【続・魔法科高校の劣等生 メイジアン・カンパニー】は、前作の【魔法科高校の劣等生】にて挙げられていた「魔法資質保有者の人権問題」についての具体的な対策活動の話です。
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直前の第6巻では先史魔法文明の一つとされるシャンバラの遺産探索を行っていました。以下の記事でまとめているので、軽い振り返りがてら読んで頂ければ幸いです。
そして、第7巻では発見したシャンバラの遺産への対応に追われていました。
今回も、第7巻について章ごとにまとめ、解説や考察を行っていきます。また、第7巻の全面的なネタバレに当たるのでご注意ください。
最後までお付き合いいただければ幸いです。
※…振り返りが必要無い方は新魔法紹介まで飛んでください
章ごとのまとめ
第7巻は以下の章で構成されています。
それぞれの章の出来事を大まかにまとめ、それらについての解説を簡単にしています。また、個人的に抱いた感想などもちょこちょこと載せています。
呼び出し
第1章では、前巻で発生した事象に対する対策のための各陣営の呼び出しが描写されていました。発生した出来事は大まかに以下となっています。
- 2100/8/26…四葉家による司波達也の呼び出し
- 発見した遺産関連での方針確認
- 司波達也(抑止力)の不在を懸念し東道青葉が出国禁止令を発令(九島光宣の動員も禁止)
- 達也側はシャンバラの危険性から早期の積極的な対応を模索
→指名手配犯の存在をUSNAに警告し、渡米の大義名分を外から得る作戦へ
- 言語能力喪失魔法「バベルの塔の神罰」に関する情報追加
- 設定された名称の出典がヨーロッパ系も、魔法の構成はアジア系
→シャンバラの遺産とはルーツが違う可能性 - 環境的要因(氷河期)以外にも文明を滅ぼす要因(シャンバラ視点の外敵)が浮上
- 設定された名称の出典がヨーロッパ系も、魔法の構成はアジア系
- 発見した遺産関連での方針確認
- 同日?…リーナから指名手配犯帰国の報せを受けたスターズが対策を模索
- バベルの治療法と対処法を模索
- 魔女の捜索
- 同日?…FAIRの作戦会議
- ローラ・シモンはバベルの保有による魔法力半減に懸念
→バベル(魔法演算補助デーモン)の外部端末化を思案
- ローラ・シモンはバベルの保有による魔法力半減に懸念
- 8/31…チベットでのIPU vs 大亜連合の状況
- 第6巻にて始まったチベット暗闘?が本格的な戦争へと発展(IPUが宣戦布告)
→IPU側が第三者的立ち位置の国へ観戦武官および文民監視団の招集要望- 大亜連合の条約無視作戦に対するけん制
- IPUのやりすぎ(勝ちすぎからの暴走)を懸念
- 文民監視団への司波達也招集の要望が日本軍へ
- 風間大佐に達也の説得と観戦武官への参加命令が下る
- 第6巻にて始まったチベット暗闘?が本格的な戦争へと発展(IPUが宣戦布告)
第6巻を読んだ際は「達也の渡米自体は簡単でもいざこざを考慮して強引にはいかないが光宣は先行させる」と考えていましたが、東道の機嫌を損ねて出国を規制される展開は考えていなかったです。また、シャスタ山が舞台になることからUSNAがFAIRに対してアクションを起こすことは考えていましたが、そのきっかけが達也による誘導とは…。達也が唆したことで始まったチベット戦争も予想外に火種が大きくなっていて、作中における”司波達也の影響力”を認識し直すことになりました。
バベルに関する新情報も注目です。今までシャンバラの魔法だと思われていたバベルの出自にまさかの日本の可能性が浮上しました。日本にもシャンバラの遺跡はあるのでありえなくはなかったですが、予想外でした。
