術式解説/考察:高羽史彦「超人〈コメディアン〉」

呪術廻戦(能力)

 【呪術廻戦】の最終章である死滅回遊編では多くの呪術師が登場しました。そのうちの1人が高羽史彦で、彼は売れない芸人でした。しかし、羂索の仕込みにより術式に覚醒し、死滅回遊へと参加します。

 今回はそんな高羽史彦の術式について解説および考察を行っていきます。

 最後までお付き合いいただければ幸いです。

※…単行本第24巻以降の情報も取り扱っているので、ネタバレにはご注意ください。

術式概要

 高羽史彦の術式「超人」は“事象のギャグ化”を発生させる術式です。
 術式効果は「浮かべたイメージを事象として創造する」というもので、発動条件は「主観的ウケるイメージ”であること」および「イメージに確信を抱くこと」になります。要は、渾身のギャグを創造出来るということです。

 一般的な感性のお笑い芸人である高羽が持つ「ウケるイメージ」のため創造出来る事象の幅には実質的な制限はありますが、確信のイメージさえ出来ればどんな事象でも無尽蔵に創造できるようです。そのため、作者より「五条悟に対抗出来る術式」とされています。

 また、術式対象は基本的に術者のみのようですが、場合によっては他者を巻き込めるようです。

縛り

 縛りは現状明言されていません。しかし、作中での天使の言及から「自身の術式を知らない」という認知に関する特大の縛りがあると考えられています。縛りとは”リスク・リターンの増大”であり、「術式を知らない=自身の力を制御出来ない」ということなので、大きなリターンを得るだけのリスクとなります。
 素の性能は分かりませんが、この縛りによって作者の言及に相応しいチート術式となっていると思われます。

呪術廻戦第173話「東京第一結界⑬」より引用

 以上の術式と縛りにより、一般的な中年男性である高羽を死滅回遊の受肉術師と同等の実力へ押し上げています

 作中の使用例は大別すると以下のようになっています。

  1. 呪力出力操作(ツッコミ)
  2. 身体状態操作(場面切替)
  3. 物質創造(小道具作成)
  4. 世界侵食(場面形成)

 相手の行動を阻むツッコミは呪力出力の操作により効果が得られるだけの攻撃となり、負った外傷は場面を切り替えるように消滅させ、ネタに必要な小道具は無から創造し、世界はコメディ一色の場に侵食されます。

 以上が、「超人コメディアン」の概要になります。

術式考察

  1. 術式効果
  2. 拡張術式
  3. 縛り

術式効果

 先述の通り、超人コメディアンの術者である高羽は一般人の中年男性で、自身の術式も理解できていないことから日車寛見のように呪術のことをよく理解できているわけでもないでしょう。それでも作中準最強格の羂索と肩を並べられるのは偏に術式の性能によるものです。
 攻撃力の強化、被ダメージ無効化、防御無視etc…と様々な特殊バフが術者の機嫌で自由に盛られる事実から、その無法さを表しています。

 しかし、超人コメディアンの真価はそれだけではないと考えています。

 というのも、高羽は“動けすぎる”のです。黄櫨との戦闘では、単に術式による“手段の強化”だけでなく格闘技でも覚えているのかと思えるほど軽快な体術を見せていましたが、彼はあくまで売れない中年芸人です。家の描写もありましたが特に身体を鍛えているようにも見えず、売れない芸人に格闘技を習う余裕があるとも思えません。
 にもかかわらず、一級呪術師クラスである黄櫨を相手に体術で圧倒していたのです。おそらく、これは術式効果によるものでしょう。

 高羽の術式効果は“事象の創造”で、事象とはこの世で発生する全ての現象を指します。つまり、事象には言動のような無形のものも含まれます。何かを言ったり、何かをしたり。そういったものも具象化できるならば、達人の体術等も自身の動きとして創造できるはずです。
 超人コメディアンならば物理的に不可能なフィクションの動きもトレースできるのでアニメや漫画の体術も再現できますし、体術で相手を翻弄することが出来るのも納得がいきます。

呪術廻戦第169話「東京第一結界⑨」より引用

 また、羂索戦では場面を状況シチュエーションごと創造していたので、天候操作のような環境規模の作用も可能だと考えます。例えば、暴風雨の状況でのネタをやろうとすれば、周囲に暴風雨が発生するでしょう。

 個人的には、「死んだふり」や「復活」のギャグがあれば死んだとしても事後的に死を無実化できると考えていますが、皆さんはどうでしょうか。

拡張術式

 先述の通り、術式対象は基本的に術者のみです。しかし、稀に術者以外にも術式効果を適用させている場面があります。例えば、来栖華(天使)が宿儺相手に生き残ったのは高羽による恩恵の可能性があると天使は言及しています。
 また、術者本人以外のイメージを反映させることも可能で、VS羂索戦では羂索のイメージも取り込み具象化しています。

 高羽の戦闘シーンは少なく、情報は少ないため理由は明確化されていませんが、これは髙羽が相手と分かり合いたかったからだと考えます。

 高羽は独りよがり故の孤独に寂しさを感じていて、理解者(相方)を求めていました。だからこそ自然体で話せる者を無意識的に相方認定して術式に巻き込んでいたと考えます。来栖は高羽と普通にコミュニケーションを取れていましたし、羂索に至っては真面目にお笑い談議?をしていました。

