魔法科高校の劣等生の主人公「司波達也」は以下の記事で挙げていますが、自身の尖った才能を追求して様々な手札を獲得しています。
ですが「既に持っている才能で欠点を補う」という成長コンセプトだった前作に対して、メイジアン・カンパニーでは「新技術を確立し才能を付与あるいは発掘する」ことをコンセプトにしているようです。
そう思う理由が達也さんの”事象干渉力”の強化です。
事象干渉力とは以下の現代魔法における3つの基礎能力評価項目の内”干渉強度”を左右する能力です。つまり普通の才能となるのですが、達也さんはそれがありません。ですが、達也さんは順々に克服していっています。
そこで今回は、達也さんが苦手としている基礎能力評価項目についての解説と、「どういった手段で苦手を克服していくのか」というところを考えていきます。
最後まで読んでいただければ幸いです。
処理速度
処理速度は「魔法の複雑さ」により変化します。魔法の複雑さとは「魔法工程の多さ」であり、魔法の工程が多くなると魔法式の設計図である起動式の記述が多くなります。起動式の記述が多くなれば魔法の読み込みに時間がかかるので、魔法の複雑さにより処理速度が変化します。
つまり処理速度は、魔法演算領域の魔法読み込み性能を評価する項目です。
そのため魔法の読み込みを補助する道具で処理速度は改善できます。長い呪符や呪文から機械に移行することで魔法の高速発動が可能になり、銃に対抗出来るようになりました。”3流”である人工魔法演算領域しか持たない達也さんでも”1流”レベルの処理速度で魔法を行使できます。
また達也さんは、人工魔法演算領域の意識的性質および精霊の眼により拡張された意識を利用して、魔法発動プロセスの内、魔法式構築までを省略しています。それにより超能力以上の速度で魔法を発動できます。
つまり、達也さんは既に処理速度の問題を解決しています。
干渉強度
干渉強度は「現実に対する魔法の強度」です。作中において魔法は”現実を騙す”技能とされています。
魔法で世界の情報を情報を改竄することで、付随する事象を改変します。この詐術は永続せず、時間とともに世界が気付きます。そうすると世界は修復力を発生させ、改竄された情報を元に戻そうとします。改竄された情報の強度が高いほど、改変された事象の情報強度は上昇し、修復力に抗うことが出来るようになります。これを馴染みやすく称するならば”魔力”が適当でしょう。
以上の魔力は事象干渉力と称され、干渉強度を評価する参考値となります。
より大きな現象であるほど多く魔力が必要とされるので、後述する演算規模はが大きいほど必要量の魔力は多くなります。
また魔法は互いに直接干渉することは出来ません。そのため一つの情報体上に複数の魔法がかけられた場合、より強い干渉強度の魔法が現実に作用します。これが魔法の相克と称される現象であり、魔法の範囲が掠っているだけでも起こるります。なので大規模な魔法を使っても強度が同程度の小規模な魔法が被れば、魔法を無力化される場合があります。これは個体に作用させる魔法が得意で、処理速度が速い魔法師が行うことができます。
達也さんは28巻の追跡編〈上〉で事象干渉力は霊子波であることを突き止めます。また研究により事象干渉力を鍛える方法を開発しています。さらに魔法式と事象干渉力を別個の要素として使うことで、発動中の魔法に追加で事象干渉力を送信するという技術も開発しています。
これにより、出力が弱い人工3流の魔法演算領域でも十師族に準する準1流の魔法力を発揮することが出来ます。
つまり、達也さんは既に干渉強度の問題を解決しています。
演算規模
演算規模は「魔法の大きさ」によって変化します。魔法の大きさとは魔法の規模であり、魔法の規模とはつまり、現実への影響度です。より現実に影響を与える魔法程、魔法の規模が大きくなるので演算規模が大きくなります。
つまり演算規模は、単位発動回数における魔法規模限度を評価します。
大きい規模であるほど要求される事象干渉力および処理する情報量が上昇するので、実質的に演算規模が魔法師の得意な戦闘法を示します。
達也さんはこの項目が改善できていません。
改善法
演算規模を改善する方法は2パターンあると思います。
追加の魔法演算領域を用意する拡張パターンと魔法演算領域の基礎性能を向上させる鍛錬パターンです。
拡張
魔法演算領域の拡張を簡単に言えば、追加パッケージでしょう。魔法演算領域の拡張により全体的な負担を減らすことで、魔法力を増大させて演算規模を向上させます。
人造レリック
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第19話「横浜騒乱編I」より引用