また、バベルの占有により魔法力が低下している魔女ですが、まさかの低下の割合が”半減状態”だったとは思いもしませんでした。そんな状態でも日本の魔法師で最高峰の魔法師である”十師族”七草真由美相手に(ほぼ負けとはいえ)痛み分けに持ち込むとは、魔女と対等だと考えられる聖女もそうですがだいぶ強そうですね。認識を改めなければ。
招かれざる客
第2章では、第1章で挙がっていた話題に対するアクションが描写されていました。発生した出来事は大まかに以下となっています。
- スターズ:魔女捜索の進捗
- 偽情報でローラ・シモンを釣る作戦を実行
→「白い石板に別の遺跡がもう一つ示されていた」という情報を流布
- 偽情報でローラ・シモンを釣る作戦を実行
- チベット解放戦争の準備期間
- 大亜連合…IPUとの戦争に司波達也の介入の可能性があることを知る
→”八仙”藍采和が司波達也暗殺任務の引き継ぎ日本へ潜入 - IPU…9/4に宣戦布告
→前日に文民監視団がスリランカ入り - 日本…文民監視団への達也参加のために話し合い
→東道青葉の説得(達也の出国制限解除)が先のため保留
- 大亜連合…IPUとの戦争に司波達也の介入の可能性があることを知る
スターズが偽情報を流してFAIRを釣ろうとしていますが、後まで読んだ後だとまさかのハプニングといった感じですね。達也側は魔女捜索助力の名目で乗り込みたいから早く助け船を送ってほしいところですが、USNA(スターズ)側からすれば先のバベル事件の借り大きすぎるのであまり頼りたくないはずで、こういうことが起こるのも仕方ないでしょう。
チベット解放戦争の準備に付随して大亜連合側の動きも描かれましたが、手が早いですね。司波達也暗殺任務で呂洞賓が処理されたばかりですが、即座に次ぎの八仙を投入できるのは満身創痍に近いとはいえ層の厚さを感じます。
また、司波達也文民監視団参加における説得で東道青葉の説得が必要になりましたが、どんな風に説得すれば東道は意見を翻すのでしょうか。渡米のための外圧作戦もそうですが、どの程度の圧力ならば屈するのか、元老院という存在の底が見えていないだけにイメージできませんね。
ちなみに、今回の章で新しく登場した魔法が以下です。
- 占星
虚実反転
第3章では、第2章にてスターズの流した偽情報に振り回される者達の描写がされていました。発生した出来事は大まかに以下となっています。
- FAIR:9月初頭
- 魔法演算補助用デーモンの外部端末化に成功
- スターズの流した噂を偽情報と看破
→バベルにこびりついた残留思念から真実味を得て調査へ
- FEHR:9/7
- スターズの流す偽情報を得る
→聖女の感じた危機感から調査へ
- スターズの流す偽情報を得る
- 四葉家:9/8
- 達也に情報漏洩疑惑浮上
→四葉本家から呼び出し - USNA含め他陣営のシャンバラ遺跡発見の可能性を危険視
- IPUの軍事行動によりポタラ宮のシャンバラ遺跡隠蔽の必要性が高まる
→達也が出国禁止、あるいは光宣の動員禁止の解除へ動く
- 達也に情報漏洩疑惑浮上
スターズが流した偽情報も、IPUの軍事行動も、シャンバラの遺跡を暴かれる危険のある行動ですがどちらも達也が唆した結果です。上手い具合に主人公を追い詰めていますね。身から出た錆なので文句も言えない。
また、ローラ・シモンの有能度合いがどんどん露になっています。現代魔法には無い特殊性と手札の多さから、展開が進む度に能力が更新されているように感じます。
二つの遺跡
第4章では、二つの遺跡に対する各陣営ごとの対処方針が描写されていました。発生した出来事は大まかに以下となっています。
- FAIR:調査から三日後
- 白い石板の残留思念から「解放者」の遺跡を特定
- 遺跡の位置なシャスタ山の北西山麓
- 石板の出土は南西斜面
- アメリカ洪門マフィアとの利害の一致により、遺跡の発掘へ
- 白い石板の残留思念から「解放者」の遺跡を特定
- FEHR:同刻?