 コミュニケーションを取れる者は舞台(客席?)に巻き込み、お笑いを理解出来る者は壇上に巻き込んでいたのでしょう。

縛り

 超人コメディアンは作中にて「五条悟作中最強格に対抗出来る術式」とされています。確かに事象の創造は何でもありで、羂索をして「千年の呪術ノウハウが通用しない」と言わしめるほどの無法術式です。
 そして、事象の創造を何でもありにしているのが縛りによる術式効果の拡大・向上だと考えられます。

 存在すると考えられる縛りは以下です。

  1. 術式非認知
  2. 不殺
  3. 魂の共鳴

術式非認知

 術式非認知は概要にて述べた通り、“自身の術式を知らない”という縛りです。術式を知らないということは術式を制御出来ないというリスクに直結しているので、同時に制御不能なレベルの術式出力が発生していると考えられます。

 要は「暴走形態は強い」ということです。

不殺

 不殺とは“人を殺さない”という縛りです。

 高羽は芸人であることに誇りを持っていて、人に笑顔を届けることを信条としています。そのため、自身の命を奪わんとする敵を前にしても「人から笑顔を奪うような真似はしない」と発言しています。また、テレビ的なコンプライアンスの観点が価値観に染み付いているようで、流血を避けるような発言をしています。
 そのため、“相手を殺さない”や“相手に傷害を与えない”といった縛りを課している可能性が高いです。これは“行動・用途の制限”になるので、同時に制限内での術式効果の自由度を向上させているのでしょう。

 また、秤金次の領域展開「坐殺博徒」より術式効果が無害であるほど影響力は高まることが分かっているので、超人コメディアンの影響力の高さは不殺の縛りによる恩恵だと考えられます。

 ちなみに、黄櫨戦では普通に暴力を振るっていますが、高羽は自称するように「暴力肯定派の古いタイプの芸人」なので映像で認識できないレベルの傷害に収まる殺傷行為は可能だと考えられます。というよりも、その程度に勝手に調整されるのかもしれません。

魂の共鳴

 魂の共鳴とは“他人のイメージも具象化させる”という縛りです。

 先述の通り、高羽は独りよがりな笑いを追求していましたが、羂索戦で「他者の意見を聞く」という人間的な成長を見せました。つまり、他者のお笑いも真摯に受けとめ、自身の芸に昇華するようになったということです。
 これにより、敵味方の区別に関わらず”お笑いならば無差別に具象化させる”という縛りを課している可能性が高いと考えています。これは“敵に術式を利用される”というリスクを享受することになるからこそ、他者のイメージを取り込むことが可能になっているのでしょう。

攻略方法

 最後に高羽史彦の攻略方法について考えてみました。

 高羽の術式「超人コメディアン」は被ダメージを事後的に無実化出来るため、ただ攻撃するだけでは意味がありません。また、個人的な予想にはなりますが、ネタの手札次第で事後的に死を覆せるとも考えているので、暗殺や不意打ちも意味は無いと考えています。そんな相手を打倒するには精神面へのアプローチが必要になってきます。

 そして、原作で取られた方法が以下になります。

  1. 批評
  2. 満足死

批評

 原作で羂索は、超人の発動条件を「確信のイメージ」だと看破して、高羽の抱く確信を崩すためにネタを論理的に批評しました。

 高羽はそもそも売れないお笑い芸人なので、客観的に「ウケないお笑い芸人」です。そして当然ながら、高羽は“売れない”という結果で自身のお笑いがウケていないことを知っているので、羂索はその事実を突き付けたというわけです。
 高羽の精神性は一般的な感性の域を出ないので、そうすれば自ずと「自分は面白いのか…?」という疑念が生じ、確信を抱けなくなって術式が機能停止します。

 この方法は「一般的なお笑いを理解する」という前提が必要不可欠なので、人間性を排するほど強くなる呪術師にとって難しい方法でしょう。

満足死

 原作にて批評を受けて沈んだ高羽は、それでもお笑いを辞めず批評を受け止めて次の笑いに昇華する決意をしたため、羂索は魂の共鳴を利用して高羽を満足させることにしました。

 さんざん述べているように高羽は普通の人間なので、お笑いをやっている理由も「皆を笑わせたい」という普通なものです。そのため、「皆を笑わせた」という事実を突き付けてお笑いに満足させれば、充足感お笑いを止めます。高羽がお笑いを止めれば術式も出力されません。
 羂索は魂の共鳴で超人を利用し舞台を用意し、高羽のお笑いに協力してウケるイメージを逆に叩きつけることで、高羽を満足させ機能停止させました。

 以上が原作で取られた攻略方法です。効果は高いですが、どちらもお笑いの知識が必要で術師には難しい方法でしょう。そこで個人的に考えた方法が以下になります。

無視

 お笑いとはコミュニケーションで、他人のリアクションを得て初めて成立します。そして、他人のリアクションを引き出せないお笑いは「おふざけ」にしかならず、虚しい行為になります。
 だからこそ「お笑い」という前提を崩すのに効果的なのが“ガン無視”です。

 ネタがウケず白ければ、高羽のお笑い衝動は鎮静化されて無力化出来るのではないでしょうか。それこそ、他人の死体でも見せつければ一般的な感性を持つ高羽は「お笑いをしてる場合じゃない」とテンションが下がるので、術式を機能停止に追い込めるはずです。

 とはいえ、これは高羽の心が折れるのを待つ、要はリスクの取れていない方法なので効果を得るには時間が必要です。

 以上が、高羽史彦の攻略方法です。高羽史彦は【めだかボックス】の球磨川禊と通ずるところがあるので、球磨川の攻略方法に重ねています。


 以上で今回の記事は終わりです。

 最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 誤字脱字等の間違いや、他の考察や解釈によるご意見がありましたらコメントでご指摘お願いします。


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