一つ目が人造レリックの利用です。
人造レリックは魔法式保存効果を持つ聖遺物であり、達也さんが開発しました。簡単にいえばレリックは、内部に魔法陣を組み込み感応材料を浸透、そこに事象干渉力を貯蓄させます。それにより、魔法師が魔法を”着火”するだけで充電された事象干渉力分の時間、魔法を発動し続けます。
つまり、人造レリックを使えば魔法力はほぼ無視できるわけです。
恒星炉にも使われているので魔法出力も高いでしょうから、兵器利用は易いでしょう。実際に【メイジアン・カンパニー】ではレリックの兵器化を目論む集団がメインの敵となっています。
とはいっても達也さんは魔法師の兵器化を促進する材料を与えたくないので、レリックの兵器化は考え難いです。
他者の魔法演算領域
次は他所の魔法演算領域の利用です。
これは2タイプあるのですが、共有型と付属型があります。
共有型
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「星を呼ぶ少女」より引用
複数の魔法師が1つの魔法を発動するタイプで、個人の魔法力を超えた魔法を行使できるます。なので、戦略級などの大規模魔法を使用するときのために開発されました。
専用の大型CADに複数のオペレーターが接続し、排出された起動式を全員で処理します。それによりそれぞれの魔法力を加算した魔法式を構築することで、強力な魔法を放ちます。
しかしこの技術は致命的な弱点があります。それが自己崩壊です。
魔法の発動は意識的に行いますが、魔法式の構築は無意識領域にある魔法演算領域で行います。つまり、魔法演算領域を共有するということは人間の無意識を共有するということです。それにより自身の無意識が他者に流れ、他者の無意識が自身に流れ込み、自己の境界線が曖昧になります。
人の無意識は完全にブラックボックスですから、何があるか分かりません。記憶や感情、衝動、価値観などの自己を形成する様々な要因が混濁するので、最終的に発狂して死亡します。
また人道を無視すれば利用価値がありそうですが、当然ながら同オペレーターの長期間稼働は出来ません。さらに、魔法演算領域を共有出来るほどの親和性を持つ魔法師は調整体でも希少ですので、レリックがある以上利用価値は低いでしょう。
一応ですが魔法演算領域の共有”技能”は存在し、稀に一卵性双生児の魔法師が互いの魔法演算領域を共有し魔法力を掛け合わせる”乗積魔法“を使用できるようです。
また作中では、映画「星を呼ぶ少女」にて登場した戦略級魔法”隕石爆弾“、およびUSNE大型航空母艦”エンダープライス”の航行システムに利用されました。前者のオペレーター「わたつみシリーズ」は四葉で引き取られています。また強制リンク用の大型CAD「計斗」を破壊する際に雲散霧消を使うため精霊の眼で構造を視なければならないので、もしかしすれば達也さんの技術力ならば改善版のシステムを構築出来るかもしれません。軍事利用云々以外にも利用価値は高そうですし。
付属型
指揮者となる1人の魔法師が自由意志を剥奪した魔法師の魔法演算領域を操作するタイプです。作中で出てきた例だと、新ソ連の戦略級魔法師である「イーゴリ・アンドレイヴィッチ・ベゾブラソフ」が指揮者、そのクローンが奏者となりベゾブラソフの負担なく戦略級魔法”トゥマーン・ボンバ”を放つことが出来ます。
つまり他者を付属の魔法演算領域として扱うということです。
自由意志の剥奪方法は催眠だろうと洗脳だろうとなんでもいいようです。要点は無意識を動かすための意識自我を完全に白紙化するこで、その結果が植物状態か洗脳状態かはあまり関係がありません。そこに指揮者の無意識を接続するわけです。
このとき共有型では他人の無意識が流れ込んで来ますが、付属型では接続する相手には意志が無いので 無意識の混濁は起こりません。
デメリットとしては、奏者側の調整が難しいことでしょう。洗脳状態にしろ植物状態にしろ自由意志がないということは自己管理が出来ないですから、魔法の発動に適した状態なのか見極めなければ不発になります。それに使いすぎて魔法演算領域のオーバーヒートにでもなったら貴重な部品が壊れてしまいます。
またこの技術は前者の特性を利用している可能性があります。ベゾブラソフは自身のクローンを使っていました。
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episode13「来訪者編XⅢ」より引用
しかし魔法科高校の劣等生来訪者編最終話のアニメオリジナルでは、進人類フロントのリーダーが精神干渉系魔法を用いで洗脳した部下に暗示を掛けることで、他者の魔法を使っていました。なので四葉ならば似たようなことを再現できそうです。