- シャスタ山の近郊で現地調査
→出回る情報がスターズの流した偽情報である可能性に気付く - FAIRを警戒し調査は現状維持
- シャスタ山の近郊で現地調査
- 四葉家:9/12
- 東道と達也の面談成立
→(光宣含む)達也の謹慎解除に動く方針で話がまとまる
- 東道と達也の面談成立
- 大亜連合:9/9?…司波達也暗殺計画
- “八仙”藍采和が一条将輝にハニトラ
シャンバラに軍事力が存在する意味や、バベルの起源、シャンバラ大図書館の鍵が紛失していた事実から散々匂わされていましたが、この章の魔女の活躍によって「シャンバラの外敵」が明確化されました。シャンバラ大図書館の管理人は紛失した鍵の行方を知らなかったので、解放者が奪取したのでしょう。白い石板も残留思念から解放者の作った物だと考えられるので、シャンバラ侵攻の為の地図だったのかもしれません。
それにしても、魔女が有能過ぎる…。
また、魔女の株上昇に付随して聖女の株も上昇しているように感じます。作中で精神干渉系魔法の適性がある魔法師は第六感に優れていることが明記されているので、精度の優れている”嫌な予感”の感知能力を聖女が持っていることは不思議ではありませんでしたが、それにしても精度が高すぎる。作中最高峰の精神干渉適正を持つ四葉深夜でさえ嫌な予感を抱いたのは逃げられない状況に至ってからでした。それを考えれば(バベル騒動の時もそうですが)、FAIRが未だ行動に移していないにも関わらず確かな危機感を感じているのは異常です。
そのことから聖女は、こと精神干渉系への適性/素質に限って言えば作中最高であることが読み取れます。元々常時発動型の魅了が備わっていたことから素質が高いことが伺えましたが、四葉家にも並ぶ者はいないかもしれないですね。メイジアン・カンパニーに対していち早くアクションを起こせたのもこの「預言」があったからでしょうか。
ちなみに、私は今までFAIRの逃亡支援者であるアメリカ洪門マフィアを「大亜連合の工作員」だと勘違いしていましたが、この章で初めてマフィアと大亜連合の工作員が別だと知りました。逃亡支援の最初にいきなり大亜連合軍の精鋭である”八仙”が登場したため一緒くたに考えていましたが、あくまで大亜連合とは取引関係というだけのようですね。
急転
第5章では、遺跡調査に関する事態の急展開が描写されていました。発生した出来事は大まかに以下となっています。
- シャスタ山遺跡関連
- 魔女の現地入り
→FEHRが匿名で通報 - 9/13:メイジアン・カンパニー…高千穂からシャスタ山を監視
シャンバラの遺跡は東斜面 - 9/15:魔女が解放者の遺跡を発見
- 魔女の現地入り
- チベット解放戦争:9/13∼14
- 両軍はチベット領内でぶつかり合う
- IPU前線基地の付近に文民監視団および観戦武官のキャンプ
- キャンプへの闇討ち
- 風間大佐が右腕欠損/柳少佐が生存の望み薄の重体
- 独立魔装大隊から司波達也へ救援要請
→出国禁止を無視して救出 - 日本軍人への奇襲を受けて元老院が司波達也の文民監視団派遣を決定
- 達也の出国および光宣の動員禁止が解除
- 達也がチベット、光宣がシャスタ山へ
- 司波達也暗殺計画:9/15
- 一条将輝の周囲が異変に気付く
今回の章を読んでいて思ったのは「スターズは魔女の足跡に気付かないのか?」でした。偶然付近にいた遠上遼輔は気配で察知できていて、宇宙からの監視を行っている光宣に至っては直接視認出来ています。いくら郊外とはいえ外部の人間が気付けるなら(捜査は専門ではないとはいえ)ホームの人間が気付かないのは違和感がありました。当局との衝突を恐れてシャスタ山境内の監視に留めていたため、付近まで目が届かなかったのかもしれませんが。
文民監視団への奇襲の描写も不穏ですね。まるで達也を引っ張り出すかのような描写です。
また、当主着きの執事である葉山が東道からの使者であることを達也が知らされていなかったとは知らなかったです。黒羽姉弟との元老院講習でそのあたりのことも教わっているかと勘違いしていました。まあ、気づきそうにはなっていますが。
将輝のハニトラ関連が清涼剤です。暗殺計画の進行なのに平和だ。
封印と解放
第6章では、それぞれの遺跡の封印と解放の過程が描写されていました。発生した出来事は大まかに以下となっています。
- シャスタ山の遺跡
- 9/16,00:00,光宣が現着→シャンバラの遺跡へ
- 『天罰業火』の石板を回収
- その他戦闘用魔法の石板へのアクセスを制限
- シャンバラの遺跡を封印
