メイジアン・カンパニー3巻の感想/解説/展開予想(補正)

ストーリー解説/考察

 11月10日、個人的に待ちに待った【メイジアン・カンパニー】3巻が発売しました。以下の記事で3巻以降について個人的な予想を入れていましたが、FEHRとの会談、軍との衝突、元老院四大老の暗躍、あるいは質量爆散マテリアル・バーストの矛先と、色々と気になる点は多かったです。

 ですが、まさか本編を半分程度にして、あと半分近くは一条将輝や光井ほのかを中心とした恋の短編集にするとは思ってもいませんでした。商品紹介でラブコメ云々が出てきたときは「こんなの本編にどう関係するんだ」と思いましたが、まさかの短編…。

 「FEHRとの会談が確定して終わる」という私の予想は合っていましたし、一条やほのかの恋事情については「そろそろ決着付けろよ」と思っていたので文句はありません。ですが本編を進めて欲しい民には思うところはあるでしょう。別にサイドストーリーは好きなので、短編集なら前みたいにSSという形式でまとめて出しても良いわけですし、せめて事前に告知が欲しかった…。

 まあそれはいったん置いて、今回は3巻の感想と内容の整理、とともに自身の展開予想についてのすり合わせを行います。ネタバレ前提ですので気を付けてください。

 最後までお付き合いいただければ幸いです。


FEHR関連

 まず3巻の冒頭がFEHRの現状でした。FEHRは2巻の中盤にFAIRのシャスタ山調査隊へ諜報を放っていたので、達也からFAIR調査を命じられていた光宣がFEHRの諜報員と鉢合わせて敵対が起こったり知るかな、と思いました。またまじめな予想では、光宣がFAIRの調査隊と衝突あるいは調査隊の追跡を行うと考えていました。

 しかし冒頭の時点でFAIRの調査隊は引き上げているようで、光宣が関わっている様子はありませんでした。これは達也がFAIRのシャスタ山調査を重要視していなかったためでしょう。元々、そんなに急ぐ必要は無いと言っていましたから予想できたことですね。

 話は戻りますが、FEHRの現状では諜報結果とそれによるFAIRへの対策について話していました。それによると、シャスタ山には魔法式保存のレリック以上の魔法的価値を持つ遺跡があったようです。当然ながらそれほど重要な遺跡は連邦法で保護対象に指定されるので、採掘どころか政府への報告すら怠った場合は反魔法主義の攻撃の格好の的となります。

 また事前に政府へ報告しようにもFAIRは副リーダー「ローラ・シモン」の魔女術ウィッチクラフトで発見したため物的証拠は無く、現状の段階での規制は難しいようです。そうなるとFEHR独自で調査を行うしかありませんが、前述の諜報員はFAIRに迎撃され負傷を負っておりそれ以上の人員を投入するのは躊躇うところです。遠隔視系の魔法技能ではローラ・シモンの魔女術ウィッチクラフトで気付かれ、逆に攻撃される懸念があるので魔法による監視も行えません。

 そこで出された案が「魔法に関係ない私立探偵を雇う」というものでした。魔法技能に関係ない諜報ならば、魔女術ウィッチクラフトによる迎撃の懸念は薄れます。そうして懇意だった探偵事務所に依頼した訳ですが、なんとその相手が懐かしの「小野遥」でした。

 小野遥は前作において国立魔法大学付属第一高校のカウンセラーで、裏では九重八雲の弟子(達也の妹弟子)で公安のスパイでした。スパイは副業と言っていましたが、達也が大学1年生であろう2年前に国内のスパイ合戦により内戦一歩手前に発展したため、八雲の伝手を辿ってシアトルへ避難していたようです。

 この状況を解説されたときは「不憫すぎる」と思いましたが、前作の時から達也の調査を命じられていたりと苦労人な感じだったので、去就については納得です。スパイ合戦も時期的に考えて、前作の達也とUSNAの衝突に端を発していそうなので不憫さがマシマシです。そのあたりの詳細もいつかは明かして欲しいですね。重要度が低そうなのでほぼ無いでしょうし、私も忘れると思いますが。

 そんな小野遥ですが、その魔法技能故に隠密技術に関しては地味に作中最高レベルとなっています。諜報や追跡・逃走は非魔法系の技術が必要なのでそういった諜報系の総合力では光宣や亜夜子には敵いませんが、隠密に限って言えば彼らに迫るものでしょう。実際に、達也は精霊の眼エレメンタル・サイトを使用しなければその隠密技能を破ることはできていませんでした。

 この隠密魔法は自分に発動する、自己完結型の魔法なので魔女術ウィッチクラフトなどによる探知には引っかからないでしょうから、何気に対FAIRへの諜報カードとしては良い手なのではないでしょうか。そこまで重要な手札というわけではありませんし。

 また私の予想通り、3巻はFEHRとの会談が決定して終わりましたが、その内容は予想とはことなりました。まさかUSNAでのFEHR派遣組の話をまるまる端折るとは…。

 まず会談自体は確定しましたが、FAIR案件とは関係のない真由美を省いたところで何かしらの問題が発生したようです。FEHRのメンバーとの繋がりを辿ってアストラル体を転送できるレナ・フェールは、カンパニーの従業員である遠上を達也との面会場所に置くことで、急遽対談を行い始めたところで終わっています。

