夫」、言い換えれば「魔法運用能力」も重要な価値として焦点を中てられていました。

 魔法師の価値は「魔法技能の評価」ではなく、「魔法をどう運用し問題に対処できたか」になります。なぜなら”魔法を使って対処しなければならない場面”は、非常事態に偏っているからです。法令で非常時に限り魔法による対処を許可されていますが、逆に言えば非常時以外は魔法の使用を制限されているのです。だからこそ非常事態における対処能力、「工夫」が重要になってきます。

 達也の場合、エンジニアとして担当した選手のCADを調整するだけでなく、選手の適性と競技の特徴に合わせた魔法の選択/作成をすることで、作戦能力とともに魔法運用能力を煌めかせています。まあ、競技に選手として参加した時は誰にも気づかれない範囲で反則技を使っていましたが、そこは魅せ方の問題とも言えるでしょう。イカサマも悟られない技量があればOKということですね(再成は相手の反則に依るものなので除外)。

 九校戦編で登場する競技は軍でも訓練として採用されている物もあり、魔法運用能力を測るのに持ってこいの場となっています。だからこそ、九校戦編で活躍した生徒は軍で活躍する人間も比較的多くなります。

 そのため、九校戦はスポーツという「魔法を平和的に利用する場」でありながら、将来の魔法師軍人を見定める場にもなっています。これは魔法も武道と同じく平和的に使うかは使い方次第であり、ただの”手段”であることを示しているのでしょう。

 だからこそ、魔法の魅せ方を誤れば大きなバッシングを受けることにもなります。

 因みに、”無頭竜ノーヘッド・ドラゴン“はあくまで九校戦編で賭け事をしていただけなので、ぶっちゃけ物語的には重要な存在ではないと考えています。野球賭博と同じような扱いです。そういう意味では「魔法競技もスポーツとして確立できる」ことを示しているのかもしれません。

横浜騒乱編

 〔九校戦編〕で魔法が手段であり、使い方次第で様々な結果を掴めることを示されました。そして「魔法も平和的に利用することが出来る」ことの一例として、スポーツという形にできることも示されました。ですがスポーツはあくまで娯楽であり、娯楽は社会に必須の分野ではありません。ぶっちゃけ娯楽という物は無くても社会は回るので、娯楽だけでは世間の側から見てくれるのを待たなければなりません。

 そのため、魔法が非軍事的な分野で社会的に必要不可欠な存在になるには、達也の構想である魔法恒星炉のように「世間の生活様式に組み込まれるような技術」でなければなりません。それも魔法が”希少な技能”であることを考えればコスパが悪いので、機械代替ができない唯一無二の技術であることが求められます。

 〔横浜騒乱編〕は「高校生が魔法学の研究成果を発表する場」である”全国高校生魔法学論文コンペティション”を舞台としています。そのため、(達也の考える仕組みとは違いますが)達也の目指している重力制御魔法式熱核融合炉の技術的可能性が取り上げられています。

 ですが皮肉なことに、非軍事的な魔法技術を示していた場所で「魔法が重要な軍事力である」ことを突きつけられます。

 大亜連合軍が日本魔法協会支部を目標に進軍し、同時に将来有望な魔法師である魔法科高校生の誘拐を画策しました。それは十師族を中心とした魔法科高校生や、軍の魔法師部隊である独立魔装大隊が蹴散らし、達也の戦略級魔法「質量爆散マテリアル・バースト」で大亜連合は侵攻軍と朝鮮半島南端の軍港を消し飛ばされました。

 ですがその戦果は魔法が有用な兵器であることを示しています。なぜなら、日本の軍事力は中国を前身とする大亜連合に規模/数的な面で圧倒的に劣っているためです。軍事的経済規模から頭数が不足し、圧倒的劣勢でありながら大勝してしまったという事実が「魔法が国家規模に左右されない兵器」であると証明しています。また魔法科高校生も活躍してしまったことから、「魔法師は子供であっても軍事力足り得る存在である」とも社会に示したのです。

 さらに戦略級魔法が初めて公の戦争に投入されたこともあり、世界中で「魔法は質量兵器に勝る兵器である」と認識されました。同時に、戦略級魔法の投入に対して「前例があるから自分たちもガンガン使ってしまおう」と、政府の抱える戦略級魔法使用への心理的なハードルを下げる結果にもなっています。つまり、これからの戦争では大規模魔法が積極的に投入されることになってしまうかもしれないのです。

 結局〔横浜騒乱編〕では、「魔法の最大の使い道は暴力」という認識を世界中で再確認させられるだけとなり、世間は魔法師への反感(恐怖)を増幅させ、魔法師はさらなる逆風にさらされることとなります。

来訪者編

 来訪者編の騒動は、全て横浜騒乱編で使用された「質量爆散マテリアル・バースト」に起因しています。

 USNAが「質量爆散マテリアル・バースト」への対抗手段を開発しようとした結果、その研究により発生した魔法的精神寄生生物「パラサイト」が米軍に寄生しパラサイト化しました。パラサイトは種の保全のために魔法因子保有者を狙い、USNAでは吸血鬼騒ぎによる魔女狩りの予兆が発生しました。それでも「質量爆散マテリアル・バースト」の使用者(達也)への対策を終わらせることは出来ないので、自国USNA最強の魔法師である「アンジー・シリウス」を日本へ派遣し、確保あるいは抹殺が考案されました。

 つまり来訪者編では以下のような点を明示しました。

  1. 「世界最強の魔法師部隊”スターズ”」が登場し、国家公認戦略級魔法師”アンジー・シリウス”が敵として登場することで「魔法が軍事力であるのは当たり前」という事実を再確認
  2. 派遣されてきたリーナが未成年なことから「魔法師に年齢的な保障は期待できない」
  3. 「魔法兵器に対抗するならば魔法兵器」という思考が国家的な共通認識が出来た
  4. 魔法を発祥とした怪物パラサイトを登場させることで世間一般に「魔法師=怪物予備軍」と認識された
  5. 魔法師に対する当たりは世界中で変わらない

 また、達也の捕縛/排除の為に送られてきたことから「達也に対する制限が増えた」ことも示されました。

 以上により、世間は「魔法師に関わると暴力的なことに巻き込まれる」という恐怖を抱くことになり、魔法師に対する反感が無視できない物となっていきます。代表例がUSNAの魔女狩りでしょう。世間は、金銭面だけでなく安全を脅かす脅威として魔法師を積極的に排除しようと考えます。

 幸い、スターズを退けパラサイトの駆除も完了したので平穏は取り戻しましたが、あくまでこれは社会の裏側で起こった出来事です。社会に溜まった魔法師への不満は無視できないレベルに膨れ上がった以上、達也はこれから社会と向き合うことを強要されていきます。


 以上が【魔法科高校の劣等生】における〔入学編〕~〔来訪者編〕アニメ版までの、「魔法師の社会的地位」に関する解説となりました。〔追憶編〕は「深雪と達也の過去」に主眼を置いており、「魔法師の社会的地位」というよりも「四葉内での達也の立場」を示したものだと考えているので、抜かしています。

 また来訪者編の時期に魔法の軍事的需要が高くなったことを考えれば、来訪者編の直後劇場版の時期に「隕石爆弾ミーティアライト・フォール」の研究が活発化し、その対処としてリーナが派遣されヘビィ・メタルバーストが使用されたことに違和感はありません。

 自己解釈が多分に含まれていると思うので、間違っていると感じたらご指摘お願いします。


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