- 9/16,19:30,高千穂へ帰還
- 9/16,22:00:FAIRおよび支援者が現着→解放者の遺跡へ
- 導師の石板を回収した支援者が帰還
- 残るFAIRが祭壇の魔法『ギャラルホルン』を獲得(9/17,12:00)
→獲得の余波で位置がバレる
- 9/17,20:00:スターズが現着
→FAIRを迎えに来た支援者のメンバーは捕縛もFAIRは逃亡成功
- 9/16,00:00,光宣が現着→シャンバラの遺跡へ
- チベット戦争
- 観戦武官への奇襲を受け日本軍が大亜連合国境付近へ派兵(けん制)
- 日本軍より司波達也へ文民監視団参加依頼
→達也は受諾
達也達は急いでいたが故に入れ違いになり、事態を認知出来ませんでした。シャスタ山の遺跡が前線基地であったことを知っていたのなら外敵側の前線基地が近くにあることも分かりそうなものですが、ゴタゴタしすぎて思考が回らなかったのでしょうか。それとも、現代の戦争のスケールで考えてしまって「山を挟んで前線基地が向かい合う」というスケールの違いに惑わされてしまったからでしょうか。
また、『ギャラルホルン』が「生来の魔法を損なわず取得できる」というのも謎です。石板ではなく”祭壇に刻まれた魔法”だからなのか、取得したロッキー・ディーンが同系統の魔法適正を持っていたからなのか、ローラ・シモンが魔法演算補助用デーモンの外部端末化が可能だからなのか、あるいはその全ての要素によるものか。シャスタ山には四葉家の潜入工作員もいるので、遺跡の調査によっていつか明かされるかもしれませんね。
ちなみに、この章で新しく登場した魔法は以下です。
深刻な幕間劇
第7章では、司波達也暗殺計画の進行が描写されていました。発生した出来事は大まかに以下となっています。
- 司波達也暗殺計画の進捗
- 一条将輝の異変を知らされた劉麗蕾が本人に探りを入れる
→藍采和の正体を知る劉麗蕾が取り押さえる - 藍采和が国防軍へ捉えられる
- 劉麗蕾、一条将輝双方の取り調べにより狙いを推定
→一条将輝を司波達也暗殺のための刺客に仕立て上げる思惑
- 一条将輝の異変を知らされた劉麗蕾が本人に探りを入れる
この巻の清涼剤が終わってしましました。将輝関連はけっこう好きなので個人的には面白かったですね。
それにしても、作中で最初に登場した戦略級魔法が『質量爆散』だったため違和感がありましたが、戦略級魔法でも規模を抑えて使い勝手を良くすることが出来るようですね。
今回の『霹靂塔』は個人の魔法制御能力で規模を対人規模に減衰させていますし、『ヘヴィ・メタルバースト』もブリオネイクによって対人規模の戦術級魔法に抑えることが可能、『トゥマーン・ボンバ』に至っては基幹システムとなる「チェイン・キャスト(仮称)」によって対人規模から戦略級規模まで自在に調整することが可能です。『質量爆散』のじゃじゃ馬具合を再確認しました。
ちなみに、この章で新しく登場した魔法は以下です。
本格介入
第8章では、チベット戦争の終着が描写されていました。発生した出来事は大まかに以下となっています。
- シャスタ山騒動の把握事項
- 四葉家
- 9/19:光宣が回収した石板を回収
→巳焼島の地下に封印 - 9/20:四葉家から達也へFAIRの騒動の報告
→光宣と情報共有
- 9/19:光宣が回収した石板を回収
- FEHR
- 情報整理『デュオニソス』とFAIRへの対応
- メイジアン・カンパニーへFAIR捜索に関する助力願い
→スターズによる全面バックアップの確約
- 四葉家
- チベット戦争へ司波達也の本格介入
- 9/20:IPUへ司波達也が入国(日帰り)
- 司波達也の文民監視団への合流道中で奇襲
- 奇襲部隊であるイギリスの反政府魔法組織「ログレス騎士団」の確認事項
→イギリス政府を代表してマクロードから司波達也へ排除の許可
- 9/22?:ラサの無防備都市宣言への誘導を検討
- 9/23?:チベット現政府への勧告書提出係は司波達也
- 宣言の検討中に達也はポタラ宮へ入場
→シャンバラの施設案内所の偽装状況を確認 - 現政府が以下の条件付きでラサの無防備都市宣言を受諾
- ラサの無防備都市宣言中の停戦
- 終戦までIPUおよびチベットからの司波達也の国外退去
- 宣言の検討中に達也はポタラ宮へ入場
- チベット戦争終着
- 9/20:IPUへ司波達也が入国(日帰り)
- USNA:サンフランシスコで大規模な暴動発生
- FAIRによる事件
→ギャラルホルンへの対処のためにスターズおよびFEHRが司波達也へ援助を求める
