自己解釈記録:覇気

ONE PIECE(能力)

 【ONEPIECE】には独自の超常要素として連載当初から「悪魔の実」が存在しています。悪魔の実に共通しているのは、”水に浸かると力が抜ける“という弱点と”常人では持ちえないオンリーワンの超能力“を与えられることです。ですが与えられる能力は千差万別であり、「糸を出す」という小規模な能力から「地震を発生させる」という大規模な能力まで、作中で様々存在しています。
 そのため、悪魔の実は「明確な対価を支払うことで他に無い利益が与えられる」、つまりは”契約”に近いものと言えます。それこそ”悪魔の契約”と称しても良いでしょう。

 そして、そんな悪魔の実の能力と対を成す要素も存在しています。それが「覇気」です。

 今回は、”覇気”について解説し、個人的な解釈について綴っていきます。

※自己解釈が多分に含まれています。

 最後までお付き合い頂ければ幸いです。

解説

 まず、覇気とは簡単に言えば「生体機能」です。万人に共通して備わっている機能であり、行使するには過酷な訓練が必要なものの誰もが開花可能な能力です。
 そのため、”他に因って与えられる力”である悪魔の実の能力とは大きく違っています。

 また、悪魔の実の能力は能力の発現自体に訓練を必要としない”即席の力”であるのに対して、覇気は覇気自体を発現させるまででさえ過酷な訓練を要するので、”力の発現”という点でも対極の扱いを受けています。
 さらに、先述した通り覇気は”千差万別”である悪魔の実とは異なり”万人に備わっている共通の力“です。そのため、誰であっても覇気の性質は変わりません。

 そんな万人に搭載された機能である覇気にも、少ないながら種類があります。「気合/気配/威圧」に通ずる力で、作中では「色」として分けられています。

武装色

 武装色の覇気は身体強化を行う”気合“の覇気であり、作中では主に”硬化コーティング”として利用されます。練度によって変わるでしょうが、武装色でコーティングした皮膚は刃物や銃弾から身を護る「鋼鉄の盾」となり、硬化した身体から繰り出される打撃は普通の金属では防げません。
 そして、武装色の覇気の真価は悪魔の実の能力効果を貫通するということです。例えば、自然ロギア系能力者は身体を流動的にすることで物理攻撃を受け流すことが可能ですが、武装色を纏った場合は実体として捉えることができるようになります。(あくまで「能力に対する貫通性」があるだけであって「能力の無効化」ではありません)

 また、武装色の利用法は自身の身体への作用だけではありません。
 剣などの武器にも覇気で硬化コーティングすることが可能で、その武器の特性を強化させることが可能です。例えば、剣を硬化すれば切れ味が上がりますし、銃弾を硬化すれば貫通力が上がります。
 さらに、武装色の覇気はそれ自体が破壊力を持っているようで、コーティングのように纏わせるだけでなく覇気を流すことで対象を内部から破壊することが可能です。

 ちなみに、武装色の覇気は物に作用させた場合に影響が残り続ける時があるようで、武器本来の性能を強化することができるようです。これは作中で明言されていることではありませんが、「強い覇気により”刀の位列“を上げることが出来る」と仄めかされていて、最上位の”黒刀”は覇気を纏わせることによって起こる変色黒色化が永続化しています。

見聞色

 見聞色の覇気は認識力を拡大する”気配“の覇気であり、第六感センサーに近い能力です。認識の対象となるのは主に人間を含む生物で、建物などの無機物や自然そのものである植物のような”ただそこにあるものフィールド“は対象外となっています。

 一概に「認識力を拡大する」と言っても見聞色の覇気で読み取る情報は様々で、例えば行動を読むアクション/位置を読むポジション/意図を読むインテンション/感情を読むエモーション等々となっています。また、読み取れる範囲も様々で、人に依っては島1つカバー出来る者もいるようです。
 さらに、見聞色の覇気は鍛錬によって数秒先の未来が視える”未来視”を会得する場合もあります。

 ちなみに、精度は精神の安定度合いに依存するようで、落ち着いていないと使えないようです。

 以上の2種が万人に共通する潜在能力です。
 しかし、何事にも例外はあるようで、一部の者にしか発現しない覇気も存在します。それが”覇王色の覇気“です。

覇王色

 覇王色の覇気は他を怯ませる”威圧“の覇気であり、他者や動物の精神を削ります。”王の覇気“とも称され、作中では「この世で大きく名を挙げる人物はこの力を秘めていることが多い」とされています。ちなみに、割合で言うと数百万人に1人とされているため、”王の資質“とも呼ばれています。
 ワンピース作中の世界人口は明かされていませんが、総人口約10億人以上と仮定した場合は最低でも100人以上となります。ルフィが覇王色の片鱗を見せたのが億越えてからで、そのレベルはほとんどが新世界で覇を競い合っているので、海賊以外も合わせれば100人程度でも納得がいく気がします。(幼少期に発現させる天才or怪物生まれながらの王は例外中の例外とする)