 なので4巻の最初に回想として渡米時の出来事を描写するようです。最後の様子からしてFEHRは切羽詰まっていることが伺えますが、リーナは微妙な反応で、真由美はトラブルについての反応がありません。おそらくはやばいことが起きたというよりも、リーナとFEHRの間でちょっとしたトラブルが発生したのでしょう。なので4巻の構成は、序盤が渡米時のいざこざ、中盤がソサエティ会談、終盤にFAIR対策について、おまけで真由美と摩利のエンジョイだと考えます。

日本政府とのいざこざ

 FEHRのFAIR対策の次に描写されたのが、真由美と遠上の渡米についての軍の対応でした。この対策会議が行われていたのは皆さんお馴染みの「国防陸軍情報部」です。公然の秘密部隊である情報部ですが、七草家の長女である真由美という高レベルの魔法師が海外へ渡航することへのリスクと「魔法師の出国自粛」を慣例として広めているにも関わらず政府に無断で渡航準備を進めていることの2点を問題として挙げていました。

 ですが、どちらも軍が直接手を出すに東道青葉という元老院四大老の存在と司波達也という抑止力の重要性が邪魔しています。なので「この渡米が元老院の意向を受けた物なのか」という点の確認と、せめて七草真由美という高レベルの魔法師の渡航妨害を具体案として挙げていました。そこで出てくる元老院が樫和主鷹でした。

 樫和が3巻以降で出てくるならばどうやって絡んでくるのか、と思っていたので「なるほどな」という感じでした。東道は元老院の中でも四大老という有権者ですから、そこに対抗するならば同じく四大老が挙げられるのも納得です。それに樫和が権力者では珍しくフットワークが軽いというのは驚きでした。

 そこで真由美の渡米が元老院の許可を得ていないことを確認した軍は具体的な妨害に移る訳ですが、その前に樫和が具体策を献上したことが更に驚きでした。せいぜい、軍の違法行為のもみ消し程度の”手助け”と予想していたので、積極的に軍による妨害を手引きしたことは予想外です。それだけ東道と達也の親密さを危険視しているということでしょう。実際に私自身も、東道は達也の支援に積極的すぎると思っていたので、この姿勢は予想出来て然るべきだったかもしれません。

 もちろん積極的に動いたといっても、妨害を行う実行犯への紹介状を渡すというだけで、自身の配下は一切使っていません。私は軍との協調の裏で樫和が独自に十六夜調による妨害犯をしてくると予想していたので、こちらも予想外でした。

 樫和が紹介したのは、九重八雲も所属していた比叡山の呪術師でした。つまり妨害とは、達也の周囲に呪いを掛けて脅すというわけですね。私が以前した予想では、軍の保有する隕石爆弾ミーティアライト・フォールのような戦略級魔法を用いた達也への攻撃と樫和による情報のもみ消し、だったので普通に外れていました。とはいっても質量爆散マテリアル・バーストの出番となったら映画の影響で「星砕き」の印象しかなかったので、妨害が「隕石落とし」になることは仕方ないでしょう。

 ですが質量爆散マテリアル・バーストを「星砕き」に使うという予想は正解でした。偶然にも地球公転軌道近辺に接近予定の巨大彗星を対象として、質量爆散マテリアル・バーストで軌道を変化させ太陽系外へとふっ飛ばすというものでした。これは「魔法師の移動制限を取り払う」という政府の妨害対策と、質量爆散マテリアル・バーストの平和的利用法という「魔法の存在意義」を定義するための行為でした。

 前者は、「さすがの達也でもまだ接近していない彗星は高度な観測機器がなければ発見も標準もできないし、質量爆散マテリアル・バーストで対応できるとしても気づいた時には地球に接近しすぎて破壊後の破片による被害が無視できないとなれば対処しきれない」と政府側に伝え、それに伴い「魔法師を災害対策のために移動させるためには制限が邪魔だ」と訴えました。政府側は真由美と遠上の渡米妨害をなかったことにするだけでなく、「魔法師の移動制限はあくまで自粛であり民間人の移動を制限することは出来ない」と魔法師の海外渡航を認めます。これは「メイジアンが海外渡航しても問題ない」という前例になります。

 後者は自身の魔法を腐らせない目的であり、「天体の衝突による災害防止」に限り質量爆散マテリアル・バーストの使用を政府に認めさせました。今回の彗星は「約2か月後に月ー地球間の約4倍の距離百五十万キロメートルまで近づく」というものでしたが、天体規模ではその距離は無視できないほどの近さです。そこで、災害の予防には質量爆散マテリアル・バーストが有用であると示したわけです。

 元々達也に対するスタンスは政府・軍内部で分かれていたので、今回のことで軍は完全に抑えられた形になりました。まあ、達也の魔法射程と威力にビビったという点も無視できませんが。