- FAIRによる事件
一難去ってまた一難。
ひとまずシャンバラの遺跡への対処はできたものの、それに手一杯で解放者の遺跡への対処が遅れています。オークランドでのバベル事件は殺傷性の無さからどうにか穏便に対処できましたが、今回のサンフランシスコではそうもいかないようです。魔法による社会への混乱が大国で発生すれば達也の計画への負の影響も計り知れません。もはや対岸の火事では済ませられなそうですが、どこまで深入りするのか。
とはいえ、目下のシャンバラの遺跡への対処は予定通り済んだことはプラス要素でしょう。散在したテロリストであった解放者と国家を築いていたシャンバラの社会への影響度は段違いでしょうし、なんなら前線基地として向かい合っていたシャスタ山のシャンバラ遺跡にはギャラルホルンに対処する魔法が存在するかもしれません。日本に存在する遺跡もありますし、まだまだ気になる情報は多くあります。
また、チベット戦争関連でログレス騎士団が司波達也暗殺で登場しましたが、関連して気になったことがあります。それがメイジアン・カンパニー6巻から7巻の間で登場した以下のスピンオフ「夜の帳に闇は閃く」で仄めかされた「ギルド」の存在です。近代以前のヨーロッバに存在し、世界各地へ潜んでいるとされる裏の巨大組織が司波達也暗殺に勤んでいるとされているので、今回のログレス騎士団にも関与してそうです。
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以上が内容のまとめや気になった情報のピックアップ、抱いた感想になります。
新魔法紹介
この巻にて新しく登場した魔法を以下で紹介していきます。
石棺
事故を起こした原子炉を閉じ込めたコンクリート建造物が名称の由来で、目的物の周囲の物質を固めて目的物を封じる。
土砂等の固体を対象にした発散系魔法。対象固体の位置および温度を定数化した状態で液体へと相転移させ、対象分子が均一に混ざり合った状態で固体に戻す。封じたい物体の周囲の土砂を対象にすることで、目的物を岩に閉じ込める。
今回は地中に埋まっているシャンバラの遺跡を外部から掘り返されないように、自然の産物に感じるレベルで凹凸のある囲いに設定されている。
ギャラルホルン
終末戦争を告げる角笛「ギャラルホルン」を由来にしていると考えられ、多数の人間を戦の狂気へ誘う魔法とされている。『バベル』と同様にシャンバラの敵対者である「解放者」が創造した魔法だと考えられる。
狂気へ誘う効果から精神干渉系魔法、多数の人間を対象にしていることから個体ではなく領域への干渉だと考えられる。「戦の狂気へ誘う」とのことなので、人間の精神における自制心を大きく減衰させたり、闘争欲求を大きく増大させる魔法だと考えられる。
また、「戦略級魔法と同規模の影響力」とされているため、直接的な殺傷性の無いデュオニソスは一都市を丸ごと対象範囲に収めることが出来る可能性がある。
堕天使〈グリゴリ〉召喚
聖書における堕天使の一団を名称の由来とし、グリゴリの原義である「見張る者」としての性質を自身に付与する古式魔法。自身の血を触媒とし、堕天使とされる天使の名を唱え逆五芒星と描くことで発動する。
「見張る者」の通り知覚系の魔法で、接近してくる者の敵意を感知する。
また、唱えられた天使によって追加で付与される効果が変化すると考えられる。
邪視〈サリエル〉
聖書における死を司る大天使である「サリエル」をモデルとした魔法。
サリエルが持つ邪視を模倣していると考えられ、視た者のステータスを引き下げる効果を持つ。術者の力量や掛けた準備によっては生体機能にまで影響を及ぼすことが出来る。
告示天使〈アズラエル〉
イスラム教の天使である「アズライール」を由来とする、「人間」という事象に干渉する古式魔法。
音を媒体とする魔法で、音が届く範囲の人間1人を対象に発動する。対象の人間は心臓麻痺の状態に変化する。
風火二輪
道教の神”哪吒太子”の乗り物である「風火二輪」を再現した古式魔法。伝承とは違って火や風は生じないように改良されているため隠密性が高い移動用の魔法となっている。
地上から高度数十センチメートルを滑るように飛行する魔法で、現代魔法の飛行魔法のような自由度は無い。軌道修正は左右のみで、高度を変えられないため障害物を飛んで避けることは出来ない。しかし、人1人背負った状態でも60km/hを超える速度を出すことが可能。
媚香
大亜連合で開発されたハニートラップ用の魔法。