他にも、メイジアン・カンパニー〈1〉で深雪は新たに精神干渉系魔法”アイシーソーン“を習得しました。これは永眠させる”コキュートス”の威力制限版であり、解除キーを用いることで眠りを解除できるという「冬眠させる魔法」となっています。
これならば、生かしながら意識を消すので、CADに強制接続すればベゾブラソフと同じようなことが出来るかもしれません。
達也さんはベゾブラソフとの戦闘時に精霊の眼で同システム”アルガン”の稼働状態を視ているので、再現できそうです。また達也さんの解析能力ならば、接続によって魔法演算領域のブラックボックスの一部を解明するかもしれません。情報処理能力が常人離れしているので、視野が精神まで届くかもしれません。
とはいっても達也さんは深雪を兵器利用したがりませんので、相当追い詰められなければやらないでしょう。深雪を兵器利用するより人造レリックを兵器利用する方が可能性はあるでしょう。
他にも他者の魔法演算領域を利用する技術としてソーサリーブースターがあります。これは魔法師の脳を加工した魔法補助具の一種なので扱いはCADに類するかもしれませんが、自身の限界を超えた魔法力を発揮できるので付属型の魔法演算領域と言えるかもしれません。まあこれは論外ですが。
鍛錬
魔法演算領域の鍛錬としましたが、普通に魔法を繰り返して練習するわけではありません。限界近くまで魔法を行使することで、魔法への耐性を強くするのです。
魔法への耐性とは、魔法演算領域のオーバーヒートを防ぐリミッターの強度です。このリミッターは魔法を行使する際に取得する世界の情報を制限するものであり、これが機能していないと人間は世界の情報量を処理しきれずオーバーヒートして精神が損傷します。
魔法とは自身の取得した世界の情報を書き換えて定着させる技能なので、魔法師とは世界の情報量に対し1%でも耐性が存在し、少しでもリミッターが緩んだ人間であると考えられています。だからこそ魔法力は血統に大きく依存しているにもかかわらず、第一世代という非魔法師の家系から魔法師が生まれることが珍しくないのです。
ここで重要なのは、魔法を使い過ぎればリミッター不良に陥り生命に異常が発生しますが、その瞬間は限界を超えた魔法力を発揮するということです。これはリミッターの上限が上がったことで情報の入出が増え、結果魔法の威力が上がるというものです。つまり、リミッターの上限を上昇させれば魔法力を増大させられるということです。
つまりどんだけ魔法演算領域の性能が悪くても、少しでも魔法を認識できれば性能を引き上げることが出来るわけです。だからこそ達也さんの人口魔法演算領域も限界ギリギリを見極めた鍛錬により性能が上昇させることが出来ます。それこそ達也さんの場合、人よりもオーバーヒートによる突然死のリスクは少ないはずです。
それは、達也さんの人口魔法演算領域が意識領域に存在するためです。普通の魔法師は無意識領域に魔法演算領域が存在するため、魔法演算領域の稼働状況を直接認識することが出来ません。出来るとしても肉体の疲労や頭痛などから間接的に推測するだけです。しかし達也さんの場合は意識内であり精霊の眼があるため限界の把握が容易です。
さらに達也さんは、魔法演算領域のオーバーヒートが発生しても余程のことでもない限り重症化しない可能性が存在します。なぜなら、世界最高峰というのも生ぬるいほどに想子の操作技術が突出しているからです。作中で桜井水波のオーバーヒートの症状を改善させた処置はパラサイト化であり、それはパラサイトが人間よりも”魔法に近い”存在なため想子の操作技術が高いためでした。
魔法は想子で構築されているので、 想子の制御が完璧であれば魔法の暴走は起こらない、ということです。そしてオーバーヒートの要因はリミッターの機能不全ですが、重症化する要因は精神の耐性限界を超過した想子の暴走です。
世界最高の想子操作技術を持つ達也さんは、リミッターが機能不全を起こしても想子の暴走が発生しないので重症化しません。それどころか、再成があるのでリミッターが破壊されても肉体の不調を消すことが出来るので、軽傷にすらならないかもしれません。
そういう意味で、自身の普通の意味での魔法力を向上させるならばこれが一番現実的なのではないでしょうか。深雪の反対を押し切れれば…。
今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただきありがとうございました。
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