 先述した二つの覇気とは違ってそれ自体を鍛えることはできず、本人の成長に付随して覇気は強くなります。

 威圧の度合いは「使用者と対象の実力や精神力の差」に依存し、差が無ければ影響は皆無ですが隔絶された差があれば一瞬で気絶させることが可能です。また、影響範囲は使用者の実力格?に依存するようで、未熟ならば目の前の人間を威圧する程度ですが、四皇など世界最高クラスの実力者であれば空間的な隔たりを無視して影響を及ぼします。
 ちなみに、練度によって対象の取捨選択も可能で、敵味方が入り乱れる乱戦であっても敵軍のみを威圧することができます。

 また、ここまでならば「雑魚散らしとして最適」程度の力に収まりますが、覇王色の覇気の真価は別にあります。
 それが、四皇クラスの覇者のみが可能とする威圧の物理的作用覇王色纏いです。例えば、ビッグマムは多数のミサイルランチャーを覇気のみで圧し潰しています。武装色の覇気のように纏わせることも可能で、武装色を纏った攻撃よりも大きな威力を得ることができ、このレベルの覇気が衝突した場合は空に浮かぶ雲に大きな裂け目を作るほどの余波を発生させます。

 3色の覇気について、それぞれの解説は以上です。他にも「過剰な覇気に悪魔の実の能力は効かない」という設定もありますが、よく分かっていません。
 ”悪魔の実は誰か他者の妄想”という説が作中で出てきたので、「借り物の妄想は自身の意志でかき消せる」ということかもしれません。

自己解釈:覇気

 ここから先は、以下の2つに関する自己解釈です。

  1. 覇気は身体機能なのか?
  2. 覇王色の条件は何?

覇気は”身体機能”⁇

 私は、覇気を「身体機能というよりも思い込みに近い」と考ています。

 というのも、見聞色の覇気だけなら”第六感”で済ませられたのですが、武装色と覇王色には身体機能とするには疑問符が付く発展性が存在しているからです。

 例えば、武装色の覇気は所持している武器に纏うことが可能であり、これは覇気が身体機能だった場合は不可能です。覇王色の覇気も、「相手に自身を大きく見せて威圧する」ならば威嚇の類の身体機能と言えますが、自身を認識していない者も一緒くたに威圧することが可能であり威嚇の範疇を超越しています。
 一番違和感が少ない見聞色の覇気も五感で認識出来ない範囲さえカバー出来ていたりと、やはり身体機能とするには難しい点が存在しています。

 そこで思い浮かぶのが、ルフィの修行時に発したレイリーのセリフです。

“疑わない事”
それが”強さ”だ!!!

@集英社,ONEPIECE,尾田栄一郎/第597話「3D2Y」,by.シルバーズ・レイリー

 ”疑わないこと”、つまりは”自身を信じることが強さ”だと言ったのです。これは、ルフィが自身の非力を痛感し力に疑いを持ち、失意にもがき苦しんでいた直後の言葉なのでただの励ましとも捉えられますが、覇気の概要を説明する際の最初のセリフですから”覇気の根底に存在するもの“と考えられます。

 実際に、武装色の覇気の説明では「見えない鎧を着る様なイメージを持て」、見聞色の覇気の修行時には「”気のせい“の延長上に~」と、精神的な活動を重視するセリフが多くあります。
 そのため、覇気とは人の精神に備わっている能力、精神機能だと考えます。より具体的に言うならば、精神活動意志物理的作用に変換させる機能”こそが覇気だと考えられます。

 だからこそ、武装色の覇気では“自身の一部と認識している”剣や服を一緒くたに纏うことが可能であり、覇王色の覇気で自身を認識していない者も威圧することが可能なのでしょう。それこそ、武装色の覇気による影響だと考えられる黒刀化は、武装色の覇気気合残留思念のような形で残っているからとも考えられます。

覇王色の条件は??