自身の体香の化学成分を変化させて媚薬成分を持たせ、その香りを媒体にして精神的な抵抗力を奪う魔法を作用させる。その性質上異性にしか作用させることは出来ず、即効性は無いが、性的接触を深めることで最終的に対象の自由意志を掌握する。
デュオニソス
多人数を対象とする精神干渉系魔法。集団を酩酊状態にすることで理性による抑制を外し、集団ヒステリーを誘発する。作中では魔法ではなくサイキックだとも考えられている。
主な陣営の動向
次は、作中における主な陣営の動向について触れていきます。
メイジアン・カンパニー(達也陣営)
前々から示されている通り、達也の目標は魔法の一般社会への定着で、そのためにメイジアン・カンパニーを設立し、ついでに社会に魔法への忌避感を抱かせる魔法犯罪者への対応を行っています。また、その活動の一環で調査しているシャンバラの遺産は、(善悪問わず)社会への影響度の関係で積極的に収集および封印しています。
そのため、最近はシャンバラ関連の、特に封印に焦点を置いていました。ですが重要度の高い場所は抑えたので、次は魔法犯罪者への対応に焦点が置かれるでしょう。
FAIRによる魔法テロ、それもサンフランシスコという大都市でのそれはUSNAの一般大衆に魔法に対する大きなマイナスイメージを植え付けます。USNAは達也が大きなコネを持つ国であり、世界に対して大きな影響力を持つ二大巨頭の片割れです。そんな場所で魔法に対するマイナスイメージが爆発すれば、達也の目的にも大きな障害となります。
そのため、今まで重要度の低さから後回しにしていたFAIRを積極的に駆逐しにいくことになるでしょう。これはFAIRを支援していた洪門マフィアも同様です。洪門マフィアが大亜連合の司波達也暗殺計画に助力していた事実もすぐに認知度するでしょうし、導師の石版を大亜連合に流そうとしていた事実は無視できる問題ではありません。
また、パラサイトへの対抗手段に対する懸念をわざわざ描写したことから、後回しにしていた光宣と水波の人間化の魔法もすぐに回収してくると考えられます。パラサイトであることに懸念があるのなら人間に戻ってしまえばいいことですし、光宣はFAIRとの因縁もあるので、状況が後押しする形で人間に戻ることになるでしょう。
FEHR
FEHRは達也たちと同様、魔法資質保有者に対する待遇を改善させようと動いています。それに起因して達也に目を付けられ、元々のFAIRとの因縁もあって対FAIRにおける直接的な対抗手段のような扱いとなっています。
そのため、達也の意向もあってFAIR駆逐の直接的な作業はFEHRが担うことになりそうです。最低でも達也たちが『バベル』と『ギャラルホルン』を封印も兼ねて回収しようとするので、状況によっては僻地に追い詰めて『アグニ・ダウンバースト』で確実に仕留めるくらいはさせられるでしょう。そうすれば、バベルの石板を保有し、解放者の祭壇を抑えられる達也達が封印できます。
とはいえ、達也のコネや戦略級魔法のインパクトを考えればそこまでの状況になるとも思えないので、普通に激突する程度で済むはずです。
FAIR
前までは「達也への嫌がらせ要員()」のような立ち位置だったFAIRは、ついにちゃんとした嫌がらせ要員となりました。組織は瓦解したもののその分フットワークが軽くなって隠密性が増し、魔女の多彩な技能も相まって予想外の行動を取ることが出来ていましたが、そこに戦略級規模の魔法も加わり敵としての存在感が出てきました。
そのため、FAIRは目的である「魔法至上主義のための積極的な非魔法資質保有者の排除」に移行したいところです。スターズにも狙われどうにか索敵から逃れる機を作りたい状況ですし、サンフランシスコでの混乱は攪乱にもなる一石二鳥だったのでしょう。
そして逃れるならば、一旦腰を落ち着ける場所も必要ですし国外逃亡を目指すでしょう。
となると、西海岸からなら比較的アクセスしやすいですし、縁もある大亜連合へ亡命しようとするのではないでしょうか。一応、今回司波達也暗殺計画の一環で反政府組織が登場したイギリスや、作中でたびたび魔法師と一般市民の溝が深く描写されているEUも可能性はあると思いましたが、やはり筆頭候補は大亜連合です。
USNA
USNAは今回あまり動きが描写されませんでした、遺跡関連はミクロな動きなのでともかく、チベット戦争に関しては(直接的な侵攻が目的ではないとはいえ)大国同士が衝突する大事で、達也含む戦略級魔法師が数名関与する大事態でした。USNAとしてはどちらも覇権を争う国家でもあるので座視するはずはないですが、動きが全く描写されないというのは不自然です。