 まあこれで、達也が相当な違法行為を犯さない限り軍は手を出せないでしょう。政府はまだわかりませんが。

 また、真由美の渡米に七草家の当主である七草弘一が協調したのも予想外でした。「魔法師の政府からの自立」と「海外の市場にアクセスする」という点を満たせるから、という合理的な理由でしたから納得しましたが。それでも、基本的に政府の意向に従ってきた七草家が政府に逆らったのは大きな出来事です。

 つまり今回の行動により、七草家は「メイジアンの権利回復」という点において協調できるということが示されました。だからこそカンパニーに真由美を派遣したのでしょう。

 また、災害防止の観点から魔法師の移動制限緩和という動きにより、登場が期待できるキャラが居ます。レスキュー大学に進学した「西城レオンハルト」です。以下の記事でも登場を予想しましたが、私は「魔法を災害対策に利用する」という動きを予想し、そこからレオの登場を予想していました。後の方だと思っていましたが、けっこうすぐに登場するかもしれませんね。まさかエリカの方が早く登場するとは思っていませんでしたが。

短編エピソード

 商品紹介であった恋の云々が本編とはどんな風に関係してくるのかまったく想定できていませんでしたが、まさかの短編でした。リーナが渡米により深雪の護衛から外れて、その穴埋めで達也が深雪の傍に付くという状況から生じた魔法大学内の変化をメインにした話なので、本編との関連性はほぼ無いでしょう。

 今回の短編で焦点に当てられたキャラは一条将輝と光井ほのかです。どちらも達也と深雪の結婚が自身の恋において不利に働く者でしたが、話を読んでみると「恋に惚ける時期は過ぎた」というような内容でした。

 どちらも恋は過ぎ去って「好意」ではなく「信仰」に近くなっているようで、「観ているだけで満足」というような状態です。それでもモテモテ純情コンビでもあるので、直ぐに新しい恋?が始まるのはすごいです。一条は深雪の婚約乱入をする前からいたという婚約者候補の新キャラと劉麗蕾、ほのかは「風」のエレメンツとして出てきた新キャラと七宝琢磨の二人による取り合いの様相を呈しています。

 感想として「さすがにそうなるよな」と「気づくの遅くね」というものを抱きました。恋なんてしたことないのでいつ覚めるのかは分かりませんが、ほのかが自身の気持ちが恋ではなくなったと気付いたのが大学2年生になってからです。一条が自身の気持ちに気づいた時期はいつか分かりませんが、深雪の反応からして大学2年時くらいからで、リーナの反応から大学入学直後は深雪への執着を見せていたことが分かります。

 深雪と達也の婚約が決定的になったのが遅くとも高校卒業時の殴り合いだと考えれば、それから二年近く経っているわけですから、実らない恋から覚めるには十分すぎる時間です。私的に遅すぎだと思いますが…。それでも前作の序盤から続いていたものですから、達也と深雪を蚊帳の外に置いていますが、決着が描かれたのはすっきりしますね。

 また、私が待ちに待っていた七宝君の描写が入りました。ほのかの新しい恋についてのサブキャラ的な位置づけでの登場でしたが、私が知りたい「メイジアンの芸能界入り」についてもちょこっと書かれています。

 どうやらメイジアンを俳優デビューさせ始めようと考え始めたのは琢磨を嵌めた小和村真紀の思惑ですが、達也は既にそれに一枚噛むことで芸能界をメイジアンの新しい就職先としようとしているようです。小和村真紀の側は「新興事務所が大きくなるために新しい事を成功させたい」、達也は「メイジアンの活躍の場を広げたい」という両者の利害が一致して、七宝君主演の映画にはモブとして多くのメイジアンを適用しているようです。

 将来魔法師贔屓の弁護士事務所を開きたいと思っている七宝君は俳優といて本格的に活動する予定はないようですが、その他のメイジアンのために真剣に撮影に取り組んだようです。自身は「もう出ない」と考えているようですが、芸能界入りすることで広く顔を売れることを知れば何度もオファーを受けそうですね。それになんだかんだ責任感が強く押しに弱そうな七宝君ですから、小和村真紀に押し切られるところが眼に浮かびます。

 そうなると、【メイジアン・カンパニー】が終わるまでに描かれるかは分かりませんが、この先七宝君は達也と共謀しそうですね。今回の場合は七宝君というよりも小和村真紀ですが。そんな感じなので、七宝君は本編でも出番があると思うんですよね。というか出てきて欲しい。


 以上で今回の記事は終わりです。感想よりも解説の比重が大きくなっていて予想以上に内容が多くなりました。それでも私はもっと多くの感想がありましたが、さすがに細かいのでやめました。主要な内容のみがちょうどいいでしょう。

 主要な内容と言う意味では最後の七宝君については無駄に見えますが、私の触れたい話だったので載せました。七宝君は更生した不良優等生みたいな雰囲気が結構好きなんですよね。向上心溢れて周りを引っ張っていけるキャラという意味では一条と被っている感じはありますが、明確に新しい秩序を作り上げようとしている点は達也に通ずるものがありますし。

 最後までお付き合いありがとうございました。

 今後もよろしくお願いします。


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