 先述の通り、覇気とは万人に共通して存在する機能ですが、覇王色は例外となっています。その理由や条件は明確になっておらず、ただ「大きく名を上げる者に発現することが多い」という傾向だけが判明されているだけです。
 そこで、覇王色の覇気についての条件について考えていきます。

 まず、覇王色の条件を「王の資質の有無才能」と「覇気の発現センス」の二つに分けて考えます。

“王の資質”

 作中において、覇王色の覇気を持つ者に備わっているとされる”王の資質”は、保有条件どころか「何の王における資質なのか」さえ分かっていません。
 作品のテーマ的に「王=”海賊王”」かと思いきや、海兵にも保有している者もいますし、自身を”神”と称する天竜人にも王の資質を備えている者はいます。

 また、覇王色の覇気を見せたルフィに対して、古豪であるチンジャオは以下のような問いかけをしています。

“覇王色”を操るとは
どこぞの王を夢みるか…。

@集英社,ONEPIECE,尾田栄一郎/第717話「ドレスローザの忘れ物」,by.ドン・チンジャオ

 かつて世界の覇権を求めて戦っていた経験もあるチンジャオですら、覇王色の示す王を明確に何なのか定められていないのです。
 そのため、おそらく”王の資質”が指す”王”とは”明確に示されている王の座“ではなく”各々が目指す王の座“に近いと考えられます。だからこそ、海兵であるセンゴクや、形式的に部下でもあるゾロにも”王の資質”が備わっているのでしょう。

 さらに言えば、センゴクは元”海軍元帥”であり、ゾロは”世界一の大剣豪”を目指していることを考えれば、”王”という概念である必要も無さそうです。なので、”王”ではなく”頂点“や”一番“等でも変わらないでしょう。
 「覇王色の覇気」なので、一番適した表現は”覇者”ですね。

 以上より、”王の資質”は”各々が目指す王の座”を得る資質、”覇者へ至ろうとする資質“、”覇者で在ろうとする資質“、つまりは”覇道“ということになります。

 そして、覇道とは言い換えれば競争心です。それは、真に覇者へ至ろうとするならば誰であっても備わってしかるべきものなので、万人が得られる可能性があるものということになります。
 とはいえ、覇者を視野に入れられるかは環境次第です。善悪は棚上げにして、目指せる環境があれば誰にでも競争心王の資質は芽生えるでしょうが、人は楽をする生物なので覇道を行く必要性が無ければ競争心王の資質は芽生えないでしょう。

 以上より、“王の資質”は万人が持つ競争心であり、王の資質を得られるかどうかは環境次第だと考えます。

 また、”覇者に成ろうとする気概競争心“が王の資質だからこそ、覇王色の覇気は「競争相手他者を威圧する」という形の能力になるのだと思います。他者を押し退けて前に進んでこその”覇王”ということですね。

覇王色の発現条件

 次に、覇王色の発現条件です。これは、自身が持つ王の資質を明確に自覚できていないのもあるでしょうが、それ以上に”目指す王がどれだけ偉大な存在か“が重要だと考えます。
 「どれだけの人間を押し退ける意志なのか」、「どれだけの人間を巻き込む影響力なのか」。要は”王の器“ですね。

 覇王色の覇気の本質は”威圧”なので、より多くに影響を与え、より強大な競争相手を押しのける意志力であるほど、相手を怯ませる力は高くなるはずです。逆に言えば、とあるカテゴリーで覇者となったとしても競争相手が少ないならばお山の大将でしかなく、そんな人物では他者を怯ませるほどの影響力は発揮できません。つまり、相手が少なく脆弱な小さいピラミッド内の競争であると、現実に反映されるレベルの威圧へ昇華出来ないのでしょう。
 そのため、実際に覇王色の覇気を発現させられるのは”万人が目指す、あるいは一目置くほど偉大な存在に成ろうとしている者のみ”なのだと考えられます。

 また、先述の通り「覇王色の覇気は使用者の成長に付随して鍛えられる」となっています。これも上記と同じ様な理由で、より強大な敵に競り勝ち、その実績から「強くなった」という実感とともに自信を得て、より強大な意志力を獲得するためでしょう。

 以上が覇王色の覇気についての条件考察ですが、同時に思ったこともあります。それが”王の資質の消失“についてです。

覇王色の消失

 先述した通り、王の資質が覇を求める”競争心”だからこそ、善悪血筋を問わずどんな人間でも覇道を歩むことで覇王色を発現させることができると考えました。そして、より強靭な覇に競り勝つことで自信を付け覇気を鍛えていくわけですが、勝者が”勝利”という結果から自信をつけていくように、敗者は“敗北”という結果によって自信を失います

 自信を失った者がどうなるのかは、作中で既に明記されていますね。

……俺は弱い!!!
……!!!何一つ護れねぇ!!!