おそらくこれは、描写されないレベルでの小さい動きしか出来ない状況なのでしょう。なぜなら、大統領選挙が控えているからです。
大統領選は国防長官であり達也とコネを持つスペンサーと、FBIに強い影響力を持つリベラ上院議員の決戦となっています。どちらも選挙のために自陣のリソースを使って有利を演出していますが、軍全体を管理する国防総省と国内の犯罪を摘発する連邦捜査局が揃って削られていれば、注目度の割に重要度の低いチベット戦争には表立って介入出来ないかもしれません。
また、これはFAIRへの対応にも影響しているはずです。USNAは広いとはいえ、政府に大きな脅威を抱かせた魔女を捜索するのにFBIだけでなく国防軍の一部であるスターズも担当するのは違和感を感じます。第4巻では政争のためにわざわざ七草真由美一行を突いてますし、色んなことに人員を割いていればFAIRの捜索にリソースが足りなくなって見つからないのも無理はありません。
しかし、サンフランシスコの大暴動は目に見える形の脅威です。となれば、FBIだけでなく国内の治安維持のためにスターズも出張ることになるでしょう。
IPU
中央〜南アジアに座するIPUは、隣接する大亜連合と頻繁に衝突しています。今回は国境に存在するチベットの実質的な独立を巡る戦いで、大亜連合の領内まで攻めるつもりは無かったため戦術目標は達成しました。 大亜連合は余裕が無く、これ以外の火種も描写されていないため、軍事的には一旦落ち着くでしょう。
しかし、(前々から目標だったとはいえ)戦争に踏み切ったのは達也の煽りです。つまり、ポタラ宮での魔法的遺物の採掘はすぐに始めるでしょう。 国外での小規模な戦争ですし、消耗したのはほぼ軍部のみだと考えれば技術部はすぐに動けてもおかしくないと思います。
発端が達也なので声を掛けざる負えないですが、IPUからすればこれ以上達也が力を付けて欲しくはないはずです。なので、実際に呼ぶのは「聖遺物が簡単に軍事力へ変換出来ない」と確証を得てからでしょう。
そうなるとIPU側は、時間を掛けては達也に「先を越された/出し抜かれた」と思われる懸念があると考えるはずなので、そういう意味でも先行調査はすぐに行われるはずです。
スリランカをメイジアン・ソサエティに譲渡した主な理由は「達也が生み出した魔法技術の恩恵を真っ先に受けたい」というものなので、達也を巻き込まないことも、達也との関係を悪化させることも、極力避けようと動くはずです。
大亜連合
大亜連合は、北にソ連、西にIPU、東に日本(USNA)がいるのに加えて、前作の敗戦で大きく動くだけの体力がありません。そのため、当面世界に対して目立って仕掛けることは無いように思えます。やることと言えば、裏で工作活動ぐらいでしょうか。 大亜連合は前作の初期から描写されてるのにあまり内情が描かれないため、どんな動きをするのか分かりません。同盟国ってどこなんでしょうか。アフリカの方に実質的な領地があるのは描写されていましたが…。
工作活動と言えば司波達也暗殺計画の状況です。既に2度失敗していて、チベットとのいざこざもあり実働に使っていた精鋭工作部隊の八仙は既に半壊。達也は大亜連合の層ならすぐに補充されると考えていますが、例えその通りでもここまでダメージを負ってすぐに動けるとは思えないので、暗殺自体は一旦休止するでしょう。
USNA西海岸で暴動が起きていますし、その辺りから工作員を潜り込ませる動きに切り替えるのではないでしょうか。そのついでにFAIRを回収すると考えていますが、どうなるか。
日本
日本は今回のチベット戦争で観戦武官に奇襲を掛けられたため、大亜連合との国境線に軍を派兵しています。開戦も辞さない構えとはいえ、前述の通り大亜連合は日本に表立って手を出すほどの体力は無いので、大亜連合との戦争にはならないでしょう。
もし戦事方面であるとすれば、大亜連合にリソースを割いている隙に新ソ連がちょっかいを掛けてくる可能性ですが、ベゾブラゾフを失った穴を数年で埋められるとは思えないので、例えあっても小競り合いにしかならないでしょう。
大亜連合と新ソ連へリソースを割けば他に大きな事は出来ないと思われますが、IPUのチベット戦争で準備に日本軍が関与している可能性があるので、チベット戦争関連の動きはありそうです。
ヨーロッパ
ヨーロッパは日本との地理的な問題で描写が少ないため動向の予想は出来ませんが、魔法の差別が最も顕著に描写されている地域なのでこれから関わっていくと考えられます。先述した外伝ではヨーロッパ発祥の裏組織が司波達也暗殺計画を立てていて、今回はイギリスの反政府組織が実行に移していますし、これから徐々に描写が増えていくでしょう。
現状のヨーロッパはEUから独立したイギリスは”魔法との併存”という形で安定させていますが、残りの東西EUは実質的な家畜化を実行しようとするレベルです。 そのため、達也が目標達成に動く場合は結果はどうあれ目を向けなければならない場所です。
今回のチベット戦争では、達也含む戦略級魔法師の文民監視団が停戦に大きく貢献しているので、「魔法師は世界に安寧をもたらす存在でもある」というような切り口で国内での魔法差別問題に反抗出来そうです。
シャンバラ〈楽園〉とラ・ロ〈解放者〉
シャンバラの全容が明らかになった時から作中でも「なぜシャンバラに治安維持目的ではない魔法が多数存在するのか?」という疑問が呟かれていました。また、シャンバラ探索において何故か一部の鍵が紛失していて、シャンバラへの道が永らく閉ざされていました。
その疑問は解かれ、「シャンバラには敵対者が存在していた」という事実が判明しました。それがラ・ロ〈解放者〉です。
ラ・ロ〈解放者〉
ラ・ロは解放者を自称するテロリストで、自身らが”楽園”と称したシャンバラに散発的なテロを行っていたようです。”解放者”を自称するということはシャンバラの支配者を敵対者として、シャンバラを支配者から解放しようとしていたのでしょう。
また、ラ・ロの創った魔法だと思われるバベルのルーツがアヴェスター系だとされているので、ラ・ロの正体はゾロアスター教の伝承元の存在だと考えます。
ゾロアスター教は”世界最古の宗教”とされ、様々な宗教がゾロアスター教の影響を大きく受けているとされています。そして、シャンバラの伝承元であるヒンドゥー教は多神教なので一神教のゾロアスター教と対立するのは納得がいきます。
また、ラ・ロは敵地であるシャンバラを”楽園”とプラスな表現をしていることから、作中におけるシャンバラは元々ゾロアスター教の存在が創造した物なのかもしれません。というよりも、ゾロアスター教の存在がシャンバラのモデルとなるシェルターを創り支配体制を敷き、シェルター内にいた人間が体制に反抗を起こし革命が成され、元支配者側であるゾロアスター教はシェルターを追われたのだと考えます。
ちなみに、伝承元の国家体制はゾロアスター教が一神教なので君主制、ヒンドゥー教が多神教なので共和制だと考えます。
まとめると、以下のような感じです。
- ゾロアスター教の伝承の元となった者達がシェルターを創る(シャンバラのモデル)
- シェルター内で君主制国家を形成
- 反政府勢力が革命を成し共和制へ体制変更
- 共和制の国家が後にシャンバラの伝承としてヒンドゥー教に残る
ラ・ロの技術
現状でシャンバラとラ・ロの明確な違いは判明していません。体制側と反体制側という違いはあれど、先述の通り元は同じ群体の可能性がありますし、使っている魔法のシステムも同じです。
ですが1つだけ挙げるとするならば、”祭壇の魔法”を挙げたいと思います。
新しく登場したラ・ロの魔法である『ギャラルホルン』は石版ではなく祭壇に刻まれた魔法でした。シャンバラの魔法は戦略級魔法のような大型の魔法でも石版に刻まれていて、石版自体も据え置き型ではあるものの取り外し/運搬は可能でした。しかし、祭壇となれば建物と一体化しているはずなので取り外しは不可能です。つまり、運搬が不可能になるほど大きい術式であると考えられます。
先述した通り、ギャラルホルンは魔法の干渉規模が図抜けている可能性があるので、既存の戦略級に収まらない規模の領域干渉になるのでしょう。運搬が可能な『天罰業火』でさえ既存の戦略級魔法を超える規模の魔法だとされているので、運搬が不可能なギャラルホルンの干渉規模は文字通り桁が違うと考えます。
まとめ
今回は【メイジアン・カンパニー 7】についてのまとめ/解説/考察を行いました。第7巻は「状況に縛られる達也たち」と「状況を動かすFAIR」の話でした。
今まで敵キャラとして物足りなかったFAIRは、脅威度を上げてきて確かな存在感を発揮し、物語に緊張感が生まれています。やはりバトル物として楽しむには敵キャラが脅威的でなければいけませんね。
今回の記事は以上になります。最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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