@集英社,ONEPIECE,尾田栄一郎/第590話「弟よ」,by.モンキー・D・ルフィ

 ルフィはその時既に、覇王色の覇気を発現させるほどに自信を高めていました。しかし、世界の頂点との差を実感し、何も成せず敗北したことによって心が折れ、自信喪失状態になっていました。
 そこで私は思います。「心が折れた者に王の資質が在るのか?」と…。

 先述した通り、王の資質とは”覇を競う意志”です。しかし、心が折れた者にそんなものがあるとは思えません。つまり、王の資質を開花させた者であっても、競争に敗れ志を無くした者は覇王色の覇気を使えなくなると私は考えているのです。

 カイドウもまた、ルフィを倒した時に以下の言葉を口にしていました。

心をへし折りゃいい戦力になる!!

@集英社,ONEPIECE,尾田栄一郎/第924話「は」,by.カイドウ

何人もいらねぇんだよ…
覇王なんて

@集英社,ONEPIECE,尾田栄一郎/第924話「は」,by.カイドウ

 「心を折る」ということは恭順させるということで、同時に自分以外の王の資質を否定しているのです。おそらくは、「傘下に降る」ということは「王で在ることを放棄する」ということになり、王の資質を失うと考えられます。

 実際に、海賊界の頂点に君臨する四皇には元海賊団の船長である億越えの海賊が多数いるようですが、誰一人として覇王色の覇気を使えた者は出てきません。特に「世界最高の軍事力」と自称していた百獣海賊団にはカイドウに敗れた多くの元船長がいたようですが、誰一人として覇王色を持つ者はいませんでした。
 チンジャオ曰く「王の資質などザラにいる」とのことなので、最強生物カイドウが腕っぷし1つでまとめた凶悪な海賊たちの中に王の資質持ちがいなかったというのは違和感があります。カイドウの部下には「昔は海賊王を目指していた」と言う者もいたので、心を折られて王の資質を失ったのでしょう。

 あくまで「心を折られた王の資質の喪失」であって、「敗北=王の資質の喪失」ではありません。心を保てば王の資質は保持できるはずです。
 カイドウでさえ海賊として7回も敗北を喫しているらしいですからね。泥を啜ってでも前に進む気概のある者のみが覇を競えるのでしょう。

 そして、王の資質を喪失した際たる例がポートガス・D・エースだと考えています。

 エースは10歳にも満たない幼少期に覇王色を発現している怪物中の怪物で、「世界中で存在を否定されてる自身海賊王の息子の存在を認めさせる」という理由で覇を求めていました。世界からの反感の分、反作用のように競争心を高めたため幼少期から王の資質を開花させることが出来たのだと考えられます。

 しかし、エースは白ひげに敗北しました。それだけならばまだ王の資質は失っていなかったでしょうが、白ひげに自身の存在を認められたことで自身の為の競争心モチベーションが欠如しました。
 覇を競うとする意志は生きています。ただし、それが他人を覇に至らせようとする”献身”になっていて、自身が覇に至ろうとする傲慢さ意地を失っています。

 特殊な例ではありますが、カイドウに心を折られた者達と同じ心理状態です。そうなってしまえば覇道も何もないでしょう。
 そのため、エースは王の資質を失い覇王色を使えなくなっていると考えます。

 ちなみに、自身の心の持ちようの問題だと考えなので、形式上は部下であっても王の資質を持つのは矛盾しません。例えば、レイリーやゾロは”相棒”、おでんは”兄弟”、カタクリは”親子”なので、下にいることを許容しているわけではありません。

 以上が覇王色の覇気についての考察です。まとめると

  1. 王の資質とは「覇を競う意志競争心」のため、万人に備わる可能性がある
  2. 実際に覇気として発現出来るのは”万人に偉大さを理解させる存在”と成ろうとしている者のみ
  3. 心を折られれば王の資質を失い、覇王色の覇気を使えなくなる

と考えました。自己解釈の塊ですが、個人的に一番しっくりくる覇王色の覇気の概要です。

まとめ

 今回は”覇気”についての自己解釈を記録しました。私の考えは以下です。

  1. 覇気とは”意志を力に変える機能”である
  2. 王の資質は己が覇を求める”競争心”である
  3. 覇王色の覇気は認知度の高い”偉大な存在”を目指している者のみ発現できる
  4. 心が折れれば覇王色は使えなくなる

 まあ、疑問点は色々あると思いますが、ある程度筋は通っていると思います。


 今回の記事は以上です。

 誤字脱字等の間違いや、別のご意見等ありましたらコメントでご指摘お願いします。

 最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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